シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

【ぷりかる】みんなの力で祖国を救え!

リアクション公開中!

【ぷりかる】みんなの力で祖国を救え!

リアクション

 吹雪たちが足止めをしたおかげで他のコントラクターたちは前に進むことが出来た。
 光りの届かない地下の城、松明の明かりさえ消えている中を桜月 綾乃(さくらづき・あやの)は光術で周囲を照らしながら皆を先導していた。
「ま、まいちゃん! ほんとうにこの道で会ってるの?」
 綾乃は隣で同じように走っている桜月 舞香(さくらづき・まいか)に声をかける。
「大丈夫、さっきの人の話だとこっちにモルゴースがいるのは間違いないし殺気が強くなってるしね!」
 そう言って、枝分かれする道を殺気を頼りに進んでいくと舞香たちの前に火の光が伸びてくるのがわかった。
 舞香が皆の足を止めると、自身は隠形の術で身を隠しながらそっと中の様子を覗きこんだ。
 中はハデスたちがいた場所より広く天井も高くなっていた。周囲には松明が焚かれ、地面ではほのかに光る魔方陣からこの世のものとは思えないようなうめき声が漏れ、その上で何人かのコントラクターとフードを被った女性が一人で立っていた。
「あれが……モルゴース」
 舞香は注意深くモルゴースの横顔を見つめる。
 年の頃は二十代の後半といったところだろうか、顔つき体つきともに妖艶な色香が滲み出ておりどこか異質な雰囲気を舞香は嗅ぎ取った。
「私が奇襲をかけるから、それを合図に突入してきて」
 舞香が言うとコントラクターたちは頷き、舞香は隠形の術で姿を隠しながらモルゴースに近づいていく。魔方陣の上を歩くと、生き物の腹の上でも歩いているような不安定さを感じて、舞香が身を引き締めていると、
「あら……お客さんかしら?」
「っ!」
 ハッキリと自分と目が合うのを感じとり、舞香は後ろに飛び退り、ほかのコントラクターたちも広間に一気に押し寄せた。
「あらあら、こんなに大勢で……何か御用かしら?」
「お、オリカさんにかけた呪いを解いてください!」
 綾乃はモルゴースの雰囲気に気圧されながら、それだけ言うと舞香の後ろに隠れた。
「ああ、あの人を助けに来たのね? でも……それをしたら楽しくないから要求には応えられないわね……ほら、見て? もうすぐここに封印されたモンスターたちが顔を出すわ。……そうなれば、あたしも研究が捗るわ」
「たったそれだけのことでテミストクレスに協力したというんですか!?」
「そうよ? だから、あたしの邪魔をするなら……死んでくれないかしら」
「どうやら、話し合いの余地はなさそうね。綾乃、あいつの弱点を探って! それまでの時間は稼ぐわ!」
「は、はい!」
 舞香に言われて綾乃は御託宣でモルゴースの弱点を探り始めた。
「そんな時間をあたしが与えるとは思ってないでしょ?」
 そう言ってモルゴースが地面に手をかざすと、地面からウェンディゴが現れた。
「さあ、皆殺しになさい、ウェンディゴ」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 部屋中に広がる獣の咆吼にコントラクターたちは思わず身構える。
 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)はウェンディゴの前に立った。
「この部屋の中じゃ、召喚にも限界があるかな」
 呟きながら凉介はバハムートと不滅兵団を召喚した。
「さあ来い化け物! 他の奴らの邪魔にならないように相手してやる!」
 叫ぶなり、バハムートはウェンディゴの首に噛みつき、兵団は一斉に刀を抜くとそのままウェンディゴに突き刺した。
「ガアアアアア!」
 ウェンディゴは痛みで叫ぶと拳を握り締めバハムートを殴り飛ばすと、兵団を薙ぎ払った。それでもバハムートの闘志は消えず、再びウェンディゴに突っ込んでいく。
「ほら、頑張れよお前ら!」
 そう言って凉介はバハムートの背中を踏み台にしてウェンディゴの目の飛ぶと、ホワイトアウトを見舞った。
「ガッ……!」
 眼球が吹雪で凍りつき、目元を押さえるとバハムートが火球を吐き出した!
