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乙女達の収穫祭

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乙女達の収穫祭

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第17章 飲めや歌えや踊っちゃえ☆


 翌日、収穫祭は、テスラの演奏から幕を開けた。

 乙女たちが踏んだ葡萄ジュースがふるまわれ、たくさんの料理が運ばれる中、台の上では、葡萄踏みの衣装を来た乙女たちが桶の中で葡萄を踏んでいる。
「さぁさ、こっちでは葡萄踏み体験やってますよー! そこの娘さん、せっかくだから寄ってって!!」
 美咲は、自身が企画したイベントで、収穫祭を盛り上げていた。
 野々は、臨時のメイド頭として指示を出し、収穫祭を滞りなく進むよう働いている。明日香も普段着のメイド服を生かし、野々を手伝った。

 ミーナは葉月とともに葡萄ジュースと料理を楽しみ、テスラの演奏を聴いてデート気分を味わっている。
 可憐とアリスも葡萄踏みを見て楽しみ、アルメリアも葡萄を踏む女の子を見て楽しんだ。
 洋介は、アンデッドがただの本物だった上に、真相を突き止めたのが自分ではなかった事への不満から、やけ食いに走り、正悟は葡萄ジュースを味わいながらのんびりと洋介の愚痴を聞いていた。
 ミーナ・リンドバーグが、ロザリンドと一緒に収穫祭の警備として会場内を巡回していると、給仕係の翔が2人に御苦労様と声を掛け、葡萄ジュースを渡した。
 ソールは、元メイド達の輪に入って彼女たちを口説いていたが、なぜか笑いをとっていた。
 アリアはせっかくだからと持ってきたデジカメで写真を撮り、ミューレリアはせっかくだからと写真を撮ってもらった。
 ブリジットは村人にメイ探偵の活躍ぶりをドラマチックに語り、舞はあんまり嘘はつかない方がいいのにと思いながら黙って聞いていた。
 由宇はテスラとは違う場所でエレキギターの演奏を披露し、アクアはそれを聞きながら言い寄る男達を手玉にとって遊んでいた。
 雪白と由二黒は、なぜか村のおばさん達にモテモテで、色んなお菓子やご馳走を奨められている。
 ヴァーナーとミルディアはあいかわらず元気よく葡萄を踏んでいるし、有栖は2人についていこうと頑張っている。そんな有栖に負けないくらい、ネージュも頑張っている。
 日奈々と千百合は、あいかわらずラブラブだし、コハクは美羽に連れまわされている。
 オルフェリアはまだ体調が万全とはいえないメアリのそばで話し相手を務め、ミリオンはそんなオルフェリアのそばにいるだけで幸せだった。
 エレンディラは葵が葡萄を踏むのを見守りながら、イングリットのイタズラに目を光らせる。
 終夏はテーブルを回ってヴァイオリンの演奏をしており、ニコラはようやくひと息つけると、ステンノーラおすすめのヒラニプラ茶を試してみた。
 祥子と朱美は、どちらが収穫祭の乙女の衣装に違和感がないかと議論になり、リオンは紫がタダだからと葡萄を死ぬほど食べるのを見て、胸やけがしていた。
 沙幸と満夜と未沙とレキは、メイベル達、主にセシリアから村で買うべきお土産ベスト10の情報を仕入れ、パートナー達へのお土産をどれにしようかと考える。

 それぞれが収穫祭を楽しむ中、封印されていた村でもやっていた葡萄踏みを思い出し、桃花はほんのりと笑みを浮かべた。
「なんだか、懐かしいです」
 もっとも、あの頃は封印されてた為、葡萄踏みに参加する事も、出来上がったジュースを飲む事もなかったのだが。ただ、毎年繰り返し聞いていた葡萄踏みの歌は、甘い香りとともに記憶に刻まれている。
 その歌を、郁乃が教えた通りに歌いだす。

「この実り祝う良き日に 乙女は踊る
 さぁ 太陽の恵み 大地の息吹を集めし葡萄よ
 季節の記憶を刻み込む 特別な酒となれ」

 つられて桃花も一緒になって歌い出す。
 郁乃とそのパートナー達は、お互いに手を取り合い、リズムに合わせ、心をこめて葡萄を踏んだ。
 歌の合間に、葡萄を踏みながら、灌は桃花にそっと囁いた。
「……何だか、凄く視線を感じます」
 そんな灌に、桃花が微笑んで囁き返す。
「こうした豊穣の祭りは、花嫁探しがセットのことが多いですからね」
 花嫁という単語にドキッとした灌は、ちらりと周りを見た。
 しかし、周りは家族連れや、年寄りが多く、初めて見る葡萄踏みに興味津津のようだ。
「……ちょっと、違うかもしれません」
「そうみたいですねぇ」
 自分のいた村ではそうだったのだと桃花は言うが、灌としてはこの方がまだ気が楽だった。緊張がほぐれた灌は、やがてスカートの裾など気にならないくらい葡萄踏みに夢中になっていった。
 葡萄踏みに疲れたマビノギオンは、早々に桶から離れ、休憩用の椅子にくたりと座ってパートナー達の様子を眺めていた。慣れてきた郁乃などはくるりと回ったり、歌にあわせてステップを踏んだり、周りの子供に手を振る余裕も見せている。色々あったが、皆が無事で、こうして楽しく収穫祭を迎えることができてよかったとマビノギオンはぼんやりと考えた。もう警戒する必要もないのだと思うと、疲れも手伝い、やがてマビノギオンはやすらかな寝息を立てはじめた。
 しばらくして、休憩を取りに来たパートナー達は、マビノギオンを起こさないようにその周りに座った。
「気持よさそうな顔してるよね」
 郁乃が小声で言う。
「疲れたんですよ」
 桃花が囁く。
「ここは桃花がついていますから、お2人は葡萄踏みに戻って下さい」
 桃花の言葉に、郁乃と灌は素直に従った。もうずっと踏んでいたのに不思議なほどに疲れてないのだ。まだまだやれると、躍る心が叫んでる。郁乃と灌は湧き立つ思いを抑えられず、手をつなぎ、小走りで桶の輪に戻った。