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たっゆんカプリチオ

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たっゆんカプリチオ
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リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「なんだか、実験室に人が集まっているようだな」
「関係ないデース。多分、ポリマーの実験でもしているのデース。我が輩たちの目的はあくまでもカレーですから、調理室にむかうのデース」
「いや、胃薬だ」
「とにかく、レトルトカレーにして、明倫館へお中元の宅配便なのデース」
 大量のたっゆんサプリメントの粉末をかかえたアーサー・レイスと土方歳三は、そう言って錬金術科の研究室の前を通りすぎていきました。
 研究室の前では、四組の生徒たちが、解毒剤や強化薬の開発でしのぎを削っていました。
「準備はできているから、なんでも混ぜられるよ」
 勝手に持ち出した大量の薬草類を実験台の上に積みあげてズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が言いました。
「うん。これだけあれば、何かができそうですね。頑張りましょう」
 そう言うと、ナナ・ノルデン(なな・のるでん)はたっゆんサプリメントの丸薬を乳鉢ですり潰した物を魔女の大釜に入れて煮溶かして、そこへいくつかの薬草を混ぜていきました。
「本当は増量したいところなんだけど、ここに書いてある原材料は、イルミンスールの森にはほとんどない物ばかりよねえ。代替品がうまくマッチしてくれるといいんだけれど……」
 ぐつぐつぐつと、大釜の中で煮えていく怪しげな液体は、ぱっと見るとギャザリングヘクスの魔法薬のようにも思えますが、はっきり言って謎料理の方が近いと言えました。
「いい感じに煮えてきたわね。これなら、何かの効果が期待できそうだわ」
「そ、そうだね」
 明確な効果を狙ってるのじゃないのかと、ズィーベン・ズューデンは密かにキュアポイゾンを大釜の中にかけながら答えました。だいたいにして、代替品の選定に明確な根拠があるわけではありません。とりあえずは爆発しないことを祈るだけです。
「よーし、煮詰まったら、食べやすいようにグミにしてしまいましょう。メイドに抜かりはありません」(V)
 鼻唄を歌いながら、ナナ・ノルデンがゼラチンを加えた謎の液体を型に流し込んでいきます。完成しても試食だけは嫌だとズィーベン・ズューデンは心の中で叫びました。
 
 さて、こちらはエリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)たちの実験台です。
「ふむ、まずは成分分析だな。分析器とか遠心分離器があればいいのだが、イルミンスールではしかたないか」
 こちらも、丸薬の入っていた箱についていた成分表を睨みながらまずは成分分析です。とはいえ、そこに書いてある物は、輝睡蓮に、月下美男に、空峡アンコウの肝に、巨大蜂のローヤルゼリーに、企業秘密の※※と、ほとんど聞いたこともない物ばかりです。だいたいにして、成分表に伏せ字を使うのは許せません。
「とりあえず、すり潰してしまえば試薬による分析も可能になると思うんだもん」
 ごりごりと乳鉢で丸薬をすり潰しながらメリエル・ウェインレイド(めりえる・うぇいんれいど)が言いました。
「それなんだけど、どうももともとの薬が焦げているみたいなんですが」
 メリエル・ウェインレイドの作った微粉末にいろいろな試薬を落としていたミサカ・ウェインレイド(みさか・うぇいんれいど)が言いました。
「炭化していると言うことか。男の胸をたっゆん化させるという奇っ怪な効果が現れる原因はそれであるかもしれないというわけだな。その成分を正常な物におきかえるか、より強力な物にできれば本来の豊胸効果が望めるわけなのだが……」
「そうだといいよねー」
 メリエル・ウェインレイドが嬉しそうに言います。
「成功したら、新薬の開発者として校長たちに恩が売れそうですな。そうは思いませんか?」
「うーん、そうですけれど、やっぱり、エリオットさんも大きい方がいいのでしょうか。それとも、自分がたっゆんになりたいとか……」
「そんなことを私に聞かれても困るのだが……」
 ミサカ・ウェインレイドの疑問に、エリオット・グライアスはちょっと返答に困ってしまいました。
 
