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コンビニライフ

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コンビニライフ

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 コンビニ店内へと戻ったセルシウスを、お手洗いを借りて出てきた明子が再び発見する。
「(……む。アレに見えるは先ほどの帝国人……っても龍騎士とかじゃないわね。技術者? 珍しいな)」
 だが、明子の見るセルシウスはカップ麺を一つ抱え、うろうろするのみである。
「(ひょっとして、コンビニに不慣れなのかしら? じゃあ、一般的地球人の伏見の明子さんがコンビニご飯というものを教えてしんぜやう……)」
 じっとペットボトルのお茶を取って見つめるセルシウスの傍で、明子がヒョイと自分の分のペットボトルを取る。
「はぁい! また会ったわね?」
「む……先ほどのペガサスの君か?」
「今度は何を悩んでいるの?」
「うむ……このお茶の容器、何故逆さまにしてもこぼれないのかと」
「……ああ」
と、明子は自分が先ほど買った飲みかけのペットボトルを出し、蓋を本体から外してセルシウスに見せる。
「ほら、蓋の中に実はネジ切ってあるの。こうすればねじるだけできっちりかたーくしめられるって寸法よ」
 明子はペットボトルの蓋を開けて態々締め直し、さかさにして振る。
「ほら、こぼれない」
「成程……ネジの構造を利用しているのか。道理で私が渾身の力で引っ張っても蓋が取れなかったわけだ」
 明子はチラリとセルシウスのカップ麺を見つめる。
「ところでお昼はカップ麺だけ? お腹すくわよ?」
「うむ……店の外で平たい顔の男にレクチャーされてな。だが、彼が買っていたチャーハンはもう売り切れてしまっていたのだ。今の私は温かい食事が取りたいのに、このままではパンを買うしかない……」
「おにぎりは?」
「ふ……食べた事がない物は信用せんタチでな」
「なら、カップ麺はどうなんだ?」というツッコミを我慢した明子は、セルシウスの手を取り、おにぎりコーナーへと向かう。
「おにぎりっていうのはね。お米を軽く握って、それだけだとちょっと手について食べにくいから海苔で巻いた物なのよ?」
「味が皆同じではないか?」
「む、まだパンの方がいいとか思ってるな? 甘い甘い。おにぎりはほれ、中身の具で色々なバリエーションが楽しめるのよ」
 明子は棚に並んだおにぎりが、梅、昆布、ネギトロ、ツナマヨ、と様々な種類がある事を示す。
 少し、というか随分『鮭』が多いなぁというのが気になったが、今はスルーした。
「ね? 総菜パンとか頑張って同じような事してるけど、これなら握り込むだけで色々出来るから楽しいわよー?」
「だが私は温かいものが……」
「なら、これとかどう?」
 棚を見ていた明子がセルシウスに一つのおにぎりを手渡す。
「チャーハンむすび……!! あの平たい顔の男が食べていたものを丸めたヤツか!?」
 今更であるが、平たい顔とは先ほど出会った久の事である。
「そうそう。それならレジで温めてくれるわよ?」
「うむ……! 買ってくる!!」
 カップ麺とチャーハンむすびおにぎり、そしてペットボトルのお茶を抱えたセルシウスがレジへと向かう。
「さて、あたしは何買おっかなー?」
 何か良い事したわ、と、明子は晴れやかな気持ちでコンビニをうろつくのであった。


 レジに向かったセルシウスは、円と対面していた。歩が別件でレジを離れていた事が、彼の不幸へと繋がる。
「いらっしゃーせ〜」
「うむ。これらを買いたい。そして、このおにぎりは……あ、温めてくれ」
「はーい。これを温めるーと」
 ピッピッピッ、と素早くレジを打った円が会計を提示し、セルシウスが金を払う。
「(む……一体、いつ温めるのだ?)」
 疑問に思うセルシウスの前で、袋詰めした商品をそのままレンジへ放り込む円。
「えっと……おにぎり、お弁当、パンのボタンしかないなー。ま、いっかお弁当で!」
 ピッとボタンを押し、セルシウスに向き直った円が、
「少々お待ち下さいー」と言い、無言になる。
 セルシウスはレジの傍でDSペンギン達が何やら円のエプロンを掴んで必死に抗議しているのをやや不安な気持ちで見ていた……と、その時。
ボンッ!!
 レンジの中から奇妙な音が聞こえる。
「今……何か音が……?」
「気のせいです」
「そうか……」
ボボボンッ!!
「……」
「……」
 バックヤードの扉を開けて歩とみすみが顔を出す。
バシュウウゥゥーーッ!!
 レンジの中に閃光が走る。
「あああああぁぁぁーーッ!!」
と、歩が声を上げてレジへと猛ダッシュしてくる。
「円ちゃん! レンジを止めてェェェェーーッ!!」
 悲愴な歩の声が店内に響く。
 これにより、店の二台あるうちの一台の電子レンジが封印される事となった。


「大変な目にあった……温めるとは恐ろしいものだな」
 セルシウスは結局、駄目になった代わりに再度食事を買う羽目になった。
 普通なら店長の弁償になるが、今は彼がその店長の代理だからである。
 店の外でそう呟いたセルシウスの前には、今度はちゃんと温められた弁当とカップ麺が置いてある。
 蓋を取ると、温められたシンプルな唐揚げ弁当の良い匂いが漂う。
「しかし、所詮は作りおきの食事だろう……」
と、セルシウスは大した期待をせずにコンビニ弁当を口に運び、硬直する。
「う、まっ……!!」
 何処かで聞いた『空腹は最高のスパイス』というフレーズが思い出される中、ガツガツガツと、一気に弁当を平らげ、ズズズズッとスープごとカップ麺を飲み干す。
 エリュシオン出身にしては実に野性味溢れる食べ方で一気に食べきったセルシウス。
 更にペットボトルのお茶をゴキュゴキュ飲んで、ようやく「ふぅ……」と溜息を漏らす。
「このような食事がここに来れば、いつでも食べられるのか……蛮族どもが栄えるわけだ。しかも……」