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創世の絆第二部 最終回

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創世の絆第二部 最終回
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決戦! インテグラル・ルーク

 クイーン脱出により、ルークは混乱状態にあるようだった。クイーンの抑えを失い、周辺のイレイザーやポーンまで巻き込みながら触手を繰り出し、巨大ないくつもある口で周囲のものを咬み壊している。
「イマ、あれにはパワーがほとんどナイ」
クイーンがポツリと言った。それを聞きルーク攻撃部隊は色めきたった。アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が静かに尋ねる。
「弱体化しているということか?」
「そうダ。一体化していたから、感じ取れル。あれは今怒り、混乱していルが、私が欠けた事で力も失っていル」
「クィーンがルークから脱出したから、インテグラル軍はルークの支配を受けていない?」
天城 一輝(あまぎ・いっき)がクイーンに尋ねる。
「少し前に全てガ変わった。直接別のものガ、すべてをコントロールしてイル。……だが、私よりはソレの支配は散漫ダ」
「今こそルークを討つ絶好の機会、ならばやるしかなかろう?」
ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)が言う。
「それにはまず、力あるものが存分に攻撃を叩き込めるよう、スキを作る必要があるな」
アルツールのパートナー、シグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)がなかば独り言のように言った。館下 鈴蘭(たてした・すずらん)のイコン、ニケから通信が入る。
「クイーンが助け出された今、もう何も躊躇うことなくルークを攻撃できるわね。
 もともと私たち、ルーク攻撃のサポートに入ろうと思っていたから、隙を作るお手伝い、させてもらいたいな」
霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)が言葉を挟む。
「そうそう、最悪クイーンがルークと繋がっている状態でルークを倒してしまったら……。
 貴女も死んでしまうかも知れないて心配してたのよ。
 王宮に入る時は助けてくれたし……そういうことは絶対したくなかったから貴女の救出を見守ってた……」
「そうカ……」
「そうよ。心を持って、人と繋がりを持とうと思ったあなたは、もう人間と同じだもの」
考え込む様子のクイーンの言葉に、鈴蘭が優しく答えた。
「では、スキを作りにいくとしようか」
アルツールが暴れまわるルークを見やって言った。
「おう!」
「行きましょう!」
一輝と鈴蘭が異口同音に応じる。
 アルツールは空飛ぶ箒シュワルベに、シグルズはペガサスに各々騎乗して舞い上がった。プッロは聖騎士の駿馬で戦場に飛び出し、囮を勤める。目立つように走り注意を惹きつける。プロボーグを使い飛んでくる触手やイレイザーから逃げ回る。
「……戦略上、逃げているだけだ」
苦虫を噛み潰したようなプッロの表情が、作戦のためやむを得ずという今の立場を雄弁に物語っている。
 その間にルークの死角からアルツールがシグルズを前衛として接近してゆく。シグルズはディフェンスシフトで、時折飛んでくるイレイザーの触手などを手際よくあしらい、アルツールはパートナーの護衛の下、意識を集中しサンダーバードを呼び出した。光と稲妻を操る伝説的な鳥が召喚され、ルークとその周辺にまだ残るイレイザーたちに向けて猛烈な雷撃を放った。一輝は迷彩塗装で隠れながらインテグラル・ルークに近付き、雷撃が始まると同時に情報攪乱使い、ルーク攪乱を狙う。
「……効くか、わからないけどな」
鈴蘭のニケが、砲撃しながら戦慄の歌でルークの動きを封じようと試みた。以前ならルークは、どの攻撃もハエが止まったほどにも感じなかっただろう。だが、今は明らかに苛立っている。雲霞のように噴出されたスポーンはあっという間に霧散し、触手はでたらめにそこここを叩くのみだ。複数の口が、ガシッ、ガシッと音を立ててむなしく空を咬む。

