リアクション
―レッツ・カオスパーティー― 珠樹の提案通り、予告時間には広場はパーティー会場となっていた。 いや、むしろちょっとした縁日のような雰囲気になっている。 弥十郎はさっそく、創作料理の屋台を響と一緒に出しているし、円の呼んだ男性陣はそれに舌鼓を打っている。 ちなみに響は接客だ。 いつの間にか設置されたステージでは由宇がメイド服でエレキギターを弾き、男性陣から拍手を送られている。 しかし、歌っているのが幸せの歌や悲しみの歌だったりで、みんなの気持ちの浮き沈みが激しくなっているようだ。 「うーん、まさか歌まで披露する事になるなんてねぇ。これはいつか、からかう時のネタに出来るかもねー」 アレンはノリノリで演奏している由宇を見ながらそんな事を呟いていた。 「なんか凄い楽しい感じになってきたね!」 わくわくしながら、愛美に変装している美羽が隣にいるマリエルに話しかけた。 「うん、これで誘拐なんて話しがなければもっと楽しめたのになぁ」 マリエルはミスドのドーナツを頬張りながら、返事をした。 「うんうん」 変装美羽もドーナツを一口かじる。 「私にもドーナツー!」 キャバ嬢に扮している愛美から催促があり、珠樹が口元へともっていく。 「ああ、顔に砂糖が……今、取りますわ」 珠樹が甲斐甲斐しくお世話をする。 木にぐるぐる巻きにされているのだから、仕方ないのだが。 ーーーーーーーーーーーー 予告時間まであと10秒というところで、街頭の明りがいきなり落ちた。 エルが地上から打ち上げ花火を上げる。 そして、学校の屋上に現れたのはハングライダー2つ。 プラス――謎のUFOだ。 謎のUFOはふらふらと上空を不規則に飛んでいる。 「そこに事件があるならば、呼ばれて無くても即推参! パラミタのホームズとワトソン『ブレード&ムーンナイト』只今参上!!」 ハングライダーがある屋上とは違う屋上でいきなり名乗り口上を上げたのは漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)だ。 「……何その恥ずかしい名乗り」 「……言ってみたかったの」 後ろで機関銃を設置していた樹月 刀真(きづき・とうま)のつっこみに月夜は照れながらそう答えた。 そんな口上は意に介さないと言わんばかりにハングライダーが屋上から飛び立った。 「刀真もう良い、下に降りて追いかけよう」 それを見た月夜はそう言うと、走り出していた。 「……」 刀真は黙って機関銃を片付け始める。 そりゃあ、これだけ重たいものを運んで、しかも重たいからエレベーターにも乗れず、階段でここまで来たっていうのに、労いの言葉もないんじゃあ、無言にもなるだろう。 ハングライダーはゆっくりと上空を旋回し、様子を窺っているようだ。 ハングライダーが下につくよりも早く、UFOの方がその姿を現した。 ゆっくりと地面に着陸。 「盗賊パープルバニー参上!」 その正体は光学モザイクを使用して機晶回転盾で飛んでいたガートルードだ。 紫のバニースーツを着こんでいる。 足は勿論、網タイツ。 周りの男性から歓喜の声が聞こえてくる。 「……」 ポーズをとったまま固まるガートルード。 「こちらに何かアクションを起こすんじゃないんですか?」 火焔の言葉に真っ赤になってしまった。 「何も考えてませんでしたー!」 「ええーーーー!?」 まさかのガートルードの言葉にその場に居たみんなが声を揃えた。 「このバ怪盗! 手前のお陰でこっちはお疲れ様だよ! 警察の取調室でカツ丼食わせてやるから覚悟しろよ!」 そこへ、屋上から降りてきた刀真が到着した。 よっぽど頭に来ているのだろう。 機関銃を片付けると月夜を抜かして、広場に着いたのだった。 「刀真、早い」 「月夜、剣だ!」 刀真はそう言うと、後ろにいる月夜へと手を伸ばした。 しかし、その手には剣の感触はなく、ふにゃんと柔らかなものが……。 「……悪い間違った」 刀真の手の先にあったのは、月夜の胸だったのだ。 それを鷲掴みにしている状態。 「私は刀真のもの……でも……」 そういうと、殺気を出し刀真に迫る。 「いや、悪かった!」 及び腰になる刀真。 「女性に何をするー! 怪傑エックスが天誅を下す! ファイナルエックスレター!」 そこへ、エルが必殺技の名前を言いながら、腕を十字に交差させ光術を乱射した。 「うわっ!」 ダブル攻撃に耐えかねて、刀真は逃げ出した。 それを追いかける月夜とエル。 エルに至っては、火焔に向かってくさやをぶつけてくるほどの余裕があるようだ。 ーーーーーーーーーーーー ドタバタしたところへハングライダーが急降下してくる。 1つには蝶子と円が、もう1つには青太が乗っているようだ。 「蝶子さんの服……袖がひらひらして本当に蝶みたい」 その様子をうっとりと見ているのはリースだ。 本人はぴっちぴちの黒のボンテージを着ている。 リースが見ていると、蝶子の後ろに黒い影が追ってきているのを見つけることが出来た。 青太のハングライダーは広場から少し離れたところへと落ちていく。 もう少しで愛美の居る木の上空というところでその黒い影が蝶子へと接近した。 その黒い影はバーストダッシュとダークネスウイップを巧みに使い、飛んでいる蝶子へと近付いてきていたのだ。 その正体はトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)。 「ってか、なんで怪盗なのに和服なんだよ! レオタードじゃないのか!?」 そんな事を言いながら、蝶子の方へと手を伸ばす。 「危ないよー」 それを察知した円が、蝶子の帯をちょいちょい引っ張り、注意を促す。 少しだけ帯がゆるくなったようだ。 「あら、本当ね。あたしに触らないでくれる?」 嫌そうにトライブを見ると、離れようとするが、ぴったりと張り付かれてしまっている。 後ろに貼りつかれた瞬間、トライブの指が帯に引っかかる。 そのままゆるくなった帯が解けていく。 「いっやーーん!」 風にたなびき、帯の解かれた和服がひらりと舞う。 「蝶子さんの服……袖がひらひらして本当に蝶みたい……って、言ってる場合じゃない!」 リースは全てを見ていた。 綺麗な形の胸が露わになり、広場に集まっている男性が歓声をあげる。 このまま下に向かうのかと思われたが、なんとも器用に片手で帯代わりの紐を取り出し、腰に巻き付けた。 「おー!」 円がその技に目を煌めかせた。 トライブは帯を手に地面に着地した。 その顔はなんとも……満足そうだ。 トライブが着地して、すぐ蝶子と円はハングライダーで広場の中心の木の近くまで来た。 そのまま、円は木の周りを廻らせていたカスリ網を手でつかみ、外していく。 そして、ハングライダーは広場の外れへと向かって行った。 広場の外れでは、ハングライダーから降りていた青太が待っていた。 「蝶子お姉ちゃん……本当にやめないの?」 「ここまで来て、何言ってるの! じゃ、ハングライダー宜しくねー!」 「う、うん……」 青太が見送ると、蝶子は予備の帯を締めてから、円の用意したトレンチコートとサングラスを付けて広場の騒ぎの中へと戻って行ったのだった。 |
||