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リアクション
ドタバタ状態になっている総司たちを尻目に、巨乳に敵意を燃やす桐生 円が真珠の胸をじっとみつめて、にやっと笑う。
(こっちはさほど大きくはない…大丈夫だ…!)
「キミとは友達になれそうだね、真珠くん」
「そうなんですか…?」
ゆるスターを連れた円に、真珠は警戒しているようだった。
「なれるなれる。そうそう、キミ手芸が得意だってね、どんなもの普段作ってんの?」
「小物とか、ブックカバーとか作ります」
「そうかあ、こいつの服も作りたいしねー、かわいいだろ?」
「え、ええ、そうですね、どうせなら上流階級向けに袖がふんわりして、エリザベスカラーが付いたような派手なものがいいかも…スパンコールなんか付けてみたい…」
「真珠くん、キミ、意外とセンス悪いね」
「妹ちゃーん!! 君のおっぱいも素敵だ〜!!」
何故だか、周の声が響き渡る。
宴もたけなわになって、暴れていた男子生徒たちは和解したのか、赫夜のバストサイズについて語りあっていた。
「…90はあるんじゃないのか」
「それはありすぎだ」
「いや、あそこには愛が詰め込まれているんだよ」
「愛…か。母性愛か、姉妹愛か…」
「妹への愛だな」
「その分、妹ちゃんのおっぱいが小さくなってしまったのかもしれない」
「世界はバランス良く、配置されているものなんだなーやっぱりなあー」
「長男が馬鹿なら、次男はしっかりするって奴か?」
「いや、それとは話がちょっと違う」
「そういや、にゃん丸はどうした? こういう時には嬉々としてやってくる奴が」
「お、会場の隅から、じっと妹ちゃんを見つめてるぜ」
周がにやり、と笑う。
「好みすぎて、声がかけられないらしい」
総司もまたニヤリ、と笑う。
黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)を男子生徒は観察し始める。
にゃん丸は、ちらちらと真珠の方へ視線を送る。すると、一瞬、真珠と目があった。しかし、その途端、すごい勢いでにゃん丸はそっぽを向いてしまう。
「あ、ありえねー」
「あ、あのにゃん丸が」
純愛とはこうもまぶしいものなのか。男子生徒達はじーんと感動していた。
一方、赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は、テロリストが十二星華の可能性があると踏み、パートナーのはかなげな風貌に金色のショートヘアのジャンヌ・ダルク(じゃんぬ・だるく)とゴスロリ眼帯をした銀狐のような姿のクコ・赤嶺(くこ・あかみね)と調査を密かに行っており、歓迎会にも、出席していた。
「やたらと賑やかですね…」と霜月が言うと、見た目のはかなさとは違い、がさつなジャンヌが「何かと楽しみたいだけの理由が欲しいんのではないですか」と言い放ち、クコはジャンヌに「確かにそうかもね。まあ、気楽に行きましょう」
早速、霜月は女子生徒たちと歓談を楽しんでいる赫夜と真珠に声をかけた。
「はじめまして、赤嶺 霜月と言います。よろしく。こちらはパートナーのジャンヌにクコ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
「いきなりで申し訳ないんですが、君たち、星座は何ですか? と言うのもジャンヌが星座占いにはまっていて、知りたいそうなんです」
霜月は適当なことを言い、二人の星座を確かめようとする。
「残念ながら、私は幼少期の記憶がないため、判らないんだ」
赫夜の顔が曇る。
「なにかあったの?」
クコの質問に赫夜は無言を通す。
「私は7月7日なのです。姉様、誕生日がわからないから、姉様も七夕生まれなの」
慌てて、取り繕うように真珠が話を遮った。
「そうですか、済まなかったですね」
霜月はそういうと、三人はその場をすっと去ると、美術館警備に向かった。テロは週末に行われるはず。それまでに、調査を重ねておくつもりだったのだ。
(つくづく蒼空学園はテロリストに狙われてばかりね…)
リュシエンヌ・ウェンライト(りゅしえんぬ・うぇんらいと)は、クイーン・ヴァンガードの隊員として噂で聞いた藤野姉妹を調査するために、歓迎会に参加していた。
リュシエンヌは目薬を使い、瞳を潤ませ、契約したばかりのウィンディ・ライジーナ(うぃんでぃ・らいじーな)にまるで、赫夜にくっついている真珠のようにして、二人の前に現れた。
「…はじめまして、赫夜さん、リュシエンヌ・ウェンライトと言います。クイーン・ヴァンガードの仕事で百合女学院からやって来ました。ルーシーってよんでください」
「初めまして、ルーシー。クイーン・ヴァンガードの仕事でわざわざ蒼空学園に来られるとは」
「ええ…でも、ルーシー、同じ人間同士で傷つけ合う事を考えたら悲しくなってしまったの…」
「確かにな。クイーン・ヴァンガードも襲撃され、傷ついていると聞く…」
赫夜の顔が曇ったのを見て、リュシエンヌはしめた、とその同情心につけ込むように赫夜に抱きつく。
「本当に、つらい…」
リュシエンヌは演技しながらも、赫夜の服装やアクセサリー等の気になる物を調べようと観察するが、特に変わったことはなかった。ただ、服の感覚越しに鎖骨から下の部分に違和感を覚える。ペンダントか何かをしているような感覚だった。それを確認すると、リュシエンヌはそっと体を離し、照れたフリをする。
「赫夜さん…『お姉様』って呼んで良いですか?」
「…ああ…いいが、あまりそう呼ぶと、真珠が嫉妬するので…控えめにしてくれると嬉しい」
赫夜は珍しく困惑しているようだった。
また、一方、リュシエンヌのパートナーウィンディ・ライジーナ(うぃんでぃ・らいじーな)は上手く真珠を赫夜から引き離すことに成功していた。
「赫夜お姉さんは優しい?」
「ええ、とても。姉様は私にとって居なければいけないひとなのです」
「そう、良かったわね。私も契約したばかりなんだけど二人の出会いは?」
「…姉妹、ですけれど」
その瞬間だけ、真珠の口調が重くなったのを、ウィンディは見逃さなかった。
「今度は私、ウィンディお姉さんと個人的なお話をしましょう?」
真珠の肩を抱くと、そう、ささやきかける。真珠の頬が赤く染まる。その指にキラリと青い指輪が光った。
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