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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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 一方、剣道場の方では。

 アレクセイと赫夜が一手終わり、休憩を取っているところだった。
「姉様!」
 プチ手芸会を終えた真珠がやってくる。
「真珠か。手芸会は楽しかったか?」
「ええ、とても」
「ユーキは何を作っていた?」
 興味津々のアレクセイに真珠ははにかんだ笑いをみせ
「小物入れです。『アレクにあげる』って言っていましたよ」
「それでは、ユーキを迎えに行くとするか。赫夜、手合わせありがとう。非常に勉強になった」
「こちらこそ。またよろしく頼む」
 そのアレクセイと入れ替わるようにして、声がする。
「ダディ、円、早く早く!」
 その時、急に入り口あたりが騒々しくなって、浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)北条 円(ほうじょう・まどか)に、ダディこと如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)が駆け込んでくる。
「翡翠くん、慌てなくても、転校生は逃げないよ」
「こんにちは、私、浅葱 翡翠と言います! 転校生のお二人がこちらにいらっしゃると聞いたので、仲良くなりたくて…あの、何処からいらしたんですか? そこはどんなところだったんですか? それに、お姉さん達は何が得意ですか?」
「こんにちは、私、北条 円と言います。こら翡翠、話を聞きたくてワクワクしてるのは解るけれど、一寸落ち着きなさい。そんなに一度に質問したらお二人が困るでしょう?」
「気にすることはない。翡翠殿に円さん、よろしく、私は藤野 赫夜だ。こちらは妹の真珠」
「真珠様、よろしくお願いします…」
「こ、こちらこそ」
 はにかみあう二人を、円と赫夜がにこやかに見つめている。
「赫夜様は剣術が得意なんですよね」
 翡翠の言葉に赫夜は
「得意…というか、たしなむ程度だ」
「先日の模擬戦の様子、聞いています。素晴らしかったとか」
 円の相づちに、佑也が
「赫夜さん、俺と一手お願いできないだろうか」
 と便乗して仕合いを申し込む。佑也は個人的に好みにピッタリだった赫夜に興味を持ち、また、自分がどれほどの腕前か試したかったのだ。
「…構わないが。ただ、もう放課後も随分過ぎた。歓迎会の時間も近づいている」
「では、使う得物はお互い竹刀で、剣道ルールに沿った一本勝負、でどうだろうか。できれば一切、手を抜かないで頂きたい」
 佑也の気迫に赫夜も感じるところがあったのか、目元がきゅっとつり上がる。
「判った。ではいざ」
 竹刀を握りあった二人に円が審判を担当する。
「始め!」
 円の声が響き渡り、すうっと赫夜が正面うちの構えを取ると佑也は脇構えする。声を出すのもはばかられるほど、二人の間から静かな殺気が発せられていた。
 と、その途端、赫夜が激しく踏み込み、佑也に正面から打ち込む。しかし、瞬きをする隙さえ与えず、それをなぎ払う佑也。しかし、次の瞬間、赫夜が
「胴ががら空きだ!」
 と佑也の胴部分に竹刀を叩き込もうとし、体の寸前で竹刀をぴたり、と止める。
「一本! 胴あり!」
 円の声がして、仕合いが終わると、二人からは殺気が消えていく。ほんの数分の仕合いであったのに、赫夜も佑也も息があがっていた。
「…良い勉強になった」
 佑也は礼を良い、落ち着いた振るまいをしている。
「…佑也殿、素晴らしい腕をお持ちだ」
「赫夜さんの方こそ…。また、お手合わせ願いたい」
「いつでも」
 二人はしっかりと握手した。
「すごいです、赫夜様」
 翡翠の言葉に
「佑也さんも素晴らしかったわ」
 真珠も拍手を送る。
「それでは『歓迎会』に行きましょう」
 円がみんなを促した。


☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆


「藤野 赫夜さん、藤野 真珠さんの歓迎会を今から行いたいと思いまーす! それでは、企画の諸葛涼 天華さんから、お二人にプレゼントの贈呈を!」
 飾り付けられた食堂で、司会進行役の男子生徒の言葉に促され、赫夜と真珠にプレゼントを持って、楚々と近寄る。
「ようこそ、蒼空学園へ」
 本来は百合園女学院所属でありながらも、時折、蒼空学園に潜り込んでいる天華が、赫夜にトゲが抜いてある白いバラの花束を、真珠にショコラティエのチョコをプレゼントした。
「私は、諸葛 天華と申します。赫夜さん、白いバラの花言葉は、『誠意と友情』。…そして『恋の吐息、私はあなたにふさわしい』という意味です」
「そうなのか、ありがとう」
 天華には何らかの意図があり、それらを二人に送ったのだが、赫夜は鈍いのか、そのまま受け取る。
 ジュースやお茶、お菓子などが用意された会場は大勢の生徒で賑わっていた。
 弥涼 総司(いすず・そうじ)は、「はいは〜い質問! 赫夜ちゃ〜んバストサイズはいくつですか〜♪」といきなり抱きついてくるのを、赫夜はあっさりと、「さあ、いくつでしょう〜!」とバックドロップをかまし、総司を床にたたきつける。
「おわ、いてててて」
「ずるいぞ、総司! お姉ちゃんのおっぱいは確かに最高だ! 褒めないわけにはいかない!! だが、妹ちゃんの胸はまだ不明だが、サイズが小さいとしてもそれはそれで大好きだ! 大きいのも小さいのもそれぞれの魅力がある! 自信を持つんだ!! つうか、総司、てめえ、何してるんだ! 俺とお姉ちゃんと妹ちゃんのおっぱいを賭けて勝負しろ!」
 鈴木 周(すずき・しゅう)が乱入してくる。
「いや、オレは赫夜ちゃんにデート勝負を挑んでだな…、バトルを繰り広げて校内デートに持ち込む予定なんだよ!」
「ここは食堂だから、バトルは止めておくのがいいんじゃない?」
 ゆるスターを連れてきている、桐生 円(きりゅう・まどか)はつぶやき、葛葉 翔(くずのは・しょう)は「それに、おっぱいをどう、賭けるんだ…」と突っ込む。
「どっちでもいい。私のバストサイズが知りたいなら、いま、ここで公表しようか。ただし、そこの二人はバトルを挑むと言うのだから、それなりに戦って貰おうか。ついでに、真珠のスリーサイズも教えてやろう」
「まじっすか!」
「ね、姉様やめて!」
「じゃあバトルだ! まずは鉄甲で赫夜ちゃんに挑むぞ!」
 戦いを挑もうとする総司をアズミラ・フォースター(あずみら・ふぉーすたー)
 「アンタ彼女いるんでしょうがーっ!!」
 阻止する。
「ぎゃははーすまねえな総司、失敗しちまったわ〜つうか、アズミラこええ〜」
 ガンマ・レイ(がんま・れい)が悪びれる風もなく言い放つ。
「そうだそうだ! それより、お姉ちゃん、妹ちゃん、『俺のバラの花束』を受け取ってくれ!」
 激しくアプローチしてくる周を、赫夜がラリアットで迎え撃つ。
「花束には罪がない。こちらは受け取っておこう。ありがとう」