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リアクション
第3章 【テロへの気配】
「テロリスト…ね。それにしても、次から次へ、蒼空学園目当ての物騒な事件が続きますわ…それにしても、マントとフードが取れていれば、犯人を見つけやすかったのですけれど」
荒巻 さけ(あらまき・さけ)は道すがら、ぽつりとつぶやく。クイーン・ヴァンガードとして、さけは蒼空学園で起こるテロを調査し、情報を得なければならない、と思い、過去に襲われた施設の目撃者を当たっていた。
「さけ、襲撃の合った場所に行ってみましょう」
パートナーの日野 晶(ひの・あきら)は提案する。
「ええ、そうね。それに本当に『朱雀鉞』が狙いであったなら、こんな厳重警戒態勢をしかれる前に事前に場所を調査しますわよね? 何か他に目的があるのかも…」
「まって、お二人さん〜! ボクも同行させて〜!」
と、羽入 勇(はにゅう・いさみ)が駆け寄ってくる。
三人は最近、襲撃されたという施設跡に寄ってみたが、立ち入り禁止のテープが貼られ、中にまで入ることが出来ない。そこで、さけがクィーン・ヴァンガードということで、警備員に頼み込み、危険ではない場所までは入ることができた。
「…徹底して、破壊されちゃってるね」
勇がカメラであちこちを写して回る。
「剣で壊したと言うよりは、爆発物を使ってますね、さけ」
「そうね…他のところも、盗むとか、そういう行動はしていないみたいですわ…なにか怨みのようなものが感じられて…ぞっとしませんわね。どこもかしこも黒こげ…これでは調査しても、炭しか出てこなさそうですわ」
「あんたたち、そろそろいいかね?」
警備員が三人を促す。
「ごめんなさい、ありがとうございました」
「熱心なことは良いけれど、あんたたちがあんな怖い目にあったら大変だからね」
警備員の言葉に三人ははっと顔を上げる。
「警備員さんは、襲撃に遭ったとき、ここに居たんですか?」
「ああ、たまたま、交代の時間でね。ケガをせずにすんだ。ただ、あんな炎の中に佇む黒々としたテロリストにはもう、二度とお目にかかりたくないね」
初老の男性はそういうと、ため息をつく。
「実際にみたんですか?」
「わしは遠目からの。フードの下にはご丁寧に黒い仮面まで付けておったらしい。身のこなしはまるで、『忍者』のようだったよ。あっと言う間に、施設のてっぺんからひらりと舞い降りて、逃げてしもうた。他の奴は近くでみたせいか、随分と大きく見えたらしいんだが、わしにはマントとフードのせいで大きく見えただけで、実際にはさほど大きくも見えんでな。…だが、みんなには取り合ってもらえんかったよ。男が犯人のようにいわれておるようじゃが、さてはて、今どきの娘さん達も充分、こわいからの。意外とあんたたちみたいな可愛いお嬢さんがテロリストかもしれんな」
「意外と、小さい…お嬢さん…」
「この情報は、クイーン・ヴァンガード本部に伝え、全員に広まるようにしましょう」
さけの言葉に、晶がHCを使いデータを送り、勇も将来、報道カメラマンを目指す者として、数々のシャッターを切った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
週末まで、あと少しの日の放課後。
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)が剣の指南のため、赫夜に訓練を挑んできた。
「赫夜さん、よければお手合わせ願えませんか? …光条兵器を使って」
アリアの一種の決断、芯の強さを見て取ったのか、赫夜はにこり、と笑った。
「良いだろう。アリアさん。アリアさんは私に特別なものがあると、考えて下さっているようだ。勿論、今までの剣のお相手も手抜きはしないが、アリアさんには特別な気持ちで対応することが必要なようだ。…光条兵器であるなら、ケガをすることもなかろう。早速、道場でお手合わせ願おう」
「姉様、大丈夫ですか、」
真珠が心配そうに駆け寄る。
「なに、お互い女子だ。体にキズをつけることはあるまい。それよりも、真珠、お前はこの可愛らしいお嬢さんのお相手をしてさしあげるがいい」
アリア・セレスティのパートナー、天穹 虹七(てんきゅう・こうな)が真珠の足元にまとわりついている。
「虹七ちゃん、気を付けて。真珠さんといっしょにいるのよ」
そういうとアリアは虹七からオーロラの様な色彩の光条兵器を取り出した。
(「赫夜さんが剣に注ぐ想いを感じ取ること」も目的、誰かを守る為か、強さを求めてか…ただ快楽の為か、少しでも感じ取れると良いのですが)
二人の美少女は構えあうと、アリアが口を開いた。
「剣には何か思い入れがあるんですか?」
アリアの光条兵器が次々に赫夜に襲いかかる。しかし、赫夜はくせのない体の動きをし、ある意味、とても「素直」な剣の振るまいをする。
「ことちゃん、ことちゃんのお姉ちゃんってすごいね…」
真珠の膝の上で二人の戦いを見ていた虹七はどきまぎしながら、見つめている。
「ええ、とても。そう、とてもすごい戦いね…」
華奢なアリアと、体格では上回る赫夜の戦いはある意味、静と動といえ、特殊な対をなし、とても美しかった。一種の剣舞とすら見える美少女同士の美しい舞いであった。
アリアと赫夜の剣が激突し、その瞬間二人は飛び退ると、仕手が終わりであることを感じたようだった。
「素晴らしかったです、赫夜さん…私、あなたともっと戦いたい」
興奮してキラキラと瞳を輝かすアリアに対して、赫夜もにこり、と微笑んだ。
「アリアさん。あなたは『優しい』剣の使い手だ。過去においては、その優しさ故につけ込まれたり、苦しんだこともあっただろう。しかし、これからは『人を活かす剣』を目指されるべきだと思う。私は光も闇も、同一の力を持っていると思っている。光も闇も、同等に扱えるはずなのだ…もちろん、私程度の力量ではそれを掴むことはできない。だが、アリアさん、あなたにはその可能性が充分ありえるはずだ。たとえ今後、何か苦しいことに遭遇しても、明るい方へ歩いていって欲しい」
珍しく息が上がっている赫夜のその言葉が、必死に身を心をよじって生み出した言葉だと、アリアが気がつくのはもうしばらく、あとだった。
アリアと虹七は道場からの帰り道、手を繋いで外の空気を楽しんでいた。
「すごい仕合いだったね」
「そうね。素敵だったわ。虹七ちゃんは真珠ちゃんとお話ししたの?」
「うん、みかんを一緒に食べたり、週末、どっか行こうって行ったの。でも、真珠ちゃん…ことちゃんは『パジャマパーティ』に参加するんだって。『お二人もどうですか』って」
「へえ。都合がついたら、私たちも参加させてもらいましょう」
「うん…でもね…」
落ち込み気味の虹七の様子をいぶかしんだ、アリアが「どうかしたの?」と聞く。
「ことちゃんね、一瞬だけなんだけど、凄くさびしそうで悲しそうな顔をするの。虹七とお話してくれる時は、凄くいいお姉さんなの。…でもことちゃん、辛いことがあるのかもしれないなあって思って心配なの」
「…そうか。虹七ちゃんは真珠さんが心配なのね…今度、悩みがあるなら、相談してっていってみようね」
「うん! 虹七もそう思うの!」
「よしよし、今日は虹七ちゃんのすきなもの、食べようね、何たべようか」
「うん、虹七はお姉ちゃんがつくるものは全部だいすき!」
「お姉ちゃんも、虹七ちゃんのこと、だいすきよ」
微笑ましい二人であった。
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