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たっゆんカプリチオ

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たっゆんカプリチオ
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リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「留守でしょうか」
 校長室のりっぱな扉の前で、封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)はしばらくじっとしていました。けれども、誰も帰ってくる気配はありません。
「しかたないですね。図書室の月夜さんたちの所に戻りましょうか」
 封印の巫女白花が立ち去ろうとすると、入れ違うようにフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)がやってきました。
「誰もいないようですよ」
 扉をノックしようとするのを、封印の巫女白花が声をかけます。
「あらあら、せっかく小ババ様に御挨拶をと思いましたのに、残念ですわ。では、お土産だけおいておきましょう」
 フィリッパ・アヴェーヌは、光る種籾の入った袋とメッセージカードを扉の前におくと、封印の巫女白花と共にその場を去っていきました。
「残念ですぅ。まだ大ババ様は戻ってきていないんですねぇ。ううん、きっと逃げているに違いないですぅ。見つけだして、ちゃんと責任をとってもらうですぅ」
 ずっと校長室を見張っていた神代 明日香(かみしろ・あすか)でしたが、結局大ババ様たちが帰ってこないと悟ると、どこに逃げるかを推理しました。何か分かるかもしれないと思って、超感覚で周囲を調べます。
「甘い匂いですぅ、アイスクリーム! そうですぅ、きっと食堂にアイスクリームを食べに行ったんですぅ」
 そう叫ぶと、神代明日香は大ババ様の後を追いかけていきました。食堂と言っても、世界樹の中にはいくつもの食堂があります。
「クンクン。こっちですぅ」
 白いネコミミと鼻をピクピクさせると、大ババ様たちの逃げた方向を見つけた神代明日香は、嬉しそうに尻尾を振って駆けだしていきました。
 
    ★    ★    ★
 
「ぺったんこ、ぺったんこ分が足りなあい。ぺったんこはどこだあぁぁぁ」
 叫びながら、神野 永太(じんの・えいた)は走り回っていました。どこを見回しても、今日はたっゆんだけです。それだけならまだしも、そのたっゆんのほとんどが男だとは、今にも気が狂いそうな地獄絵図です。
「こんなときこそは、元祖ぺったんこの大ババ様にすがるしかない。大ババ様あ、どこですー、ぺったんこにスリスリさせてくださーい」
 ある意味恐ろしい台詞を叫びながら、神野永太はさ迷い続けました。
「まあ、あなたも大ババ様を探しているんですの。ぜひ協力しましょう」
 そんな神野永太に、派手なチャイナドレスを着た女性が声をかけてきました。
「でたなたっゆん! わーん、たっゆんなんか滅んでしまえー」
「おい、いきなり何をする。ええい!」
 突然襲いかかられた女性は、とどめの一撃で神野永太を昏倒させました。
「ちっ、この姿じゃ女装した方が安全だと思ったのに。何か、大ババ様の手がかりはないものか……」
 少し困って、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は周囲を見回しました。
「待てー、大ババ様ー。責任とってよねー」
「嫌じゃー」
「待って、小ババ様ー」
「こばばー」
「こ、これをぜひおめしになってくださいませませ」
 通路の一般生徒を蹴散らしながら、大ババ様と小さな空飛ぶ箒に乗った小ババ様が逃げてきます。併走するように、空飛ぶ箒に乗った風森 望(かぜもり・のぞみ)が、横で小ババ様用のドール用メイド服をひらひらさせていました。さらに、その後ろからは、神代明日香と、いつの間にか合流した葛葉 明(くずのは・めい)が追いかけてきます。
「大ババ様、こちらですわ。早く早く」
 すかさず、戦部小次郎が、大ババ様たちを手招きしました。
「逃げますよ」
 ボンと煙幕ファンデーションを振りまくと、戦部小次郎は小ババ様たちと姿を消しました。
「うにゃにゃにゃ……」
 いったん逃げられた神代明日香が、手で鼻のあたりをしきりにこすります。
「うーん、あたしのぺったんこが……。どこに行こうと逃がさないだもん」
 床の上でごろごろと転がる神代明日香を残して、葛葉明は走り出していきました。
 
