シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

秋はすぐそこ

リアクション公開中!

秋はすぐそこ
秋はすぐそこ 秋はすぐそこ

リアクション

 
 Episode19.新しい家族と共に


 ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)と、その妻、フィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)は、空京の祭を訪れていた。
 折角の休暇なので、軍務のことは忘れ、祭デートを楽しむ。
 フィリシアは現在、妊娠四ヶ月だ。
 初めての新しい家族に、ジェイコブはそのいかつい外見からは滑稽に見える程、徹底した騎士振りを披露した。
 騎士、などという表現が自分に似合ってないことは、重々承知のジェイコブだが、祭の会場は人が多い。
 すれ違う人とぶつからないよう、壁のように護る夫のエスコートに、フィリシアは、愛されていることを実感した。

 そうして二人で、気になる屋台には片っ端から立ち止まり、食べ物や飲み物を買って食べ歩き、やがてフィリシアは、射的の屋台に目を留めた。
「あのぬいぐるみ、可愛い」
「どれ」
 見れば、景品がどれも小さな子供向けである。
 二人は、フィリシアのお腹の中にいる子供を意識した。
 ここはひとつ、教導団で鍛えた射撃の腕前を披露するか。ジェイコブは射的用の銃を手にする。
「いらっしゃい。一回につき、弾は五発だよ。綺麗な恋人に、いい景品を当ててあげてね!」
 銃は普通のエアガンだったが、やはり普段扱う銃とは勝手が違い、当たったのは五発中ニ発だった。
「ふむ……あまり調子がよくないな……」
 それでも、フィリシアが欲しがったぬいぐるみをゲットすることはできたので良しとする。
「まあ、調子に乗って、持ち帰れない程大量のおもちゃを獲得しても仕方ないしな」
「そうですわね」
 ぬいぐるみを渡されながら、フィリシアは微笑んで頷く。
 心の中で、お腹の子供に語りかけた。
(パパからあなたへのプレゼントよ。あなたのパパは射撃の名人なの)
 ふふ、と笑うフィリシアに、「どうした」とジェイコブが訊ねた。
「いえ、……二人でお祭デートですけど、家族同伴ですわね、と思ったのですわ」
 成る程とジェイコブも苦笑する。
「……来年は三人だ」
「楽しみですわ」
 フィリシアは、まだ殆どそれとは分からない腹部を優しく撫でた。