「グアアァッ!」
 腹に火球を直撃させたウェンディゴは背後の壁を破壊するほどの勢いで叩きつけられ、
「ガアアアアッ……」
 力なく倒れてしまう。
「あら、以外とだらしなかったわね」
「ふむ……このままではこちらが不利になりますね。……致し方ありません」
 モルゴースから護衛依頼を受けていた天神山 葛葉(てんじんやま・くずは)はフールパペットでウェンディゴを操りだした。
「さあ、今度はさっきより手強いですよ?」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべると、ウェンディゴは再び咆吼を上げてバハムートに殴り掛かる。
「さすが葛葉なの、その調子で頑張るの」
 葛葉の背後から声をかけた斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)はモルゴースの横で楽しそうに拍手を送っていた。
「人を褒める暇があるなら敵を一人でも殺そうと思わないんですか?」
「ハツネは猪突猛進のお馬鹿さんじゃないの。守りは利秋がしてくれるから、ハツネは最後の要なの。ね、利秋?」
 ハツネは河上 利秋(かわかみ・としあき)の背中に声をかける。
「当然だ、これでようやくハツネ達への恩返しが出来る……ま、精々依頼人を守るさ」
「残念だが、その依頼は失敗に終わらせてもらうぞ!」
 叫ぶなり広間にやってきたのは鎧を身に纏った龍騎士たちだった。
「モルゴース! オリカ様は解放された。貴様も観念するんだな!」
「あら、なんであの子が解放されてあなた達がやってきたら観念しないといけないの? あなた達が死ねば、事態は対して変わってないんじゃないかしら? ねえ、利秋さん?」
「その通りだ。この先は通すわけにはいかない……死にたい奴だけ前に出な」
 利秋はスッと目を据わらせると、刀の柄を両手で握り龍騎士たちと相対した。
「怯むな! なんとしてもモルゴースを捕縛し、オリカ様をお救いするぞ!」
「「おおおおおお!」」
 隊長の激励に騎士達は声を張り上げて、抜刀すると利秋に斬りかかった!
 利秋は女王の加護で剣筋を見切り、ギリギリでそれを避けると歴戦の必殺術で騎士の胴を薙ぎ払った。
「ぐおっ!?」
 見事にカウンターをもらった騎士は鎧ごと切り裂かれ苦悶の表情を浮かべる。
「だ、大丈夫!? しっかりして!」
 隠れ身で姿を消していた桜月 ミィナ(さくらづき・みぃな)が怪我を負った騎士に走り寄った。
「今治療するから、動かないでね?」
 そう言ってミィナはヒールで騎士の治療を行い、騎士から苦悶の表情が消えていく。
「すごい……これならまた戦える! 助太刀感謝致します!」
「うん! 騎士のみんな、怪我はミィナが治してあげるから頑張ってね?」
「しかし、それでは君が狙われてしまうのでは……」
「それなら大丈夫だよ!」
 ミィナはそう言うと隠れ身を使って姿を消してしまう。
「ね? これなら大丈夫でしょ?」
「なるほど、では心置きなく戦わせてもらおう!」
 そう言って騎士は再び利秋に向かって行った。
 利秋が騎士達の相手で手一杯になっている間に御託宣を使ってモルゴースの弱点を探っていた綾乃が奏 美凜(そう・めいりん)に声を掛ける。
「美凜ちゃん! モルゴースの弱点が分かったよ! モルゴースには魔法がほとんど効かないけど、身体は普通の女の人だから……」
「殴ればいいアルね? それなら任せるアル!」
 美凜はそう言ってモルゴースに接近するが、
「おおっと、残念だがここからは通行止めだ。命が惜しいなら引っ込んでな」
 大石 鍬次郎(おおいし・くわじろう)が鞘に収めてある刀の柄に手をやりながら美凜の進路を阻んだ。
「なら、通行料はワタシの拳で沢山払ってあげるアル!」
「いいねぇ、そういう分かりやすいのは好きだぜ?」
 鍬次郎はニヤリと口角を上げると、たたらを踏んで抜刀術を美凜に見舞う。
「おっと! そんな攻撃喰らうわけ無いアル!」
 美凜は咄嗟に軽身功で剣閃をかわすと、神速を使って鍬次郎に跳び蹴りを仕掛ける。
「ちっ!」