「まったく、あちらやあちらは、なんという不純な目的で研究をやっているんだ。女性の胸の大きさに貴賤の差はないのだよ。まして、男のたっゆんなど見苦しいだけだ」
 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は、解毒薬の開発に集中していました。
 このまま変なたっゆんが広がっていくのは見るに堪えません。すでに、ちっぱいとたっゆんの間で、無意味な戦いも起きていると聞きます。早く無意味なことは無意味だと分からせなければならないのです。
「しかし、効果を打ち消すにも、対抗物質が分からないのではいかんともしがたいな。かたっぱしから組み合わせを試すしかないか」
 サイコロを振りながら、本郷涼介はつぶやきました。そういえば、真新しいサイコロではいまいち調子が出ません。
 
「本当に、他の者たちはなんという不純な目的で研究を行っているのです。もともとが豊胸薬なのですよ、ここは純粋にその完成を目指すべきなのです」
 レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)が、自分のちっぱいの前で握り拳を作って気合いを入れました。
「ああ、その通りじゃな。みごと完成後には、わしの空いているページにレシピを記載してやるのじゃ。それで、わしは魔道書としてまた一つ希少本に近づくというわけじゃよ」
 自らの本としての価値を高めるためにと、アルマンデル・グリモワール(あるまんでる・ぐりもわーる)は万全の協力態勢です。もっとも、目的が完全に違いますので、完成するまでの話ではありますが。
「まあ、なんにしろ、みんなが言っているように成分がちゃんと分からないとだめだからねぇ」
 そう言いつつ、アルフォニア・ディーゼ(あるふぉにあ・でぃーぜ)がぺろりと丸薬をなめました。
「苦い。やっぱり、薬を煎じるときに焦がしてしまっているねぇ、これは」
 軽く顔を顰めると、アルフォニア・ディーゼは、何やらメモをとり始めました。
「さすがは明倫館というところかねぇ。これ、ほとんど漢方薬と言われている生薬が基本だね。だとしたら、経験則の方がものをいうんだよぉ。だてに四千年以上生きてはいないからねぇ」
 アルフォニア・ディーゼが頼もしいことを言います。はたして、彼女の舌はどこまで正確なのでしょうか。
「資料、図書室から集めてきましたけれど、どうやって調べたらいいのやら。これって、明倫館の秘薬なのでしょう? 本物のレシピが流出している可能性は低いですよね」
「そうとは限らないねぇ。昔からある製法を、明倫館が自分のところの秘伝とした可能性もあるからねえ」
 リリ・ケーラメリス(りり・けーらめりす)の疑問に、アルフォニア・ディーゼが答えました。
「とにかく、絶対に胸をたっゆんにしてみせ……もとい、豊胸薬を完成させるわよ」
 レイディス・アルフェインがみんなの気を引き締めました。
「メモの生薬は集めました」
「よし、じゃあ、それを鍋に入れてくれでないかい」
 リリ・ケーラメリスが集めた薬草類を、アルフォニア・ディーゼは次々に鍋に入れました。
「どれ、焦がさないようにわしが万全の態勢で目を光らそう」
 お玉で鍋の中の物をかき混ぜながらアルマンデル・グリモワールが言いました。焦げて失敗したのですから、ここは重要です。
「よしよし、これでうまくいけば……」
 夢のたっゆん生活をレイナ・ミルトリアが夢見たときです。
「ざんすかは、ここにいるか!!」
 突然、戦部小次郎が飛び込んできました。その胸はたっゆんです。しかも女装しています。さらに、よほど走り回ったのでしょう、来ている服の片方の肩がずり落ちて、今にもたっゆんが見えそうです。
「どこにいる、隠すとためにならないぜ」
「きゃあ!」
 鬼気迫る様子で詰め寄られて、思わずナナ・ノルデンができたばかりのグミを放り投げました。飛んでいったグミが、エリオット・グライアスたちの混ぜ合わせた化学薬品粉末の上に落ちてから跳ねます。さらに本郷涼介の集めた薬の上で跳ねてそれを巻き込み、最後にレイナ・ミルトリアたちが煮込んでいる鍋の中に落ちました。次の瞬間、鍋が激しく泡だちます。
「えっ!?」
 一同は、鍋に視線をむけました。