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開け、魔法の本 ~大樹の成績を救え?~

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開け、魔法の本 ~大樹の成績を救え?~

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エピローグ
 
 
「なるほど、それでここ最近うちが賑やかだったのか」
 シンクの村にある篁家。そのリビングの隅で篁 透矢が無限 大吾と話をしていた。
「大勢で押しかけて迷惑かとは思ったんだけどね。結構大樹君達の為に勉強を教えたいって人が多かったんだよ」
 予め宣言をしていた神拳 ゼミナーを始めとして、ルイ・フリード、冴弥 永夜などが入れ替わり立ち代わりに篁家を訪れては勉強を教えていた。
 今は件の問題集に取り組んでいる篁 大樹を桐生 理知が監督している。
「ん〜、惜しいっ。ここで計算を間違えてるからその先が全部違う数字になっちゃってるね」
「うぇっ!? 本当だ……」
「大樹君の弱点はそこだね。基本は出来てるのに、時間に追われて焦っちゃうのかな。いつも同じ感じで間違えちゃってるよ」
「同じって何で分か――ってそれ!」
 理知が手元で開いていた本。それは例の魔法の本だった。そこには昔に見た記憶のある、×印の溢れるページがあった。
「ああ、これ? 大樹君の苦手な傾向が分かるかと思って、昔の答案が浮かぶようにお願いしたんだ」
「げっ! せっかく証拠隠滅したってのに!」
「あ、やっぱりそういう事してたんだ。じゃあもし勉強をさぼったりしたらこの答案、おじ様に見せちゃおっかな〜」
「勘弁してくれよー!」
 まぁ実の所、大樹がこっそり処分していたはずの答案用紙は、その度に篁 天音がサルベージして篁父へと渡されていたのだった。
 張本人は大樹の横でノートを広げ、話を聞いていなかった事にして勉強を続けている。
 その向かいでは沢渡 隆寛が神埼 輝とシエル・セアーズに勉強を教えていた。こちらも蒼空学園中等部の3年コンビだ。
「輝様の回答はそれで問題ございません。シエル様は……残念ですが、今回使用するべきなのはこちらの式ですね」
「あ〜ん、また違った〜! 何で私も勉強しないといけないの〜!?」
「ボク達だって試験があるのは同じでしょ、シエル。アイドル活動で遅れてる所もあるんだからここで取り返さないと」
「う〜。勉強嫌い〜、歌いたい〜」
「駄ー目。ファンの皆を幻滅させない為にもちゃんと頑張るの」
 勉強をしながらもわいわいと賑やかなリビング。そこに台所から篁 花梨と火村 加夜がお菓子を持って現れた。
「お待たせしました。クッキ−が焼けましたよ」
「私と花梨ちゃんで作ったんです。一旦休憩して、おやつの時間にしましょう」
「よっしゃ! 待ってました!」
「わ〜い! お菓子お菓子〜」
 食いつきが良いのは当然の如く大樹とシエルの二人だ。周囲の皆は軽く呆れながらもテーブルの上の勉強道具を片付け、そこに沢渡 真言がカップを並べて紅茶を注いで行く。
「皆さんお疲れ様です。透矢さん。透矢さん達の分はそちらで宜しいですか?」
「ああ、テーブルは勉強組で使ってくれ」
 紅茶とお菓子が行き渡り、各々が休憩を取る。花梨、加夜、真言の三人は透矢と大吾と同じようにソファーへと腰掛けた。
「クッキーも紅茶も美味しそうだな。頂くよ」
 大吾が早速手を伸ばす。両方とも良い出来で、テーブルの方からも賞賛の声が上がっている。それぞれ何枚目かのクッキーに手を伸ばし始めた頃、花梨が尋ねた。
「それで、どうですか? 大樹君の勉強は」
「そうだな……まだ間違えたりする所も多いけど、試験を受ける分には問題無いくらいにはなってると思うよ」
「大吾達のおかげであいつも変わったみたいだな。以前に俺達が教えてた時とは違って、難しい問題でもまずは取り組んでみようっていう意識が見えてる」
 透矢の目から見て、一番変化があったのはそこだった。同様のものを感じていたのか、加夜もその意見に同意する。
「大樹くんも分かってくれたんですよ。このまま勉強していけば、天音ちゃんみたいな頭の良い子になってくれるんじゃないですか?」
「さすがにそれはどうだろうなぁ。まぁ、あいつの親は医者だったから、血筋としてはその可能性も無いとは言えないんだろうけど」
 
