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リアクション
第8章 不幸になぁ〜れ?完全不死者との戦い
「右天様は不老不死には興味ないようですから・・・。いただいたデータは・・・、バックアップ用としてお考えください・・・・・・」
「必要な時に言いますね、アルカさん」
「―・・・お声をかけていただければ、・・・これをお渡しいたします」
「僕は壊れない玩具とかには、興味ないからさ」
本当にいらないのかという顔をする金光聖母に、横倉 右天(よこくら・うてん)が言う。
「考え方によるんだろうけど。僕は何年も永遠に生きるのって、ただの拷問だと思うんだよね。それなら、花火のように消えて・・・潔く壊れて死んだ方が・・・ね」
彼の言葉を2人は黙って聞き続ける。
「だからさ、アルカさん。僕が死んだらその魂は好きにしていいよ」
「―・・・右天様、その発言は私との契約の追記と言うことですか?」
「食べてしまうなり、何か実験に使ったりね。ただし、蘇らすなんて無粋な真似はしないでよ?」
「―・・・かしこまりました。何があろうとも・・・、その魂。私の手の下、好きにさせていただきます」
“未来永劫・・・私の手の下に”と、心の中で呟いた。
生きていればいつ死ぬか分からない。
寿命が尽きてか・・・あっけなく殺されることもあるし、何かに躓いて転んだ拍子にということもありえる。
右天にとって蘇りは屈辱を受けるのと同じようなことだからだ。
「おい、壁を破壊して裏から出ようぜ」
「そうですね、ゲドーさん。入り口は何やら暴れている者たちがいるみたいですから」
「誰か逃げて行くわ!」
「こらーっ、待ちなさいっ」
十天君たちを見つけたカティヤたちが、大声を上げながら追ってくる。
「来たようですね。ああゆう方たちは、少し痛い目に遭わないと分からないのでしょう・・・」
「この女には触れさせない!」
グレゴール・カフカ(ぐれごーる・かふか)は光学迷彩で姿を隠し、ナラカの蜘蛛糸で歌菜たちを阻む。
「通路に糸がっ」
「誰か姿を見えなくして潜んでいるみたいだわ」
「光の中で身を焦がし、消えてしまいなさい・・・」
駆けつけた刹那たちまで金光聖母は容赦なく術の円の中に囲む。
円環内に黒白の2線が現れ、ぐるぐると回転し、月明りのように眩い光が通路に溢れる。
「何やこの光は・・・・・・って歌菜ちゃん!?」
「陣さん!」
「あいつが金光聖母かっ、待っていろよ。―・・・・・・くそ、間に合わない!」
彼女の手を必死に掴もうとするが、彼女は金光陣の中へ取り込まれてしまう。
「ちくしょう、入れないっ。歌菜ちゃん・・・歌菜ちゃん!!」
「無駄だよ、陣くん・・・。きっともう、ボクたちの声はこの向こうには聞こえないよ。無事に出てくるのを待っていよう・・・」
悔しがる陣の背をぽんぽんとリーズが叩く。
「ミラーハウス・・・?キレイ・・・」
ぼーっとうっとりしたような顔で、歌菜はシルバーの床や天井を見回す。
大きな鏡がブロンドの枠にはまっている。
「だが、仕掛けてくることはエグイし残酷なんだろうな」
「床にもあるわね」
カティヤが足元を見ると術で作られた鏡がある。
「無闇に破壊したら仲間に破片が刺さる仕組みかしら?」
刹那は床の鏡を踏みつけてビキッとヒビが入った。
「好きに作り変えられる空間で、どこから狙ってくるか分からないなんて・・・」
アレットは怯えたように刹那の傍へ寄る。
「私から離れないでね。ユーリアはセファーの近くにいてちょうだい」
「ここから偽者が出てくるわけじゃないから、仲間同士で戦うことはなさそうだが」
「甘いわねユーリア、敵だと思って映ってしても。その先に仲間がいる可能性もあるのよ?」
「やたらと壁を破るほどの攻撃は、危険ということなのだな。何にしても、相手の数を分散させる必要があるぞ。どうする?」
「うーん・・・やたらと離れるのも危ないし・・・。皆、一緒に行動しましょう」
