校長室
秋はすぐそこ
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Episode17.万博にて、小さな出会い 2021年。 空京で万博が開かれ、遊びに来て早々、保護者代わりのリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)とはぐれた童子 華花(どうじ・はな)とカメリアは、全く気にせずそのまま万博を楽しんでいた。 「賑やかで華やかだな。ん……」 時折に目を引くのは、それぞれのパビリオン周囲に立つ、コンパニオンガールの姿だ。 かっこいいなと眺めながら歩いていると、会場の一画に『コンパニオンコスプレ体験』という看板の店を見つける。 どうやらコンパニオン衣装をレンタルして写真を撮ってくれる、というようなブースらしい。 「ふむむ、面白そうだ。どうだ?」 とカメリアを誘って行ってみると、丁度客足が途切れたところなのか、それともあまり盛況でないのか、一人しかいない客が、説明の看板を読んでいる。 その少女は、華花達に気付いて振り返った。 「コスプレさんですか?」 「楽しそうかなと思ってな。えーと、お姉さん、も?」 「ハルカは、皆が迷子になってしまったのです。 今電話で、絶対一歩も動くなと言われて立っているのです」 どうやら、一緒に万博に来た友人達とはぐれてしまったらしい。 「このお店、全部のコンパニオンさんの衣装を着ることができるのです」 「うむ。ちなみにオススメはどこのだ?」 「みんなかっこいいですけど、ハルカはこれが一番、お姫様みたいで素敵なのです」 パラミタパビリオンの衣装の写真を、ハルカは指差す。 「成る程……しかしどの衣装もそれなりに捨て難いな」 「全部着てみるのはどうです?」 「それがいいな。では行こう」 誘われて、ハルカは首を傾げた。 「ハルカもです?」 「オラにこの衣装を勧めた責任を取るべきだと思うぞ。一緒に着よう」 分かりました、とハルカは頷く。 「責任を取るのです」 一歩も動くな、と言われていたはずのハルカは、華花達と連れ立って、ブースの中に入って行った。 普段和服で過ごしている華花達には、そのコスチュームは洋装という時点で何やら落ち着かない。 「ふむ……こんなものか?」 華花達は、そわそわと、何度も鏡を見て自分の格好を確かめている。 「二人とも、すごく似合っているのです!」 記念に三人で写真を撮り、衣装は一時間レンタルできるとのことで、少し外を歩いてみよう、ということになり、そして、それが華花がハルカを見た最後になった。 ちなみに、ハルカとはぐれた後も、華花達は普通に万博を楽しみ、美形でボンキュッボンなコンパニオン達の中で画期的なちびっこコンパニオンと間違われ、時々声を掛けられたりもした。 恐らくハルカの方も似たようなことになっただろう、と、特に焦るようなこともなくそう想像しつつ、華花達は、万博の一日を満喫したのだった。