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はじめてのおつかい(ペット編)

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はじめてのおつかい(ペット編)

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残り10ターン
 
 
「さあ、表彰台にのぼれる三位はどうなるのでしょうか。バフバフさんと村雨丸さん、激しいデッドヒートです。バフバフさんが少し早いか。いや、村雨丸さんが追い抜いたか。判定は……!! 同着です。三位は、バフバフさんと村雨丸さんが同時にゴールしました!」
 少し興奮気味に、シャレード・ムーンが会場中に響き渡る声で実況した。
「にゃんですとぉ! ゆるゆるパイレーツは、ゆるゆるパイレーツは何をしてるにゃん!」
 その実況に一番衝撃を受けたのがシス・ブラッドフィールドだった。
 ちらんと悠久ノカナタの方を盗み見てみると、バッチリと視線が合ってしまう。にんまりと勝ち誇ったブラックカナタの視線が、容赦なくシス・ブラッドフィールドを貫いた。
 
    ★    ★    ★
 
「……ええ。いつも一緒のこの子なら、きっと助けてくれるに違いないと思っていましたわ」
「以上、第二位になられたマリア・ハッツフェルトさんの喜びのお言葉でした。マイク、本部にお返しいたします」
 大谷文美が、解放されたマリア・ハッツフェルトのインタビューを終えて言った。
 
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「はい。では、コースの状況を見てみましょう。なんとか痺れから回復したシュナイダー12世さんは、小ババ様とならんでレース復帰です。さすがは小ババ様、こういった罠には引っかかりません。鷹野栗さんのミヤルスさんは、光り物につられたか、鬼崎朔さんの罠に引っかかってしまいました。痺れています。ナナ・ノルデンさんの給水所には、毒島大佐さんのヨシテルさんと琳鳳明さんの小剛が立ち寄っています。二人とも武者人形ですから水は必要ないはずなのですが、他のペットのまねでもしたかったのでしょうか。ダリル・ガイザックさんのオルガさんとエリシア・ボックさんのフォルテシモさんはゴーレムですから、給水所に気をとられることもなく黙々と進んでいきます。その後ろでは、レイストリオさんが、またひんやりとした罠に捕まってしまったようです。レーヴェ・アストレイさんの作った魔法陣の中で、まったりと涼んでいます。その姿に驚いた朝霧垂のティーカップパンダさんたちが、死にものぐるいで罠を脱出していきました。よっぽど怖かったのでしょうねえ。ソア・ウェンボリスさんのテオルさんは、ここで遅れを取り戻すべく氷屋を無視していきました。あ、今入りました情報ですと、アルノー・ハイドリヒさんの撒き散らした日本酒に、右介さんと左介さんは完全に酔っ払ってしまい、あらぬ方向に猪突猛進しているそうです。そういえば、クロセル・ラインツァートさんとスラの助さんは、無事に溶けたそうです」
 
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「もう、またまた右介と左介も馬鹿ね。すばらしく馬鹿だわ。飼い主に似るにも程があるって……何度言わせるのよ。ちょっと待ちなさい、今治してあげるから」
 ルルール・ルルルルルは、酔っ払って走り回る右介と左介を必死に追いかけていた。
 
 
残り9ターン
 
 
「さて、続々ペットたちがゴールし始めました。七尾蒼也さんのヒカリさん、童話スノーマンさんの小雪さん、秋月葵さんのマカロンさんがゴールラインを突破します」
 
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「はい、こちら救出された方々です」
 人質コーナーで、大谷文美がシャレード・ムーンからマイクを受け継ぐ。
「ふっ、わらわを救うのであるからな。トップグループは当然である」
 嬉しくてにまにましている口元を隠しながら、悠久ノカナタがインタビューに答える。
「バフバフちゃんならやってくれると思っていました」
 ニコニコするヴァーナー・ヴォネガットのそばで、クレシダ・ビトツェフはバフバフにほっぺにちゅー(V)をしていた。
 