 鍬次郎は咄嗟に避けるが、懐に飛び込まれたせいで刀の死角に入られてしまう。
「隙有りアル!」
 そのままの位置で美凜は鳳凰の拳を喰らわせる。
「ぐぅ……!」
 こちらも近すぎたため全力の拳では無かったが、鍬次郎は胸と腹にダメージをもらいながら後ろに飛び退る。
「やるじゃねえか、それなら……こんなのはどうだ!」
 鍬次郎が叫んで美凜に飛び込もうとした刹那、
「ぐああ!?」
「きゃっ!?」
 二人は揃って死角からの炎に飲み込まれてしまう。
「っだらあっ!」
 鍬次郎は居合いの刀から無限刃安定・真打を抜き放つと迦楼羅焔の生み出す炎で自分と美凜を飲み込む炎を押し返した。
「てめえ……! どういうつもりだ! ああ!? モルゴース!」
 楽しみを邪魔された鍬次郎は額に青筋を浮かべながら、炎の不意打ちをしてきたモルゴースを睨みつける。
 だがモルゴースは一つも悪びれる様子も無く涼しい顔をして微笑んでいる。
「あら、ごめんなさい? あのまま戦っていてもいずれ押しつぶされそうだったから、なら引きつけている間にあなたごと殺せば済むと思ったのよ。だって……人を殺せない人斬りなんてゴミ以下だものね?」
「あんたたちは……契約して守る役目があるかも知れないアルが……向こうはそこまであんたたちの事を思ってなかったみたいアルね。このままそっち側にいたらきっと殺されるアルよ?」
「……」
 美凜が声は声を掛けるが、鍬次郎は何も答えない。
「モルゴース……今のが事故でもわざとでもハツネは許せないの……」
 ハツネがジッとモルゴースを見つめていると、
「大丈夫か! 加勢に来たぞ!」
 再び龍騎士が広間に入ってきた。
 この状況に鍬次郎は舌打ちをする。
「くそ……ここらが限界だな、利秋。煙幕だ、ここから逃げるぞ! 契約は終いだ!」
「了解だ!」
 利秋は煙幕ファンデーションを使用すると瞬く間に周囲が白煙でいっぱいになる。
「ふむ……召喚術にまだ興味はあったが、ハツネがお怒りでは仕方ないですね」
「それじゃあねモルゴース、また遊ぼうね」
 そう言ってハツネたちは、まさに煙のように姿を消してしまった。
「これで残すはモルゴースだけだ! 全隊続けええええ!」
 隊長が先頭にたち、騎士達は一斉にモルゴースに向けて突っ込んでいく。
「ふう……無駄なことを」
 モルゴースはため息をつきながら、手を前に出すとサンダーブラストを放った!
「ぐあああああ!?」
 騎士達の身体を電流が駆け巡り、騎士達は鎧の隙間から煙を吐き出しながら地面に倒れた。
「ふん、あの子たちがいなくてもあんた達の相手をするくらいなら造作も無いの。お分かりかしら?」
 小馬鹿にするように笑みを浮かべると、シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は身構えながら隣にいたシェヘラザードに声をかける。
「シェヘラ、おまえはあいつの呪いを解く方法は見つかりそうにないか?」
「無理ね。結果が同じ呪文でも、算数の式みたいに過程が違うほど他人には解けなくなるものなの」
「なるほど……なら、やっぱりあいつを捕まえるしかないな。リーブラ、サビク、手を貸してくれ」
 シリウスはリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)に声をかける。
「なら、わたくしは囮になりましょう」
「じゃあボクは彼女を捕まえてみるよ」
 リーブラにに続いてサビクも自分の役割を口にする。
「オレもリーブラに協力するぜ。シェヘラも来てくれるか?」
「当然じゃない、親友なんだから」
 その答えを聞いてシリウスは笑みを浮かべると、モルゴースを見据えた。
「お話は終わったかしら? なら……殺してあげるわ!」
 叫ぶなりモルゴースはブリザードを放ち、凍てつく風がシリウス達を襲い、シリウス達は散開してモルゴースを襲撃する。
 モルゴースは目を瞑り、ニヤリと三日月のような薄い笑みを浮かべる。
「無駄よ無駄無駄ァ! あたしがそう簡単に苦手な土俵にいくわけないじゃない」
 そう言うなりモルゴースの背後から炎の精霊が現れて、シリウスに殴り掛かる!
