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リアクション
第1章 〜巨大な力〜
空高く、一筋の雷が光った。
それが、エリス達からの陽動成功の合図だった。
「行きます!」
マリアは合図を見るなり、素早く前へと進もうとする。
しかし、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は「待つんだ」と制止させた。
「このまま兵士と出会ってみなよ、そうなれば周りの建物、町の人達まで巻き込むことになるよ」
「あ……そ、それはわ、分かってます」
マリアは顔を少し赤くして慌てて答える。
きっと戦闘になっても、町の人を巻き込むような自体には鳴らないだろうとマリアは鷹をくくっていたのだった。
そして、このマリアの考えは後に、裏切られることにもなることはまだ知る由も無かった。
「でも、無駄な戦闘は避けた方が良いことには間違いはないよね」
清泉 北都(いずみ・ほくと)は超感覚でクナイ・アヤシ(くない・あやし)は禁猟区でと周りを警戒しながら言った。
幸い周辺の敵は全て、ローズフラン達の方へと引きつけられているようだった。
「とにかくこのままこの場所にとどまっては敵に見つかってしまう。先に進んだ方がよいのではどうかね?」
メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)はマリア達に向けて急かすように言った。
エースは「ああ」と少し複雑そうな表情で答えるが、そんなエースをみながらメシエほほえみを浮かべた
(ランツ教への嫌悪が先か、それともマリアへの期待が先になってるのかね)
「……ふむ、このあたりの敵はみんな陽動作戦の方へと向かったみたいだね」
メシエは残されたゴミなどから行動予測で、その場に居た兵士達がどこへ行ったのか予測する。
その予測を裏付けるためにもメシエは北都達の方へ振り返りながら「そちらはどうだい?」と確認した。
「この先、10メートルは敵の影はなしだよ」
「周辺も大丈夫です」
同じようにして北都が超感覚で耳を凝らし、クナイは半径数メートル周辺に敵が近づいてこないか禁猟区で警戒する。
3人はさらに前へと進む。
その後ろでエースとマリアは話がいまだに繰り広げられていた。
「グロッグ司祭がこんな強硬策をとっていると言うことは、この一連の件はグロッグ司祭の独断かもしれない」
「しかし……まだ、そう決めつけるのは早すぎる気がします」
エースの言葉にマリアは大体はその通りだと考えていた。
しかし、全てが独断だとはどうしても考えられなかったのだ。
グロッグ司祭はああ見えて、頭は切れる人物であったはずだった。しかし、どうしてか今は何かを焦っているようなそんな気がするのだった。
「まあ何はともあれローズフランみたいに、マリアもよく考えて調査や行動を考えたらどう?」
「うっ……それは……そうですね」
少しうつむき加減にマリアは頷いた。
マリアは確かに、少し気分が抜けていた所はあった。それを少々反省するのだった。
それから、暫く歩いていると一行は、買い物客で賑わう大きな商店街へと出た。
ここなら、襲ってくることもないだろうとマリア達は思っていたのだが、裏目に出る。
「げっ……」
北都は口を開けて嫌そうな顔をした。
他にクナイもはっとした表情を浮かべる。
「敵が左と右からやってきます!」
「……前からもくるよ!」
クナイと北都が口々に言う。それはつまり、後ろ意外に逃げ道が無くなっていると言うことだった。
「なら、後ろだ」
エースが振り返り先に後ろへと下がろうとしたときだった。
「待った! こっちからも敵が迫ってきてるわ!」
「なっ」
コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が危険を知らせるために、マリア達の来た方向から走ってくる。
「もしかして……全方向、敵に囲まれてるの……?」
マリアはこの状況に驚き、背中を冷や汗が伝わるのを感じる。
せっかくの陽動作戦もこのままでは、マリア達が囲まれては意味が無くなる。
「おかしいな……」
あごに手を当てながら、メシエはつぶやいた。
「私の行動予測によれば、一斉に囲むなんてあり得ないんだが……」
