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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

リアクション

 クイーンヴァンガードとして、調査、警備に当たっていた足元まで延びる長い髪と涙のようなタトゥーが特徴の水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)も驚く。
「たしか、私の調査ではテロリストは単独犯のはず…どういうこと?」
 といいつつも、睡蓮は客や関係者の避難誘導を始めていた。閉館時間も近づいていたので、人数はそれほど多くなく、それが不幸中のさいわいであった。
「みなさん、不安にならないでください。慌てないで」
 パートナーの鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)も、避難誘導にあたりつつ、睡蓮と周囲の来場者の安全を確保し戦闘態勢へ移行する。貴重な美術品をトレジャーセンスで判別し、守るようにエンデュアで攻撃属性耐性が上昇させておき、爆破に備えた。
 睡蓮がふと顔を上げると、美術館のバルコニーに黒い人影が佇んでいる。
「あれは…テロリスト!」
 テロリストはバルコニーから飛び降りると、また、手榴弾を手に美術館に向けて投げつけようとする。
「そうはさせません!」
 『殺気看破』を使い、スタンバイしていた、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)がテロリストの足元を回し蹴りでダメージを与えた。次々にバーストダッシュで蹴りや拳を繰り出してくる詩穂。
「赫夜お嬢様、真珠お嬢様、皆さんとご一緒に美術品を観覧されますか?」
 カマかけのつもりで詩穂が声をかけるが、テロリストには反応がない。
(…藤野姉妹じゃないのかな。それとも、動揺に強いタイプ?)
 テロリストは詩穂の攻撃をかわすと、手榴弾を詩穂たちに投げつける。
「きゃあ!」
 そこに九頭切丸が睡蓮と詩穂をかばい出た。
「九頭切丸! 大丈夫!?」
「……」
 無言ではあったが、九頭切丸は問題がないようだった。
 

 テロリストはそのまま、美術館の中に飛び込み、破壊にかかろうとする。
 そこにアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)が現れた。
「…美術品には興味ないが、校長からの依頼となれば、断るわけにもいかないだろう…」
 光学迷彩と『幻惑の霧』を使い、テロリストを攪乱しようとするが、それよりも早く、テロリストが剣を振るい、美術品を壊して回った。
 しかし、アシャンテたちは動じない。平日のうちに美術品をレプリカにすり替えていたのだ。
 ちなみにパートナーのラズ・シュバイセン(らず・しゅばいせん)が学術的興味からか、美術品の数々に興味津々で、警備していた時には暇つぶしに「博識」にて、他の生徒やアシャンテ達に「この絨毯は昔からツァンダ家に伝わる『魔法の絨毯』と言われており…」と、美術品にまつわる薀蓄を語っていたのだ。
「それを壊して回るのはかまいませんが、意味はないですわ!」
 エレーナ・レイクレディ(えれーな・れいくれでぃ)が、『幻惑の霧』を発動させながら、生徒の援護を行っていた。