 強い決意を浮かべた表情でルークを見つめていた、御凪 真人(みなぎ・まこと)のもとに、桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)のイコン、レーヴァテインから通信が入った。
「そろそろ頃合かなと思う」
「わかりました。接近します」
真人は短く答え、ルークに向かって歩を進める。
「生憎とパラミタもニルヴァーナも犠牲にして安穏に生きる選択肢は俺にはありませんね。
 両方が存続できる可能性が有る以上はそれに賭けますよ。
 分の悪い賭けは嫌いですら、確率が低いと言うのであれば、その確立を少しでも上げる努力をするだけです」
セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が頷く。
「ぐだぐだ言う前にやれる事を一つ一つクリアすればいいわ。
 クイーンだって救い出せた。皆が協力すれば不可能なんて無いわよ。
 ここを通れないとゾディアック・ゼロに辿り着けないなら、ここは意地でも抉じ開けてやるわ」
斎賀 昌毅(さいが・まさき)のストーク、フラフナグズが真人らの動きを悟らせないよう、その前を行く。
「クイーンが救い出された今、手加減の必要はねえ。……全力で攻撃させてもらうぜ!
 前回アレだけやって皮膚に傷がつけられた程度だった。だが失敗は成功の母なんだぜ?
 外から攻めて駄目なら……内側から行くだけだっ!」
マイア・コロチナ(まいあ・ころちな)がそんな昌毅をみて嘆息する。
「……また無茶なことを考えてますね?
 まあ……ここでボク達がルークを倒せれば……アラムさんたちも安心してゾディアックに集中できるわけで。
 でも、今回は前回みたいに全エネルギーを使いきるのはなしですよ?
 作戦失敗しても何してもボク達はルークを止めおくことだけは何としてもやり遂げないといけないんですから」
「ああ、わかってるって。エネルギー配分は任せる。だが最大限の力を攻撃に使わせて欲しい」
昌毅がマイアに言う。
「……わかってます」
昌毅の無茶なプランには毎度苦労させられているが、一か八かの賭けの結果が良いほうに向かえば……小言を言いつつも、マイアとてこの状況下、昌毅の気持ちは痛いほどよくわかっている。
 エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)は煉とともにスクリーンに映し出されたルークを睨んでいた。
「全員で総攻撃を同時に行えばいい」
錬がぽつっと言った。
「そうですね。タイミングを合わせて、一斉に攻撃しましょう」
真人が返す。
「クイーンが抜け出した今、躊躇うことないしね」
セルファも応じた。
「最悪アラムたちがここを抜けられればいい。倒せなくてもいい。数秒でも隙ができれば十分だからな」
エヴァが言い、総攻撃メンバー全員がその事実を噛み締める。
「だが、最初から諦めるなよ? 全力で攻撃をぶちかます!」
昌毅の言葉に全員が腹のそこから応じる声を上げた。

 撹乱攻撃により、ルークはもう眼前のものしか見えていない様子だった。総合的なコントロールは完全に失われ、怒りと苛立ちの塊となっているのが見て取れた。強力なビームを打ち出す頭部が、角を輝かせる。撹乱部隊はビームをらくらくと避けて、更なる苛立ちを煽っていた。
「あのビームの射出タイミングにあわせて攻撃したら、うまいこといくかも知れねえ」
昌毅が言う。
「そうだな。エネルギーが脱出口を失えば……」
エヴァが頷き、真人も同意を示した。
「では、次に角が光ったときを合図に」
 好機はすぐにやってきた。角が青緑の光を帯び始めると同時に、光の大天使が出現し、2機のイコンがそれぞれ別方向からルークの至近距離に移動してくる。
「道なんてね、作れば良いのよ!」
セルファが力強く叫び、真人と力を合わせる。
「イコンは古代種族を模した段階から抜け出した事を証明してやるぜ」
煉とエヴァはスクリーンに映るルークを睨み据え、エンド・オブ・ウォーズを発動し、同時にヴィサルガ・プラナヴァハでイコンの抑制すべてを解き放つ。
「限界を超えろ、レーヴァテイン!」
「あたしと煉、それにレーヴァテインの想いと力、全部乗っけたこの一撃受けてみやがれ!」
リミッターを解除し、上空から一気に重力加速度を乗せて、神薙之太刀を一直線に振り下ろす。光の大天使がバーストダッシュの加速を利用したランスバレストの突撃に全てのパワーを注ぎ込み、槍をルークのビーム発射口に突き立てる。ほぼ同時にフラフナグズが覚醒の輝きをまとい、荷電粒子砲をフルパワーで撃ち込んだ。
 ルークのビーム発射口がぐにゃりとゆがんだように見えた。始めその部分が光り始め、ついでルークの全身が輝きはじめる。スクリーンをまともに見られないほどの明るさだ。ルークは膨れ上がる光の玉と化し、ついでどんどん縮小しはじめた。どの攻撃が効いたのか、自身のビームのエネルギーによるものなのかはわからない。輝きを失ったルークは蒸気を噴出しながら、見る見るうちに焼け焦げた小さな塊と化した。
「やった……」
誰からともなく、ため息のような声が漏れ、ついで勝利の雄たけびが沸きあがった。