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「さて、残るレースの方ですが、各ペットが着実にゴールに近づく中、ギルベルト・ハイドリヒさんのガブリエルさんは、思い切り鬼崎朔さんのしびれ粉を吸い込んでしまったようです。嗅覚に頼って罠を避けていたのが、ここに来て裏目に出たのでしょうか。鷹野栗さんのミヤルスさんは、なんとか動けるようになったようですね。毒島大佐さんと琳鳳明さんのゴーレムさんたちは気がすんだのかレース復帰です。代わりに、給水所にはソア・ウェンボリスさんのテオルさんが水を飲みに舞い降りました。すっかり冷えたのか、レイストリオもレースに復帰した模様です。ゲキさんとフレキさんはレイストリオを警戒してか、うまく魔法陣を避けられたようですが、酒杜陽一さんの甚八さんは突っ込んでしまったようですね。ヤカンを持った救出隊がむかっているようです。右介さんと左介さんは、ルルール・ルルルルルさんに酒気を抜いてもらい、レース復帰です」
 
 
残り8ターン
 
 
「続々とペットたちがゴールしてきます。エッツェル・アザトースさんのニャルラトホテプさん、染谷こうきさんのレオンさん、戦部小次郎さんの景虎さん、赤嶺霜月さんの槲さん、立川ミケさんのネコ軍団さんがゴールしました」
 
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「えっへへー、ばっちり☆ ゴールの瞬間はしっかり記録したよ」(V)
 カメラを持った立川るるは満足気だ。
「ななななななな、ななごなななななーご! なななななななななななん!」
 立川るるとじゃれあう七匹の猫たちにむかって、立川ミケが早く助けてと叫んだ。
 
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「ふむ、事実、雪だるまフォルムの黄金比を体現する拙者の愛ペット小雪に勝る者はいないでござるな」
 少し離れた所では、童話スノーマンが、ほれぼれと小雪を眺めている。
 
    ★    ★    ★
 
「葵ちゃん、喉渇いていませんか?」
「うん、大丈夫だよ」
 クルクルと追いかけっこしているマカロンとエクレールを間にして、秋月葵とエレンディラ・ノイマンはくつろいでいた。解放された飼い主たちは、エリザベート・ワルプルギスたちもいる本部で、ペットたちと一緒にのんびりとしている。
 
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「ヒカリ! 待ってたぞ! 今餌をやるからこの縄を囓ってくれ」
 七尾蒼也に言われて、デビルゆるスターのヒカリが縄を囓り切った。
「ようし、よくやった」
 ヒカリをだきあげた七尾蒼也がふと目をむけると、まだ縛られたままのジーナ・ユキノシタがうつむいて目を逸らしている。
「大丈夫だ。ビスマルクはもうすぐここにくるって」
 七尾蒼也は、あわててフォローを入れた。
 
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 ゴールの直前では、ルカルカ・ルーのゴーレム軍団が遅ればせにやっとオルガがいないこと気づいて、立ち止まって彼女を待っていた。
 
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「はっはっはっ、しびびびび……」
「ケタケタケタ、しびびびび……」
「フォッフォッフォッ、しびびびび……」
 レイストリオが、しびれ粉の中で楽しそうに舞い踊っている。
「キャン、キャン、キャン!」
 それを見たギルベルト・ハイドリヒのガブリエルが、動くようになった身体を酷使してあわててその場を逃げだしていった。
 
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 ソア・ウェンボリスのテオルは水を補強して元気を取り戻し、酒杜陽一の甚八は氷を溶かしてもらって元気にレースに復帰している。
 
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「さあ、美味しい氷なのだ!」
 電動かき氷器をシャカシャカと回転させて、マナ・ウィンスレットが叫んだ。機械の下にセットされた深皿に、削られた氷がたまっていく。なぜか、そこへ黒竜と白竜が飛び込んだ。コースを見誤ってかき氷器の下をくぐろうとしたのか、コントロールしている如月玲奈が誘導をミスしたのか。ともあれ、今の黒竜と白竜はかき氷の具となって、それに気づかないマナ・ウィンスレットにパンパンと押し固められていった。