校長室
秋はすぐそこ
リアクション公開中!
Episode14.女子会? ニキータ・エリザロフ(にきーた・えりざろふ)は、タマーラ・グレコフ(たまーら・ぐれこふ)を伴って、友人である空京大学のナージャを訪ねた。 「ハーイ、遊びに来たわよ。 ちょっと休憩して甘いものでも入れたら? ヨシュアは?」 「やあ。彼なら学費を稼ぎに行ってるよ。そゆとこ律儀だね、彼は。 ああ、ブドウ糖か、有難いな」 手土産を受け取ったナージャの発した言葉に、ニキータはしょっぱい顔をする。 「この女、どうなのかしら……もっとこう、あの有名店のケーキ? ナージャ嬉しい! とかそんな反応無いの?」 「有名なのかい?」 「コンビニケーキと味の違いも分からない相手に勿体無いと思ったけど、ヨシュアの為に奮発したわよ。 残念、居ないのね」 「いや、そろそろ戻って来る頃だよ。えーとお茶……は、ヨシュアがそろそろ戻って来るまでいいか」 「……この女……」 近くの椅子に適当に座って世間話をしていると、言う通り、{SNL9998896#ヨシュア}が帰って来た。 「お久しぶりです」 ニキータに気付いて挨拶したヨシュアは、三人の前にお茶が出ていないのを見て苦笑し、すぐに用意する。 タマーラも、トコトコそれについて行き、ヨシュアを手伝って、ケーキを皿に移しかえた。 「お土産まで有難うございます。ナージャさん、このお店のケーキは美味しいらしいですよ」 「へえ」 「……どうなの、この干物女。紹介しといて何だけど、ヨシュア、上手くやれてる?」 幼馴染だからこその容赦ない言葉に、ヨシュアはくすくす笑いながら「問題ないです」と言う。 「ならいいけど。ところで今は何やってんの?」 「ん? 大学の研究の方なら、特に変わったことはないね。 でも、ヨシュアと契約した時にオリヴィエ博士に貰った機晶石の研究が進んでなくて、空き時間はもっぱらそっちにかかずらってるよ」 「オリヴィエ博士に?」 「研究材料にどうぞ、ってね。 生きてるのに、動かなくてね。何をしても無反応なんだ。冬眠状態」 「相性?」 「恐らくね。それを見つける方法を探してる。 片っ端から機晶姫に組み込んでみて試すわけにもいかないし」 「アンタやりそうで怖いわ」 オリヴィエ博士の名が出て、タマーラはヨシュアを見上げた。 「オリヴィエ博士のこと……よかった」 「ありがとうございます」 「それそれ。おめでとう。 ザンスカールのオリヴィエ博士の家にはもう行ったの?」 ニキータの問いに、まだです、とヨシュアは答えた。 「空京を発つ前に会いまして、見送らせて貰いましたが」 くい、とタマーラがヨシュアの服の裾を引く。 「そういえば……今、王宮の仕事は?」 「続けています。 僕には契約者の学校での学歴がありませんので、ナージャさんの助手としてここの職員になるには、資格が足りないそうなんです。 なのでまずここの学生になったんですが、その学費が必要なので」 卒業後に、正式にナージャの助手になる、という。 「ナージャさんが選んでくれた授業以外は、ナージャさんの手伝いをしていますが」 カリキュラムを見て、ニキータは呆れた。 「じゃあ殆ど此処じゃない」 「だって此処で勉強すればいい話じゃないか。 私に教えられなさそうで必要そうな授業を選んだんだから合理的だろう」 既に助手として働かせているナージャは、悪びれなく言う。 「いいけどね……。ああ、そうそう、懐かしくて持ってきちゃった、これ、ナージャよ」 見せられた、少し色褪せた写真には、タマーラにそっくりの少女が写っていた。 「この頃は可愛かったのにねぇ」 「今も美人だろ」 「で、思わずカメラも持ってきちゃった。皆で撮らない?」 了承を得て、皆で並ぶ。 「天使ちゃんは私の隣で、反対側がヨシュア」 「却下」 「何で! じゃあ天使ちゃんは私の膝で両側にヨシュアとナージャ」 無言でナージャとヨシュアの間に行こうとするタマーラに泣きながら、それでもニキータは、タマーラの隣を死守したのだった。