    ★    ★    ★
 
「ふう、ここまで来れば安全ですわ」
「助かったのじゃ」
 肩で息をしながら、大ババ様が戦部小次郎に礼を言いました。
「いえいえ、大ババ様には逃げ延びていただかないと。そして、この責任とりやがれってんだよお!!」
 いきなり豹変すると、戦部小次郎は突然胸元を引き裂いて、顕わになったたっゆんを大ババ様の顔に押しつけました。
「うぎゃあぁぁぁ、たっゆんじゃ、たっゆんじゃ。しかも男じゃー。気持ち悪い……」
 戦部小次郎の生たっゆんに顔を挟まれて、大ババ様がもがき苦しみます。
「さあ、早くこの胸を元に戻しやがれ。さもないと……ここに用意したアイスクリームが溶けてなくなるぞ」
 戦部小次郎が、隠し持っていたアイスクリームを取り出して言いました。
「おお、それは。分かった、分かったから放すのじゃ」
 最大魔法で戦部小次郎を灰すら残らぬ形で葬ろうとしていた大ババ様が、そのアイスクリームを見て手を止めました。まさに危機一髪です。
「よし、なら教えてやろう。ざんすかじゃ。あのぺったんこですらないえぐれ胸を釜で煮だした出汁を煮詰めてエキスを作るのじゃ。カレーに混ぜてもよいぞ。それを飲めば、一日でたっゆんは消えてなくなる。だが急ぐがよい。手遅れになると、一生そのままじゃ」
「なんだって!」
 戦部小次郎は大ババ様とアイスクリームを放り出すと、急いでザンスカールの森の精 ざんすか(ざんすかーるのもりのせい・ざんすか)を捜しに行きました。
「ふう、簡単に欺されおって。そのまま腹をこわしてしまうがよい。やれやれ」
 大ババ様は、ほっと一息つきながらほとんど溶けかけたアイスクリームをぱくつきました。
「ところで、私の分身はどこに行ってしまったのだ?」
 大ババ様は、いつの間にか姿の見えなくなった小ババ様を捜して、周りをキョロキョロと見回しました。
 
    ★    ★    ★
 
「ここまで来れば安全よ。さあ、小ババ様、これにお着替えしましょう」
「こばー」
 風森望は、安全な所まで小ババ様を連れ出すと、いそいそとドール用の上等なメイド服を取り出しました。
「はい、全部脱いで。あ、そうそう、着る前にちょっといいでしょうか。ぺったん」
「こ、こばばばばばー!!」
 すっぽんぽんになった小ババ様を、風森望がちょんと押しました。その後ろには、型取り用の粘土があります。べたんと、小ババ様が粘土に背中から半分埋まりました。
「さあ、少しの我慢ですよ。型が取れたら、小ババ様人形を量産して、小ババ様ワールドをお作りしますから」
 身体の前面の型を取るべく、粘土をもった風森望が小ババ様に迫りました。このままでは、粘土に埋められてしまいます。小ババ様絶体絶命です。
「あたしの小ババ様に何するんだもん!!」
 いきなりブラインドナイブスで、葛葉明が風森望をハイキックで蹴り倒しました。
「あたたたたた……乱暴ですね」(V)
 風森望が、もんどり打って吹っ飛びます。
「まったく、なんということを小ババ様に……、えっ」
 すっぽんぽんで粘土に貼りつけられている小ババ様のちっぱいが、葛葉明の目に止まってしまいました。
「こ、これはちっぱいを揉めという天啓……」
「こ、こばー」
 そろそろと葛葉明が小ババ様に手をのばします。小ババ様、またまた絶体絶命です。
「人のこと言えないでしょうが」
 今度は風森望が、バーストダッシュのハイキックで葛葉明を吹っ飛ばしました。この際、スカートがお猪口になっても構いません。
「小ババ様は、私のものよ」
「違うもん、あたしのものなんだもん」
 動けない小ババ様を挟んで、二人が睨み合います。
「小ババ様のいる所、常に守りの影があり……」
 ふいに、仮面の男が、二人の前に立ちはだかりました。
「貴様ら、俺の小ババ様になんと言うことを。万死に値する!」
 問答無用、トライブ・ロックスターが、雷術で二人を吹っ飛ばしました。
「もう安心だよ小ババ様、悪は滅びた」
「まだ生きてるって!」
 むくりと復活する二人を無視して、トライブ・ロックスターが小ババ様を粘土の中から助け出しました。
「こばーっ。ぷはー。こばばばば♪」
 助かった小ババ様が、トライブ・ロックスターに御礼を言います。
「うっ、小ババ様、かわゆい……、はっ、すっぽんぽん!」
 今さら小ババ様がすっぽんぽんだったことに気づいて、トライブ・ロックスターが鼻血を噴いてぶっ倒れました。
「我ながら情けないぜ……」(V)
 トライブ・ロックスターが気を失います。
「これだから男は。さあ、小ババ様、型取りを……」
「違いますよね。マッサージを……」
 気絶したトライブ・ロックスターを踏んづけて、風森望と葛葉明が小ババ様に迫ります。
「ふおぉぉぉ。こばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!」
 呼吸を整えた小ババ様が、必殺の小ババ百烈拳を放ちました。ちなみに、ヒラニプラの特訓を生き抜いた小ババ様の今のクラスはモンク58(こばー)です。数字的におかしい気もしますが、本人はそう自称しています。
「うきゃあ!」
「ふっ、こばっ」
 風森望たちを必殺拳で葬り去ると、小ババ様はありがたくメイド服に着替えて、大ババ様を捜しに行ってしまいました。