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リアクション
第11章 新たな魂と誕生 story2
アスカたちは魔女の追っ手から逃れられたが、唯斗たちの方はというと・・・。
「手傷を負わせても、すぐに慈悲のフラワシで回復されてしまうな」
「接近戦に持ち込むか?」
「いや、それでも隙をつかない限り難しい・・・」
「考えすぎても皆に追いつくのが遅くなるぜ。叩きのめして無理やり通るしかないって」
「主・・・いくら我が守っているからとはいえ、無策で突っ込むのは無謀だ」
魔鎧として紫音に装着しているアストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)が小さな声音で言う。
「正面突破なんてさせると思ってるの?」
ドゴォオッ。
「ぅおわぁあ!?」
頭部から突っ込む嵐のフラワシが腹に直撃し、紙切れのようにぶっ飛ぶ。
「主、怪我はないか?」
草むらに転ぶ彼をアルス・ノトリア(あるす・のとりあ)が助け起こす。
「これくらいは大丈夫だぜ。アストレイアのオートガードのおかげでな」
「外傷はなくとも、衝撃が蓄積すると倒されてしまうぞ」
「まぁー、あれだ。その時はアルスが治してくれるだろ?」
「それはそうだが・・・無理に突撃するのは危険じゃ!―・・・って、聞く間もなく行ってしまったか」
「紫音の言う通り、作戦を考えている暇があるなら、アルファたちと一刻も早く合流するべきだろう」
嘆息するアルスにそう言うと、唯斗もコンジューラを叩き伏せて通ろうとする。
「マスター、暴走もほどほどに・・・って聞いていませんね」
今に痛い目に遭っても知りませんよ、とプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が心の中でぼやく。
「動きは素早くないみたいだしさ。身体に直接ダメージをくらわして終いだぜ!」
「(私が相手を念力で転ばせるから、その隙に倒しなはってくださいな)」
綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)は屈んで背の高い草に隠れ、パートナーにテレパシーを送ると魔女の靴をサイコキネシスで引っ張り、相手はかっくんと足を滑らせ転びそうになる。
「ちょっ、何・・・!?」
「サンキュー、風花。いっきに決めてやるっ」
ライトニングランスの青い雷光を纏った二刀のブレード・オブ・リコで、紫音が両腕を叩き折ろうとする。
「何だこいつ・・・殺気が消えていないぞ・・・?」
「(油断しないで紫音、木の上からフラワシが・・・!)」
「(くそっ、勝ちを急ぎすぎちまったか)」
グァォオオッ。
焔のフラワシの紅の炎が紫音に迫る。
「やらせるものか!―・・・ぐぁああーーっ」
唯斗は彼の脇をガッと掴み、その身で炎を受けてしまう。
「つまらない友情ごっこで、自ら傷を負うなんて愚だわ!」
「そうでもないさ。こうしてお前に接近出来たんだからな」
ティアマトの鱗で疾風突きを繰り出し、フラワシを降霊しようとする相手の動きを封じる。
「フンッ、全然致命傷にならないわね」
カカカンッ。
得物のロッドで受け流し、小バカにしたようにクスッと黒笑みを浮かべる。
「ただの疾風突きだと思っているのか?なら、お前の負けだ」
「何を企んでいるのか知らないけど、当たらなきゃ無意味ね」
「おっと、俺の存在を忘れてねぇか?」
「―・・・わっ!?離しなさいよ、このアホーッ!!」
ゆらりと立ち上がった紫音に背後から、襟首を掴まれた魔女がじたばたと暴れる。
「やめないさいよ、あんた。こいつにも当たるわよっ」
「(やれ、唯斗。迷っている時間なんてないぜ)」
「(上手く避けろよ・・・)」
「(当てないんだから、その必要はないだろ?)」
「(まったく・・・ずるいやつだな)」
彼のテレパーシーに捨て身の策ではないと分かり、口元をニヤッと笑わせた。
「それも仕方ないことだ。何かを成すには、犠牲はつきものだからな」
「いやっ、やめて・・・。まだ死にたくないのに・・・、もっといろんな実験して遊びたいのにーっ」
冷酷に言い放つ唯斗に顔面を蒼白させ絶叫する。
ドシュッ。
赤々とした血がぽたぽたと零れ、緑色の草を濡らす。
「はぁ・・・よくもこの私に傷を負わせたわね。めちゃくちゃにしてやるんだから・・・っ」
斬り裂かれた腕の傷を憎々しげ見つめる。
「焔のフラワシをもう1匹、呼び出したらどうなるかしら?―・・・さぁ私の可愛いお人形さん、こいつらを焼却しちゃって!あれっ?何で出てこないの!?」
シーリングランスで技を封じられ慌てふためく。
「これでお前は何も呼び出せなくなった。これでもまた戦う気か?」
「当たり前じゃないの。私は殺されることのない、不老不死になりたいんだもの。そのためなら、何でも利用してやるわ」
「悪いが、欲望のためにアルファたちを犠牲にすることは、この俺たちが許さないぜ」
トスッ。
「はぐ・・・っ」
得物で彼に殴りかかろうとするものの、コンジューラは紫音に首筋を殴られ気絶してしまう。
「やっと片付いたな」
「さっきの攻撃に巻き込まれてはいないようだな」
「あぁ・・・、ギリギリな。まぁ、唯斗のこと信じてからさ」
「フッ、そうか・・・」