 邦彦とネルも他の生徒達がくるまで、テロリストに応戦していた。


 天城 一輝(あまぎ・いっき)がクイーン・ヴァンガードとしてガントレット型の銃型HCを使い、他のクイーン・ヴァンガード達に連絡して応援を呼ぶ。
「テロリストが美術館を襲っている! 至急、応援にきてくれ!」
 その間、暴徒鎮圧用のゴム弾を撃ちまくり、テロリストを美術館から追い出そうとする。また、パートナーのローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)も、同じく、テロリストの撃退のために応戦していた。
ツァンダ美術館の呼び込みという立ち位置で参加していたコレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)が「至れり尽くせり」を使い、周りにいる入場者を避難させ、一輝たちが戦いやすい状況を作り出していた。
 さすがに追い詰められたのか、テロリストは美術館の2階に駆け上がっていこうとする。
「いかせないわよ!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が踊り場にて、テロリストの前に立ちはだかる。ディテクトエビルで敵の接近を感知し、『轟雷閃』でテロリストに斬りかかるが、テロリストも剣でそれを跳ね返す。
(この太刀筋…藤野 赫夜のものじゃない!)
 美羽は剣士として、赫夜のことが気になり、平日の間は、赫夜の剣の練習を見学し、赫夜の太刀筋を見極めていたのだ。そして、今、対峙しているテロリストが赫夜の太刀筋ではないことを悟った。その瞬間、美羽の剣がテロリストに跳ね返されそうになる。
「くっ」
 剣士レベル最高の美羽であったが、隙ができてしまった。
「美羽!」
 パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、「小人の小鞄」を使い、テロリストの攻撃力をさげる。
「ありがと! コハク!」
 体勢を立て直した美羽がテロリストに剣で次々攻撃するが、テロリストは剣をなぎ払い、美羽達を振り切り、階段を駆け上がっていく。
 2階にも、女王器が展示されているのだ。ただし、アシャンテたちがレプリカにすり替えてはいたが。アシャンテに協力した島村 幸(しまむら・さち)アスクレピオス・ケイロン(あすくれぴおす・けいろん)が2階でテロリストを待ち受けていた。
「私の研究資料は奪わせませんよ」
 既にレプリカであることを知ってはいるが、幸はそう、演技すると、テロリストが幸めがけて襲いかかってくる。幸は軽身功で壁を蹴り上げ、アクロバット的な動きで天井から等活地獄で反撃、その後、左右の壁を使い小刻みに動きながら、戦いを挑んだ。
「横? 後? そんなの生ぬるい! 視覚的動作的観点からも上からの攻撃が一番効果的なんですよ! テロリストさん!」
 テロリストは一瞬、戸惑うが剣で幸の攻撃を次々に跳ね返すと、腰からアサルトカービンを取り出し、幸目掛けて引き金を引く。
「幸!」
 アスクレピオスが、籠手型HCで戦術データシステムを作動させて、幸の攻撃のサポートをすると、幸は軽身功で銃弾を素早く避けた。
「ピオス先生! ありがとうございます!」
「貴重な大昔の資料が失われるわけにはいかねえしな! といっても、ここのものはレプリカだが…なにより、テロなんて、許せねー、許せねーよ!!」
 アスクレピオスはテロリストへの憤りを隠せない。
 飛び退ったテロリストに、葵とエレンディラが足止めのため、目くらましの光術を使うと、一瞬、テロリストが怯んで壁際に追い詰められる。
 そこにクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が「意味のないことを…なぜ、する…」とテロの意図を問いただそうとする。テロリストがクルードを傷つけないように、サンダーブラストを使い、サポートするユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)
 そこに幸やアスクレピオスと連携を取っていた東條 カガチ(とうじょう・かがち)が現れる。
「あんた、何でこんな事してんの? 何処のどなた様なの?」
 と言いつつ、テロリストのフードを引っぺがしてしまう。しかし、フードの下には仮面が付けられており、素顔を見ることはできない。ただ、体つきは華奢であり、大男の可能性はなかった。
「御丁寧に仮面つきかい。テロルチョコ、お口にガッパーンと突っ込んでやりたかったんだけどな。いいや、仮面もひっぺがして、ガッパーンだ」
 と、手を伸ばしかけた瞬間、テロリストがカガチに剣を振るい、とっさにカガチは身を退ける。そして、テロリストは、ユニやクルードたちにも、アサルトカービンで銃弾を次々と発射すると、屋上に駆け上っていく。
「ちぃ! お顔拝見といけるところだったのに、油断した」
「とりあえず…、テロリストを追おう…」
 次々とテロリストを追って、みんな、屋上へと上がっていく。
 屋上には、テロリスト警備に当たっていた、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)と、アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)が待ち受けていた。
「ああ…学生の週末って青春を謳歌するためのモンだろ?しかもあんなキレイなネーチャン達…特に妹ちゃんの方よかったなぁ…と仲良くなる時間を削ってまで何でこんなとこにいんだよ、俺…。駄目だ、すっげー腹たってきたわ。テロリストだか何だか知らねぇけど許さん、全身の腱を3回はズタズタにしてやる。俺の怒り、思い知りやがれっ!」
「ほら、いつまでも騒いでないでちゃんとする!あんたまがりなりにもクイーン・ヴァンガード志望なんでしょ?だったら諦めてやることやりなさい。…と いっても、犯行予告とかがないんじゃ空振り覚悟で張り込みするくらいしか出来ないのよね。しかも格好からすると一人じゃないかも知れないし…。というわけだから絶対に気を抜かないように。ほら、パワーブレスくらいはかけてあげるから…誰か上がってきたわよ!」
 空振り覚悟でいた二人の前にテロリストが現れた。
「ビンゴ!…ちっくしょう、八つ裂きにしてやる!」
 意気込むアストライトをリカインが冷静に制し、テロリストに話かける。
「あなた、ティセラと関係があるの? それともただのミルザム嫌い?」
「ミルザムに怨みがあるなとするなら、ティセラ、もしくは鏖殺寺院の手先か!」
 アストライトが叫ぶ。
 そこにカガチたちも追いついてくる。