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はじめてのおつかい(ペット編)

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はじめてのおつかい(ペット編)

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「さあ、二位が入ってきました。カタリーナさんです」
「やったわー。偉い、カタリーナ!」
 一緒にゴールに飛び込んできたセルシア・フォートゥナが、カタリーナを捕まえて喜ぶ。
「ちょっと、姉様、喜ぶのはいいから早く助けてよ!」
 無視されかかったマリア・ハッツフェルトが、足下で逆巻いているだろうマジックスライムのことをちょっと思って、セルシア・フォートゥナにむかって叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
 そのころ、光る石に興味を示してしまったゲシュタール・ドワルスキーのシュナイダー12世がもろにしびれ粉を浴びてひっくり返っていた。そこへ、同じ仲間のキャプテン・ワトソンのオルカがやってくる。
『俺の屍を越えていけ』
『分かった、兄者』
 そんな会話がアイコンタクトで交わされたかは不明だが、オルカは単独で先に進んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
 ナナ・ノルデンの給水所で止まっていたペットたちだが、一斉にレースに復帰したようだ。給水も終え、元気いっぱいというところだろうか。
「ゴールまではあと少しです。ファイトなのです♪ さあ、寄っていってくださーい」
 ナナ・ノルデンが呼びかけるが、遅れを気にしてかロウファは脇目もふらずに全力で通りすぎていった。
 
    ★    ★    ★
 
『小ババ様、さあ、復帰してください』
 風森望と音井博季に救われた小ババ様たちが氷の魔法陣から開放されてコースに復帰していく。無事全員救出されたかと思ったところに、バタバタと朝霧垂のティーカップバンダたちがなだれ込むようにして魔法陣に貼りついていく。
「うああ、お湯をかけてやってくれー。そして、早く俺を助けにきてくれー!」
 モニタでその様子を見ていたパンダの着ぐるみを着た朝霧垂が、じたばたしながら叫んだ。それにしても、いつの間にこんな格好をさせられて縛られていたのか記憶が飛んでいる。おそらくはパートナーのライゼ・エンブの仕業なのだろうが、今はとにかく助かりたいというところだ。
 
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 喉を潤したアルビナスが去ったマナ・ウィンスレットの氷屋だったが、狼のミヤルスと紙ドラゴンのセイツェマンは素通りしていった。
「まあ、これくらいはやってもらわないと、ボクの使い魔なんだからね♪」
 モニタを見たズィーベン・ズューデンは得意げだが、もともと紙ドラゴンは氷は食べないとは思うのだが。
 
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「風雅、大丈夫ですかねえ……」
 黙々とパーツ拾いをしていた風雅の姿をモニタで見て、ザカコ・グーメルは軽く溜め息をついていた。
「門次郎さんや、シヴァさんやゼノンさんも頑張っていますねえ。猫とかもかわいくて好きですよ。小ババ様も是非欲しいですね」
「猫は、すべてかわいいと決まっているからね。俺なんか、エオリアに、レースに参加しているすべての猫を撮影するように言ってあるんだ」
 ザカコ・グーメルの言葉に、ちょっと自慢そうにエース・ラグランツが言う。
「それはいいですねえ。他の人のペットたちがどういうことをしているのかは、やはり気になりますから」
 強面を破顔一笑させてルイ・フリードも答えた。
 一見まったりとしたペット談議に見えるが、人質になっている飼い主たちにはそれしかすることがなかった。
 
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「いいかげん脱出しないと……うわ、た、助け……」
 なんとか自分の罠から抜け出そうとしていたクロセル・ラインツァートは、いきなりスラの助さんに覆い被されて息を詰まらせた。あろうことか、上に乗っかったスラの助さんがだんだんと凍りついていく。
「た、助け……」
「えっ、しかたないなあ」
 クロセル・ラインツァートに懇願されて、レポーターをしていたレテリア・エクスシアイがノルニル『運命の書』の所へお湯をもらいに走った。
 
