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リアクション
「姉様…大丈夫ですか!?」
慌てて赫夜のもとに駆けつけてくる真珠の側には、エヴァルトの妹、ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)もいる。
「ミュリエル、どうしたんだ、藤野さんたちに失礼だぞ」
「お兄ちゃんのお弁当をもってきて来たんです。こんにちは、藤野赫夜さん、さっき真珠さんとは色々、お話しさせてもらったの。お兄ちゃんは女の人を名字と『さん』づけで呼ばないと失礼って思ってるから、堅苦しくてごめんなさい」
「気にすることはない。可愛い妹さんだな」
赫夜の笑いにエヴァルトが
「…妹と言うのは、いずれにしても可愛いものだ。あなたもそうだろう? …藤野さん、いきなり転校してきて、こういう話をするのは、物騒で申し訳ないのだが、校内でクイーン・ヴァンガードが襲われたり、ツァンダ家に関連する施設で、テロ行為が起こっている。気を付けてくれ」
「ありがとう。さすがは本物の剣士だな。真珠にも気を付けるように言っておく」
赫夜は真珠になついているミュリエルの頭を撫でていた。
試合の後は、みな、さっぱりとした顔つきをしており、観客達も盛り上がって、赫夜や試合相手の周りを取り囲んでいた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その日の夕方。二人で帰宅する藤野姉妹の後を尾行する姿があった。夕凪 あざみ(ゆうなぎ・あざみ)。あざみは有事の際に風紀委員に協力することがある。また、最近のテロ行為やクイーン・ヴァンガードの件もあり、転校生を調査していたのだ。ブラックコートで気配を、隠れ身で姿を消し、二人の様子を伺っていたのだ。
あざみの目からみても、二人は普通の高校生に見えたが時折、真珠が遠い目をしたり、無口になり、それを心配する赫夜の姿が目に付いた。
「ん…あれはなんだ…?」
無言になってぼんやりとしている時、真珠が左中指につけた青い輝石とシルバーの指輪に必ず触れていることに気がつく。
「何か意味があるのでしょうか…でも、とりあえず、今のところは普通の高校生にしか見えませんが…」
違和感を覚えるものの、二人が悪事を働いているわけでもないので、あざみは念のため、環菜に連絡だけを入れておいた。特に青い指輪に関して。
第2章 【学園生活と歓迎会】
翌日。朝から前の日の赫夜の活躍を聞きつけて、色んな生徒達が入れ替わり立ち替わり、二人を見物にきていた。
「チョーカワイクナイ!?」
「つか、あたしの方がチョーカワイイ!」
「カワイイカワイイ!」
「あ、あの、通して下さい…」
くねくねと体をゆらして喋る、がっしり体格のオカマ姉妹が前に立ちはだかり、姉とはぐれて戸惑う真珠の側に、颯爽と御凪 真人(みなぎ・まこと)が現れて、苦笑ぎみに
「君たち、カワイイものが好きなのは良くわかるけど、二人して立ってたら、壁になってだれも廊下を通れないですよ」
と、オカマ姉妹に言ってのけた。
「だってーカワイイんだもーん」
「真人君もチョーカワイー!」
「いや、カワイイと言うのは、止めてくれたら嬉しいです。さ、真珠君、通って」
「あ、ありがとうございます。ごめんなさい、私がもたもたしているから」
おどおどしてる真珠を真人が手をとって、オカマ姉妹の間の道を通してやる。
「転校して来たばかりで不慣れなことや判らないこともあるでしょう? お姉さんを探してみよう」
「ええ、まだ迷ってしまうことがあって…私、姉様がいないと何もできない…」
しゅんとする真珠を慰めるように
「勉強関係で判らないことがあれば俺でもフォロー出来るし、聞いて下さいね」
「あ、ありがとうございます…嬉しいです」
白い肌をほんのり赤らめる真珠は、真人からみても華奢で姉の赫夜が真珠を守ってやりたくなる気持ちも良く分かった。
「真珠!」
そこに赫夜が慌てて、駆け寄ってくる。
「姉様! ごめんなさい、私、迷子になってしまって。そしたらちょっと変わった二人組の人がいて、それを真人さんが助けてくれたの」
「さっき、オカマ姉妹がいたな。あれか。真人殿、すまなかった」
「いや、まだ色々不慣れでしょうからね。俺で良ければ、何でも聞いて下さい」
「ありがとう」
「あー! ずるいー真人!」
赤い髪のはつらつとした女生徒、リリィ・ブレイブ(りりぃ・ぶれいぶ)が後ろから声を上げると、その後ろに虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)が立っている。
「なにがずるいのですか、リリィ君」
「すまない、御凪」
真人に対してリリィの側に居た虎鶫 涼があやまる。
「あたしが二人を学校の中を案内してあげようと思ってたの!」
「じゃあ、是非、頼むよ、リリィ君、涼君」
真人は苦笑して、真珠と赫夜を送り出す。
「やったー」
賑やかなリリィは赫夜の腕を組み、
「あたしはリリィ、よろしく!」
「よろしく、リリィ…と呼びすてしていいのかな。私は赫夜だ」
その後ろを、涼が真珠と一緒に歩いて行く。
「リリィが姉を横取りしているみたいで、何となくすまない…」
「いえ、そんな…元気が良くて可愛くて、素敵ですね、リリィさん」
「そうかな、少々おてんばが過ぎる気がする」
「そうなんですか? ふふ」
「藤野はここに来て、何かやりたい事はあるのか?」
涼が緊張がほぐれた真珠に話かけた。
「…やりたいこと…そうですね」
真珠の顔にはふっとその瞬間、影が差す。涼はそれを見逃さない。
「私、姉様がいないと何もできないんです。だから、姉様から自立出来るように頑張りたくて…体も弱いので、少しずつでも健康になりたいんです…」
「それはいい心構えだな」
学園案内を一通り終えたところで、リリィが携帯を取り出す。
「ねえ、メアド交換しよう! 何かあったら呼んでね? すぐに駆けつけるから!」
「ありがとう。私もリリィに何かがあったら駆けつける」
「まあ、リリィの言うとおりだ。何かあったら連絡くれ。すぐに駆けつける」
涼も真珠に向かって、携帯を差し出した。
「嬉しいです。私たち、もう、お友達…ですよね?」
真珠ははにかむように笑った。
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