「そりゃあそうだ、俺がお前達を加工用に命令したんだからなぁっ!」
「誰!?」
突然、静かな町の中に男の声が響いた。
路地の片隅から数十人もの兵士を連れて姿を現したのは、40歳くらいのボロボロになった軍服に身を包んだ男だった。
その男にマリアは見覚えがあった。
「やっぱり貴方でしたか」
「おお、数ヶ月ぶりだなあ、たしかマリアって言ったか……なんだあ? その反抗的な目はどうも気に入らねえっ!!」
男はすっと、ぶら下げていたダガーを構え、睨み付けてくるマリアへと突然斬りかかる。
マリアは素早く拳銃を構え、受け身の体勢をとる。
それと同時に迫ってくる男のダガーは、大きく弾かれた。
それを弾いたのはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だった。
「こんな一般人の居る町中で、武器を振るうとはとことん落ちぶれているな」
あたりの買い物客達は、ようやく現状を理解したのか悲鳴を上げながら、ばらばらに去って行く。
マリアの前にルカルカ・ルー(るかるか・るー)がすっと割り込んだ。
「一応聞くけど、そこをどく気は無い?」
「ふっ、答えはノーだ。悪いがお前達はここで死んで貰うぜ!! はっはー!!」
ルカルカの質問に、男は笑いながら再びダガーを構える。
「ダリル、なんとしてもマリアさんを怪我させないように先にいかせるわよ」
「……マリアはともかく、これ以上、反国家的思想を掲げる宗教団体を野放しにはできない。そのためなら、奴らをやるまでだ」
ルカルカはダリルと確認すると、「まっ、いいわ」とつぶやきながら頷いた。
そしてすぐにルカルカは背後のマリアに声を掛ける。
「私達が食い止めるから今のうちに町の人達を!」
「で、ですがっ!」
「一般人にこれ以上危害を出さないためにも私達も助力するわよ」
マリアが2人の安否を心配したときだった、同時にリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)やコルセアが前に出た。
「ふーん、やる気か。けどな……俺様と戦って帰れるとでもおもってんのかあ」
高く、うるさく、男は再び笑い始める。
しかししばらくすると、男は手に持っているダガーを空に投げ、受け止め構えた。
「お前達全員ここでおねんねだぁああっ!!」
男の声と共に60近くの兵士達が一斉にマリア達へと襲いかかる。
「させないよ!!」
リカインのかけ声と共に、光(トリップ・ザ・ワールド)があたりを包み込む。
男達はそのまま光に弾かれる。
「ちっ、お前達、気合いが足りねえっ!! もっと強気でかかれっ!!」
「……!」
男達の一斉の攻撃に耐えきれなくなったトリップ・ザ・ワールドはあっという間に解かれてしまう。
「みなさん、こちらへ!!」
しかし、時間を稼ぐには十分だった。逃げ遅れた町の人々を北都とマリアは物陰へと避難させる。
大人達は逃げ切ったのか、逃げ遅れたのはほとんど10歳くらいの子供達だった。
「ちょっと騒がしいけど、もう少ししたら収まると思うから、ここで待ちましょう?」
北都とクナイはそれぞれ、怪我人達の治療に当たる。
迅速に行動したため、幸い町の人々に大きな怪我人は出なかった。
しかし、戦いはより激しさを増しているようだった。
子供達を守るようにしながら、エースは野生の勘を研ぎ澄ませながら、グラウンドストライクを兵士達めがけて放つ。
兵士達は、突然地上から飛び出てくるトゲに襲われ、その場に倒れていく。
それでも、マリアを狙おうと兵士達は次々と狙っていく。
(このまま、マリアをやられてしまえばローズに怒られてしまうね)
エースはなんとか、力を使い切るまで襲ってくる兵士達からマリアを守る。
「こちらですよ?」
「りゃああっ!!」
「っと、おやおや外れですね。ほら、今度はこちらですよ」
「くっ、愚弄しやがって」
兵士達は、シーサイド ムーン(しーさいど・むーん)を追いかけ、左へ右へと銃弾を放っていた。
終いにはしびれを切らした兵士達は剣をとりだす、シーサイドを追いかけ始める。
だが、超人的精神でふわふわと避けるシーサイドになかなか当たらなかった。
「惜しいですね。あと少し」
あと少し。シーサイドは目的の場所まで兵士達をついに引き入れた。
「とらえたわ!!