刹那たちは金光聖母たちを探し、ミラーハウスの中をゆっくりと進む。
「この中だと炎系の術よりも、雷などのほうがいいでしょうか?」
「そうだな、セファー。こっちも逃げ場を失っては本末転倒だ」
「自分たちが自爆するような心配がなければ、バーベキューにしたい感じですけどね」
こんがりと焼いてやりたいとセファーがクスッと黒いことを呟く。
「くっ、殺気がばらけていて、どれがあいつの気か分からないな」
襲撃をくらわないよう羽純は回りを警戒するものの、どこに十天君がいるか判断出来ない。
「光のレーザーだと・・・っ?」
とっさに飛び退き歌菜のオートバリアのおかげで、足に軽傷を負っただけですんだ。
誰もがそう思ったが・・・。
「鏡に屈折して刹那に!?」
ユーリアは彼女の身体を抱え飛びながら避ける。
「隠れてばかりで汚いわよっ」
姿を見せない相手に向かってカティヤが怒鳴る。
「汚い・・・ですか?私たちの仲間を散々殺しておいて、よくもそんな言葉を吐けますね」
「それは・・・あんたらの自分勝手な企みで、いろんな人たちを傷つけているからよ!」
「見せられないほど醜い姿なんでしょうかね?まぁ、心はどうしようもないブサイクだって分かりますが。ろくでもないことばかりしている方が、キレイなわけありませんからね。金光聖母・・・あなたを見た瞬間、こっちの目が腐ってしまいそうですし。どうぞ隠れたままでいてください♪」
セファーはこれでもかというほど毒づきクスクスと笑う。
「あなたのようなつまらない生き物に、美しいと言われたくありませんし・・・興味もございません。もとより精神年齢が低い男など、眼中にないですから・・・」
「なっ、何ですか。この毒舌対決は・・・」
2人の言い合いにアレットがガクガクと怯える。
「おそらくセファーは、相手に姿を現すようにわざと言っているのだろう」
刹那を床に降ろしたユーリアが小さな声音で彼女に言う。
「あまり時間もありませんから。そろそろ消えていただきましょう」
「いたぶり殺すというわけですか。醜いだけじゃなく悪趣味なんですね」
「私が手を下すまでもありませんし・・・。お相手してさしあげてください」
壁の鏡と真っ白な壁を消し、金光聖母たちが姿を現す。
「(姿を現しましたね!)」
バカな女と思いつつセファーはサンダーブラストを放つ。
「フフッ、ただ丸腰で突っ立っていると思ったのかな?」
右天はフォースフィールドで十天君を守り、ミラージュで自分の幻影を作り出す。
「戦いたければ、まずは僕たちを倒してごらんよ?」
「壁もないことですし、炎の嵐で焦げてしまいなさいっ」
ファイアストームの炎で右天を囲み、バーベキューにしようとする。
「少し熱かったね・・・。でも、ここまでかな?」
少年は僥倖のフラワシを降霊し、回復しながら炎を突破する。
「伏せるのだ、セファー!」
ヒュッヒュパッ。
セファーを守ろうとユーリアは右天に、ツインスラッシュの剣圧を飛ばす。
「―・・・右天様!」
アルカはファイアストームをユーリアに向かって放ち、右天を守ろうとするものの、僅かに少年の脇腹を刃が掠めてしまう。
「守りが手薄になったわね」
クレイモアの得を両手で握り、パートナーに注意が向いている隙に刹那がソニックブレードで、金光聖母を真っ二つにしようとする。
「それだけですか?」
地獄の天使の翼で舞い軽々と避けてしまう。
「フッ、安心したわけ?」
「何ですって・・・」
「飛べるのはあなただけじゃないのよ」
絶望の剣を手にカティアが宙を舞い、ツインスラッシュの剣圧の餌食にしようとする。
「殺した気でいたのか?気が早いやつらだな!」
バーストダッシュで飛んだゲドーが盾てとなりにやつく。
「そんな・・・あなた血が!」
「俺様は今、完全不死なんだぜ?それにぜーんぜん、痛くねぇし」
痛みを知らぬ我が躯で痛みもなくケタケタと笑い、ちくわチョコをがつがつと食べる。
