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学生たちの休日16+

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    ★    ★    ★

「もふもふ、もふもふ♪」
 ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が、いつも通り、わたげうさぎたちのブラッシングをしています。
「あー、いいなー、ブラッシング、私も手伝う!」
 それを見たサリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)も、スーパーペット用ブラシを取り出して、もふもふブラッシングに参戦してきました。
 もうブラッシング慣れしていて、二人に大人しく毛繕いをさせているわたげうさぎたちを、次々に綺麗なふわふわもこもこにしていきます。
「次は、苺ちゃんの番だよ」
 魔導わたげうさぎのブラッシングを終えたミリア・アンドレッティが、今度は巨大わたげうさぎ「苺」を手招きして言いました。隣では、サリア・アンドレッティが、わたげうさぎ「杏」をブラッシングしています。
「ふぇ〜、ミリアちゃんもサリアちゃんもいつも通り幸せそうですねぇ〜。平和なのはよいですねぇ〜。ところで、翠ちゃんはどこ行ったんでしょう〜?」
 そこへやってきたスノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)が、及川 翠(おいかわ・みどり)の姿がないのに気づいてミリア・アンドレッティに訊ねました。
「え、翠? さっき探検するの〜って言って出ていかなかった〜?」
「そうですかあ〜。じゃあ、仕方ないですねぇ〜。さあさ、みんな、御飯にしましょ〜」
 あっけなく納得すると、スノゥ・ホワイトノートがわたげうさぎたちの餌を餌皿に入れました。わあっと、わたげ大隊のわたげうさぎたちが集まってきます。
「御飯食べたら、次はみんなの番だよー」
 スノゥ・ホワイトノートのくれた餌を一心に食べるわたげうさぎたちにむかって、サリア・アンドレッティが幸せそうに言いました。
 その言葉に、わたげうさぎたちが「きゅっ」と答えます。
「ああ、もふもふですぅ〜♪」
 三人は、声をあげて悦びにうち震えました。

    ★    ★    ★

「ふう、最初はどうなるかと思ったけれど、案外、うまくいくものね」
「いやいや、そこは、私のセリフだわ。せっかくの新婚旅行に何かあってもらっちゃ困るでしょうに」
 ヴァイシャリーの喫茶店で一息ついて、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)に言いました。
 二人とも普段の水着やレオタード姿ではなく、清楚なワンピースに鍔広の白い帽子にサングラスという、いかにも旅行中のお嬢様姉妹という感じです。もちろん、姉妹などではなく、先頃結婚した新婚夫婦なわけですが。同性なのに夫婦というのもなんですが、このへんはパラミタならではですから、しょうがありません。
 ただ、ちょっと違っていたのは、セレンフィリティ・シャーレットが背中に大きなダーツ盤を背負っていることでした。
「ええと、それなんとかならないの?」
 セレアナ・ミアキスが溜め息まじりに言います。
「だって、これがなくちゃ、次にどこ行ったらいいか決められないじゃないの」
 セレンフィリティ・シャーレットの返事に、いったいどこのバラエティ番組だとセレアナ・ミアキスがまた溜め息をつきました。
 新婚旅行に出てきたのはいいのですが、忙しい教導団の任務の間に突発的に休みができたものですから、ほとんど準備ができなかったのでした。かといって、このチャンスを逃がすわけにはいきません。けれども、今から行き先を議論していては間にあわないような気もします。
 そこで登場したのが、このダーツ盤です。そこには、パラミタの地図が貼ってありました。そこへダーツを投げて、突き刺さった場所へ行こうというものです。
 そして、記念すべき第一投はヴァイシャリーに命中したのでした。
「まあ、いいじゃないの。こういうサプライズに満ちた旅も。十年後にはこの間当たった宝くじの賞金も下ろせるんだし、せっかくの新婚旅行なんだから、ここはぱあーっと派手に豪遊しましょ」
「ああ、そのことなんだけど。今後、セレンの通帳とカードは私が管理するから」
「えっ!?」
 突然の予期せぬセレアナ・ミアキスの言葉に、セレンフィリティ・シャーレットの目が点になりました。
「これはもう教導団の経理にも話は通してあるから。これからは、きちんと毎月のお小遣いの範囲内でやりくりしてね♪」
 いや、音符をつけられても、可愛くありません。これでは、ほとんど、趣味の無駄遣い禁止という死刑宣告みたいなものではありませんか。
「鬼や、ここに鬼が、鬼嫁がいるぅ!」
 思わず、セレアナ・ミアキスを指さして叫ぶ、セレンフィリティ・シャーレットでした。
「あー、変態みっけー」
「へっ?」
 いきなり現れた及川翠に指さされて、セレンフィリティ・シャーレットが、なんでなんでと少し慌てました。
「そんな変な物背負っているのは変態さんなんだもん。ヴァイシャリーの平和は私が守るんだよ」
 そう言うと、及川翠がでっかいハンマーを振り上げました。
「どうしてこうなる!?」
 さすがに、そんな物で叩かれる前にセレアナ・ミアキスたちが逃げだします。
「待てー!」
「だからあ、ダーツなんかで行き先を決めるからこんなことに巻き込まれるのよ」
「今さらそんなこと言われてもお……。よく分からないけど、逃げるわよー」
「待てー!!」
 何がなんだか分からないまま、ヴァイシャリー市内で追いかけっこを始めた三人でした。