突然、リカインの声が前方から聞こえてくると、シーサイドは素早く横へとはけた。
次の瞬間、兵士達にリカインによる大きな光の弾(滅技・龍気砲)が襲いかかった。
「ぐあああああああああああああああああああああああああっ!」
悲鳴と共に、ボロボロになった兵士達が地面に倒れていく。
が、40居るうちの10名の兵士達はボロボロになりながらも耐え、そのままリカインへと襲いかかろうとする。
「させませんよ!」
リカインと交代するように、コルセアは前にでてホエールアヴァターラ・バズーカを放つ。
町を破壊しないように力を押さえながらではあったが、ボロボロになった兵士を行動不能にさせるには十分だった。
「はっ、お嬢さん、懐が空いてるぜ?」
「しまっ――」
不意打ちだった。コルセアの背後にはダガーを構えた男が立っていた。
まさにやれると思ったときだった、そこへルカルカが入り込み、【常闇の帳】地球人用が男の攻撃を防いだ。
「大丈夫!?」
「どうにか……ありがとう」
「はっはー、常闇の帳かやっかいなもんもってんな」
男は至って平然と笑い続けた。
その笑いがあまりにも頭にきたのか、ルカルカは苛立ってきていた。
「その笑いどうにかならないの!」
「わるいねぇー、癖でねぇー。おやおやどうちたのーもしかして……怒ったぁ? はーっはっはっはー」
ぷつり。
何かがルカルカの中で切れた。
「ダリル! あの男にしびれ粉を!」
「え、もう使……わかった」
ダリルは予想外のタイミングに慌てるが、ルカルカの真剣な表情に頷くことしか出来なかった。
兵士達を黙らせるために使おうとしていたものだったが、まだ敵はまばらに居るため、使うタイミングを渋っていたのだった。
ダリルはあらかじめ準備しておいたしびれ粉を取り出すと思いっきり男達へと投げつける。
「ぐっ、げほっげほっ、き、汚ぇぞ!!」
「ね……眠くなってきたぞ……・」
煙が薄くなると、そこには地面へと倒れ込んだ男と兵士達が倒れていく。
残るは10人くらいの兵士だった。
「まだやるつもりかな?」
リカインはトリップ・ザ・ワールドで飛んでいった、シーサイドを再び頭にかぶり直しながら聞く。
兵士達は一言も喋らず、敵が一斉に倒れたことに驚き、棒立ちしていた。
「さあ、もう後は無いわよ。降参しなさい?」
ルカルカは兵士達を教導団として捕縛するべくゆっくりと兵士達へと近づいていく。
「く……ふっはっはっはっは!!!!!!」
「なっ、しびれ薬を受けながらまだ喋るだと?」
ダリルは地面にひれ伏しながらも笑い始めた男を、驚きながら見下ろした。
男の目に赤い光が宿ったのをダリルは見逃さなかった。その次にダリルが見たのは空だった。
「ぐっ……」
ダリルは気がつけば腹部に衝撃を受け、地面に倒れていたのだ。
「フハハハハハハ、いいねぇ。久々だよこのバカにされる感覚。捕縛? おいおい、甘いよ……砂糖より甘ぇ」
「どういうこと……あなたは確かにしびれ薬を受けていたはずよ? それに――」
「ああ、目のことかぁ? まあ気にするなや。力がわき出るとこうなるんだよ」
男は薄気味悪い笑みを浮かべながら説明する。その目には紛れもなく強く赤い光をともしていた。
気味の悪さに思わずリカイン達は後ずさりし始める。
「さあ……第2回戦と以降じゃないか!」
男は再び笑みを浮かべると、目に灯った光はさらに強くなった。
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