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「ああ、もう、スラの助さんったら、またもやあんな見え見えの罠にかかってしまうなんて……」
 未だ最下位から脱出できないスラの助さんに、佐倉留美が渋い顔をした。
「まあまあ、楽しめればいいではないですか」
 エッツェル・アザトースが、なぐさめるかのように佐倉留美に声をかけてきた。
「一緒に、助けを待ちましょう。それで、いかがでしょうか、お暇でしたら今度……」
「遅い!!」
 のんびりと口説き始めたエッツェル・アザトースの声をかき消すように酒杜陽一が叫んだ。
「大丈夫、甚八は必ず助けに来てくれる!! 私と甚八は深い絆で結ばれてるもんねー」
 ゴールする者が現れ始めて焦りを感じて苛つく酒杜陽一をなだめるように、ソラ・ウィンディリア(そら・うぃんでぃりあ)が自信をもって言った。
「でも、いくつも罠が仕掛けられているようだからなあ。無事に辿り着いてくれっといいけど。まあ、俺にくらべりゃ、あいつは狼にしては賢いもんなぁ、俺が心配するよりずっとたくましいはずだ、信じて待つしか!」
 ちょっと心配そうな顔になりながらも、染谷こうきも自分のペットを信じて待つことに決めている。
 そのころせっかくトップでゴールした藤乃が、人質の神和瀬織の前で足踏みしてしまっていた。
「早く縄を解いてくれませんか、藤乃」
 せっかくゴールしたのに、このまま縄を解いてもらえなくてスライムの海に沈むのはいただけないと、神和瀬織はうっすらと額に冷や汗を浮かべながら藤乃に訴えた。
 肝心の藤乃は、クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)の方をちらちらと見て、今の場所からそれ以上近づこうとはしない。
「あの、藤乃、もう壊したりしませんから、怯えないでください。……なんで隠れちゃうんですかぁ!」
 声をかけたとたん、すすすっと後ろに下がる藤乃を見て、クリス・ローゼンが拳を振り上げた。
「ほら、そんな格好するから、また怯えちゃったじゃないか。――藤乃、クリスもわざとやったんじゃないんだよ。ちょっと力の制御ができなかっただけなんだか」
「何よ、それじゃ、私が馬鹿力みたいじゃない」
 クリス・ローゼンが神和 綺人(かんなぎ・あやと)に言い返したが、体育85では、それほど強く否定できないのではないだろうか。少し前にちょっと力の加減を失敗したクリス・ローゼンにバラバラにされかけたため、藤乃はひどく彼女を恐れるようになってしまったのだった。
「大丈夫だ……」
 そうつぶやくように言うなり、ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)が後ろからがしっとクリス・ローゼンの腕をとって動けないようにした。
「うん。ほら、もうクリスは動けないからね。早く瀬織の所へ行ってあげなさい」
 同じようにして、クリス・ローゼンのもう一方の腕をがっしりとかかえ込んだ神和綺人が言った。
 その言葉を聞いたとたん、藤乃がちょこまかと駆け寄って、神和瀬織の縄を解いた。
「ふう、やっと助かった。ありがとう、藤乃」
 立ちあがってうーんとのびをすると、神和瀬織はそっと藤乃の頭を撫でた。
 
    ★    ★    ★
 
「いいなあ。マカロンちゃんも早く帰ってこないかなあ」
 頭の上にゆるスターのエクレールをちょこんと乗せたまま、秋月葵がうらやましそうに神和綺人たちの方を見た。
「大丈夫。マカロンちゃん、きっと葵ちゃんのために頑張ってますから」
 エレンディラ・ノイマンが、秋月葵を励ました。
「頑張れ、パンとティー。詩穂はずっと信じているよ。頑張れ頑張れパンティー、頑張れ頑張れパンティー!!」
 騎沙良詩穂が、少し恥ずかしい応援を大声で始める。
「我も大概のことは耐えられるが、できれば、こんな所に長居はしたくないのであるが……」
 不本意ながら人質を続けていたジュレール・リーヴェンディが、その応援を聞いてもう早く終わりにしたいという顔でつぶやいた。
 
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「ど、どうやら、こ、ここが、イベントの、か、会場みたい、で、ですう……」
 まだ少し痺れてろれつの回らないメイベル・ポーターが、ゴール地点に姿を現して言った。
「ここで待っていれば、小ババ様が現れるのですねねねねね……」
「うん、ここで待ってようよよよよよよ……」
 フィリッパ・アヴェーヌの言葉に、セシリア・ライトも同意した。