 
 休憩時間がある程度経過した頃、来客の姿があった。
「よぅ、お邪魔させて貰うよ」
「こ、こんにちは〜」
 現れたのは匿名 某と結崎 綾耶だった。二人を天音が迎え入れる。
「いらっしゃい、綾耶ちゃん。うちの場所、すぐ分かった?」
「はい。大きい家だからすぐ分かりました。凄いですねぇ」
「まぁうちは家族が多いから。それより入って入って」
 某は今回の調査手伝いの報酬で綾耶と何か美味しい物でも食べに行こうかと考えていた。そこに洞窟内で綾耶と仲良くなった天音が声をかけ、今日の食事に招待する形になったのである。
「……で、一緒にお前も来たのか?」
 二人の後ろにいる人物に篁 月夜が声をかける。そこにいたのは日比谷 皐月だった。マルクス・アウレリウスと篁父が電話で会話した際に『シンクに遊びに来るくらいなら』と話していた事を知って、さっそく来たようだ。
「某が美味しい物を食べに行くって言ってたからな。せっかくだからついて来た」
 そう言ってちゃっかりと上がりこむ。今日の夕食は更に賑やかな事になりそうだった。
 
「よーっし! 最後の追い込み、いっちょやってやっか!」
 休憩が終わり、大樹が気合を入れる。そんな彼を輝が笑顔で見ていた。
「ん? 何だよ輝、ニヤニヤして」
「大樹君、変わったなと思って。授業中は良く寝てたし、シエルより勉強嫌いだったのにね」
「よ、余計な事言わないでよ、輝!」
「ん〜、まぁ皆のお陰って言うのもあるし、それに……最後だからな」
「そうだよね。試験が終わって、もう少ししたらもう、ボク達高校生なんだよね」
 思わずこれまでの事を振り返る。大樹や天音を始めとして途中から蒼空学園に編入して来た者は多いが、その僅かな期間だけでも起きた出来事は色々あった。
「高校生になった俺ってのも想像つかねぇなぁ。今とどう違うんだろ」
 頭の後ろで手を組み、天井を見上げる。兄弟には高校生も大学生もいるが、自身がそうなった姿というのはいまいち思い浮かばなかった。
「きっと、変わらないんじゃないかな」
「どういう事だ?」
「こうやって騒いで、勉強して、たまにはこの前みたいな事もあって。そうやって皆で楽しくやって行けるんじゃないかって事」
 輝の言うとおりだ。高等部に進学したからといって、それで急に何かが変わる訳では無い。勿論、友人としての仲もだ。きっとこれからも、四人は友人として、クラスメイトとして過ごして行くのだろう。
「おっしゃ! だったらやる事は一つだ。せっかくだから試験も乗り切って、気持ち良く卒業してやるぜ!」
 『おー!』という掛け声がリビングに響く。周りの暖かな手助けと共に、少年少女達は残り少ない中学生活を過ごしていくのだった――

担当マスターより

▼担当マスター

風間 皇介

▼マスターコメント

 こんにちは。風間 皇介です。
 無事に第三作をお届け――って毎回言っていますね。
 とはいえ、実際何とか期限内に仕上げる事が出来ました。
 
※ 4月25日、リアクションを修正しました。該当箇所の方にはご迷惑をお掛けしました。
 
 修正ついでという訳ではありませんが、マスターコメントに書く時間が無く、後日マスターページに記載していた分を加えさせて頂きます。
 
 
・執筆当時の完成が締め切り直前だった為、称号は一応全MCとLCに贈れはしましたが、大半の方がテンプレ称号です。
 また、個別メッセージも挨拶のみの方がほとんどになっています。申し訳ありません。