「シリウス!」
 シェヘラザードは咄嗟にシリウスの前に立つが、防御が間に合わず炎の精霊の拳を腹部に思いっきり喰らってしまう。
「きゃっ!?」
 悲鳴を上げてシェヘラザードは地面を転がった。
 その姿を見て、シリウスはキッとモルゴースを睨みつけた。
「モルゴース! てめえっ!」
 シリウスは烈火の如き剣さばきで斬りかかり、炎の魔人は防御の構えを取り防戦状態に陥る。
「くぅ……! 調子に乗るのもいいかげんにしなさい小娘!」
 炎の魔人が引っ込むと、モルゴースはファイアストームをシリウスに仕掛ける。
「シリウスには指一本触れさせません!」
 リーブラは持っていた大剣を盾にして、心頭滅却でファイアストームの炎を妨げる。
「シリウス、今です!」
「悪いリーブラ! 助かったぜ!」
 シリウスはリーブラの横を通ると、モルゴースの懐に踏みこんだ。
「喰らいやがれ!」
 シリウスはそのままモルゴースの顔にホワイトアウトを喰らわせた。
「ぎっ……!? あああああああ!」
 眼球が凍るような痛みを覚えて、モルゴースは顔を押さえてうめき声を上げる。
「サビク今だ!」
「言われなくても分かっている!」
 シリウスの呼び声に応じて、後方で様子を覗っていたサビクはモルゴースの背後に回りこむと逮捕術と抑え込みを使い、モルゴースの腕を背中に付けるとそのまま関節を極めた。
「ぐっ……この……! 離しなさい!」
「無駄よ、モルゴース。もう、あんたの負けよ」
 殴られた部分を押さえながらシェヘラはモルゴースに歩み寄る。
「シェヘラ! 大丈夫か!?」
「大丈夫よシリウス。この程度なら何とでもなるわ」
「そうか……」
 シリウスはホッとした顔を見せると再び表情を引き締めて、モルゴースを見つめる。
「……まあ、この状態じゃ詰んじゃってるわね。どうせ、封印も解かせてくれないなら……負けを認めるわ。なにかあたしに命令することがあるんじゃないかしら? 一つだけならなんでも聞いてあげる」
「ティル・ナ・ノーグにいた老人の魔女がいたけど、おまえの知り合いか?」
「……あの壊れたお婆さんと会ったのね。ああ、別に詳しいことをは言わなくていいわ。興味が無いから。まあ、知り合いではあるけど……今は関係ないでしょ? それともお願いはその質問に使う?」
「くだらねえこと言ってないで、とっととオリカさんの呪いを解け」
「分かってるわ……もう少しでもっと楽しいことが起きたのに……まあ、あたしもテミストクレスにも大事を為すだけの器量が無かったっていうだけの話だものね……」
 つまらないなぁ、と言いながらモルゴースはそっと目を閉じる。すると、モルゴースが指に嵌めていた指輪が突如、音も無く砂と化してしまった。
「他人に呪いが解けないように道具を媒介に遠隔で呪いを送り続けたけど、その元凶も今壊したから、もう解呪されてるはずよ」
「そう……なら、確認するためにも一度この城を出ましょう? 楊霞たちと合流して確認しないと」
 そう言って、シェヘラザードは先頭を歩き始めコントラクターたちもモルゴースを連れて大広間を後にする。
 封印を解く人間がいなくなると、地面の魔方陣は徐々に消えていきやがて幽霊城には不気味な静けさが戻っていった。