「アルス、唯斗の火傷を治してやってくれ」
「承知した。いくらわらわたちの主様を庇うためとはいえ、少々無謀すぎはしないか?」
叱るように言いながらも、命のうねりで唯斗の身体の火傷を癒す。
「迷っている時間なんてあったか?」
「いや・・・なかったが」
「次も同じように上手くいくなんて、思わないこと。って言いたいのよね」
ミニスが意地悪そうな口調で横から口を挟む。
「なんというか、大怪我しては捕らえられる危険もあったからのぅ・・・」
「2人の熱い友情が勝った、そう思っておきません?あまり作戦とか考えている時間もなかったと思いますぇ」
「そうね。どこでも無謀に渦中飛び込むアホコンビの結成って感じかしら」
のんびりとした口調でフォローする風花に毒づく。
「ははは。言われてしまいましたね、マスター」
プラチナムの言葉に唯斗は返すセリフが見つからず、黙り込んでしまう。
「我から主に何も言うことはない・・・」
「えぇ!?小言すらない方がなんかキツイ気がするんだけど・・・」
呆れて嘆息するアストレイアに、紫音はしょぼーんとした顔をする。
「ほら、無駄口を叩いている暇があったら進みましょう。マスターのことは、エクスさんに黙っておいてあげます」
「―・・・頼むから言わないでくれ」
プラチナムに急かされ、睡蓮が残した蛍光リボンをたどってアルファたちと合流しようと走る。
「さて・・・、魔女から逃げ切ったのはいいが。どうやって進めばいいのか・・・」
淵はきょろきょろと周囲を見回し、どっちの方向に進むべきか迷ってしまう。
「幻影を見せる香りがしなくなったわね?だいぶ研究所から離れたってことかしら」
「おそらくな、しかし気を抜くなルカ。いつまた襲撃されるかわからぬのだから」
「全て片付くまで・・・・・・ね」
「そういうことだ。また会いたくないヤツらが来たようだしな」
殺気に満ちた空気を警戒し声を潜める。
「この殺意の塊は、・・・ゴーストか」
「木の上に3匹、草むらの中に2匹いるぞ」
ノクトビジョンで暗がりに潜む、醜悪な容貌のキラーパペットをエースが睨む。
「了解した」
彼が視線を向ける方へ鬼払いの弓の弦をギリリ・・・と引く。
ヒュヒュヒュパッ。
襲撃させる間もなく真空波で頭部と四肢を千切り飛ばす。
「グリプスヒルフェ大聖堂で儀式をしたかったけど。ゴーストまで追ってくるなんて・・・。別の場所を探した方がよさそうね」
「町を巻き込んで戦場にするわけにはいかないからな」
残念そうに言うルカルカに別の隠れられそうなところを探そうと言う。
「そうだ。泡さんにテレパシーで、ここにいることを伝えてくれないか?」
「ふむ、了解したエース殿。あの場所を動くことを伝えていなかったからな」
研究所の傍から離れたことを急ぎ十六夜 泡(いざよい・うたかた)に伝える。
「(聞こえるか、泡殿)」
「(えぇ、聞こえるわ。今、急いでそっちに戻っている途中よ)」
「(いや・・・魔女の襲撃にあってしまって、他に儀式を行えそうな場所している)」
「(皆、無事なの!?)」
「(コンジュラーを引き離すために、唯斗殿たちとは少し離れてしまっているが。もうじき蛍光リボンをたどってこちらに合流するはずだ)」
「(じゃあ私もリボンを探してそっちに行けばいいのね)」
「(ゴーストもいるようだ、道中気をつけてくれ)」
「伝えてくれたか?」
「睡蓮殿が道につけてくれた目印をたどるように伝えておいた。あの場所を離れて2時間ほど経った頃か・・・」
泡にもリボンをたどってくるように伝え、あれからどれくらい時が経ったか、淵は携帯の時間を見る。
「これだけ広大な森の中だからな。狩人などが使っていた小屋の1つくらいあるかもしれない」
袖で額の汗を拭い、アルファのために隠れられそうなところを探し歩く。
「なぁ、そこに家みたいなのがないか?」
「ん〜・・・暗くてよく見えないわよ、エース」
「俺が行って様子を見てくるか」
「私も一緒に行くわエースくん。大丈夫そうなら携帯の明りで教えるわね、ルカルカちゃん」
「えぇ、お願いねアスカさん」
偵察に行く2人に片手をふりふりと振る。
「うわぁ〜なんかボロッちぃわねぇ〜・・・」
「でも使えそうなところって、こんな小屋しかないんじゃないかしら?辺に新しいと、十天君のトラップかもしれないじゃないの」
「えっ?ちょっとオルベール、どうして鴉のところにいないよのぉ〜」
「守られるだけってイヤって言ったわよ?それに、さっきのゴーストのこともあるし。中にいないか、殺気のチェックをしてあげようとね♪」
まるで自由人のように活動する彼女がニコッと微笑む。
「他のことを探そうにも、時間かかりそうよ」
「もっとキレイなところで儀式をしたかったけど。選り好みしている場合じゃないしな・・・」
「じゃあ決まりね、エースくん。アスカ、ルカルカちゃんたちを呼んで♪」
「うぅ・・・分かったよぉ〜。こんなボロじゃなくって、素敵なところがいいのに・・・」
しぶしぶ携帯をカバンから取り出し、小屋の中には何もいないと明りで教える。
「大丈夫そうね」
「行こう、アルファちゃん」
クマラが魔女の手をひき連れて行く。
小屋を見るなりあまりの古さに、皆が唖然としたのは言うまでもない・・・。
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