・今回、一点だけ残念な点がありました。
 『体』の試練において、ガイドで「耐久力があり、かつ『属性攻撃に強い耐性を持つ』」と書いておいたのですが、それを知ってか知らずか属性武器・技でアクションをかけられた方が結構いました。
 魔法なんかだと属性持ちと分かりやすいので、効かない事を前提としたアクションだったのですが、打撃系で属性攻撃をする方、特に「武器自体に属性がついている」装備の方なんかだと、気付いていないのかダメージ目的でアクションをかけられていました。
 風間は基本的に判定は緩く行うのですが、さすがにこのアクションを通してしまうと無属性武器・技で揃えた方の立場が無いので、上記に該当した方は基本的に補助的な役割に回って頂いています。
 次回以降はお気をつけ下さい。
 
・大樹への皆さんの反応
 当然というか何と言うか、大半の方が「本の力に頼らず自力で試験を乗り越えろ」でした。
 実は風間も同意見な上であの様なガイドを公開したので、そういう意味では皆さんの反応は『計画通り』と言えます。
 ……言えるんですが、次々と情けない奴呼ばわりされる大樹を見て、自分が責められている訳でも無いのに何か泣けてきました。
 正論が胸に痛いよ……
 ともあれ、あそこまで早い所で大樹が大事な事に気付く展開になるとは、いささか予想外でした。
 これも皆さんの様々な説得のおかげと言えますね。
 
・コメディ要素
 いやぁ、結局普段とやってる事が変わってなかったりしますね。
 本当はもっとオチ的なラストで締める予定だったのですが、予想以上に大樹を応援してくれる方が多く、急遽後日談の追加となりました。
 出来ればそれぞれの家庭教師としての姿も描写したかったのですが、時間の関係で断念です。
 ちなみに今回はコメディ寄りという事で割とメタ的な要素があったり地の文で遊んでいたりするのですが、ここまで極端なのは今回のみで、次回以降はコメディ寄りだとしても普通になると思います。
 といいますか、自分はたまに脱線するくらいで、本格的なコメディはそれに向いているマスターにお任せした方がいいんじゃないか、という気がしますね。今回の限りだと。
 
・その他
 貴重なアクション欄を使用して前作までの感想や応援メッセージを記入して下さった方々、有難うございました。
 再び風間のシナリオに参加して下さっただけでも有り難いのに、ああいったお言葉を頂けると励みになります。
 掲示板にて感想を書いて頂いた方も含め、皆さんの反応・感想は一番気になる所です。
 個人個人に直接お礼を言えないのが心苦しいですが、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
 
 
〜今回の予想外〜
 
・ルート選択
 仕掛けを考えている段階では技が一番多くなると予想していました。
 そうしたら掲示板で均等に散らばっている事にまず驚き、アクション締め切り後に確認したらLC含めると一番少ないと思っていた心が一番多かった事に二度驚きました。
 同じ弱点でも皆さん独自の解釈が多く、それを踏まえながらも出来るだけ参加者同士を組ませる事にかなり頭を使いました。
 結局転送による分断という仕組みを組み込んだ事を皮切りに、一番当初の予定から展開が変わったルートと言えますね。その分面白くなっていれば幸いなのですが。
 
 ちなみに実際の分布は 心(34人)>体(30人)>技(22人)>妨害者(13人) でした。
 妨害者の大半が技行きだったので一応バランスが取れているといえば取れているのですが、それでも精神的な戦いになる分も含め、『心』の描写量がかなり増えてしまいましたね。
 

それでは今回はこの辺で。次回また、篁ファミリーの冒険にお付き合い下さい。