「パラミタが十天君たちに支配されようとも。俺様たちは優遇されるしなぁ?だ〜ひゃっひゃっひゃ〜!カティヤちゃんたちは不幸になりやがれーっ」
身体を蝕まれる感覚もなく、紅の魔眼と紅の魔眼で魔力を上げる。
一欠けらも慈悲を与えず、ファイアストームでカティヤを包み込み床へ叩き落す。
「きゃあぁあああ!!―・・・がはぁっ」
全身を焼かれたカティヤは地面に叩きつけられ衝撃で吐血する。
「次は刹那ちゃん、丸こげいってみよー♪」
ゴォオオオゥウッ。
「あんなのが敵の味方についているとは!」
ユーリアは残る力を使い、刹那の腕を引っ張り丸焼けだけは逃れた。
「アレット、手伝ってください」
「はいっ」
リカバリーで2人火傷を癒すセファーを手伝い、アレットもヒールで治そうとする。
「ちっ、避けたか。―・・・おっと、背後を狙っても無駄だぜ?」
ディテクトエビルで隙を狙う者の気配を察知したゲドーが、ゆっくりと振り返る。
「焼かれるか、石か・・・どっちが好みだ?」
「―・・・なっ!?」
則天去私の光を纏った拳で殴るものの、まったく効いていない様子のゲドーに、羽純は不気味さを覚え離れようとする。
「決めた、石にしてやるぜっ」
無力な男を嘲笑い彼の身体をペトリファイで石化させた。
「羽純くんっ!―・・・ごめんね」
全身石化してしまった彼の元に駆け寄りたいが・・・。
「皆の仇・・・取らせてもらいますっ」
今は金光聖母を倒そうとバーストダッシュの加速を利用して飛び上がり、飛竜の槍とヴァーチャースピアで突き仕留めようと狙う。
「自らくるとは愚かですね」
「うくっ、あぁあああっ!!」
エンドレス・ナイトメアの闇に覆われてしまい、頭をトンカチで割られてしまいそうなほど、激しい頭痛に襲われてしまう。
「石になってしまいなさい」
「私の体が・・・。羽純くん・・・・・・っ」
ゴトンッと彼の傍へ転がり落ちる。
「たいしたことねぇな」
ガンッと歌菜と羽純をゲドーが蹴る。
「(私のいいところ見せらなかったな・・・)」
カフカは不満げに心の中で呟き、術を解く金光聖母を見る。
「歌菜ちゃん、皆っ!!」
石化された2人と炎で重傷になっているカティヤの傍に陣が駆け寄る。
「よくも何度も私たちの邪魔しましたね?罰として封神台にいる妖精を始末してさしあげます」
「待てこのぉおおっ」
「陣くん、今は3人の手当が先だよ!」
「わかってるっつーの。くそっ」
「私たちはまだ動けるから、あいつらの後を追っていくわ」
「うん、お願い」
リーズも一緒に追って行きたいが刹那たちに任せて、歌菜たちの治療が完了するまでいようと陣の傍にいる。
「こんな火傷を平気で負わせるなんて、ぶっとばしてやるっ」
逃げていく金光聖母を目の前にしながらも、陣は堪えて大火傷して瀕死のカティヤを復活の術で蘇らせる。
「なぁ、どうせ捨てるなら、ここをぶっ壊していかないか?」
「その方がいいですね」
「他の侵入者が丸焼けになっちまうかもしれないけどな!」
ゲドーは研究所をファイアストームで爆破し、建物の裏にあたる壁も破壊する。
「後1つだけ・・・完全不死のサンプルがあります。それを飲めば、もう少しもつでしょう」
「相変わらずすげー色だな。まぁ、わがまま言っている場合でもないからな」
金光聖母からもらったサンプルをぐっと飲み干す。
「ゲドーさんの研究は、今から行く封神台の上層部に行き、隠れて行えば問題ないでしょう。必要なものは持ってきたようですし」
「お、そうなのか!」
「ただし・・・そこへ行く目的は、ある者を殺すためです。その後で私たちは別の場所で、不老不死になれればいいですから」
「はぁ。まだ付き合うのか」
自分の欲のためとはいえ、不幸すぎる自分を呪いたくなってきてしまった。
「ここのゴーストは全て解き放っておきました。裏切り者と館にいる者たち、そしてそれに関わる者全てを標的に・・・」
排除してやろうと金光聖母が冷笑する。
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