リアクション
* * * 同じように、鳴神 裁(なるかみ・さい)とアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)も基礎訓練に励んでいた。 機体は自機のゴッドサンダーだ。 『イーグリットは機動力があるが、その分しっかりと安定させて操縦するのが難しい。飛行感覚を掴んでいないと、機体に振り回されてしまいますよ』 パイロット科長や教官長ほどではないが、かなり腕の立つ教官から指導を受けている。 なお、火気管制、攻撃担当が裁、機体操縦担当がアリスだ。 「まずは、速度を維持して……」 飛行感覚を覚えていく。 さすがに、それを掴まなければイーグリットの特性を生かすことは出来ない。高機動戦闘も可能な機体といえども、その性能を上手に引き出しているパイロットは、学生には少ない。おそらく、現パイロット科長くらいだろう。 ある程度慣れてきたところで、近接戦闘の訓練に入る。 武器はマジックソード。試作型のエネルギーコンバーターにより、機晶エネルギーで魔力を代用可能としている。 射撃以上に、白兵武器による戦闘はパートナーとの連携が重要になる。機体移動と、刃を振るうという攻撃動作をどこまでスムーズに行えるかによって変わってくるからだ。 最初はフロートしたまま向かってくるターゲットを斬ることから始め、それから機動状態からの斬撃といったように、少しずつ慣らしていく。 『なかなか良くなってきましたね。では、次の段階に移りましょうか』 * * * 「イコンの真の力……どうすれば『覚醒』を扱えるようになるのでしょう?」 オルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)とミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)もこの時間に訓練を受けていた。 海京決戦の際、イコンで出撃出来なかったこともあり、まだ『覚醒』の本質を彼女は知らなかった。 そこで、教官に申請し、単騎で訓練を行わせてもらっている、というわけだ。 「周りの者達は自在に力を引き出せるようになっているようですが……どうにもとっかかりが見えませんね」 ミリオンが息を漏らした。 カムパネルラの中で基本動作を延々と続けていたが、ふと、以前はなかった文面がパネルに表示されているのに気付いた。 『THE AWAKING』 それを起動すれば、イコンの真の力が目覚める。海京決戦で目覚めた『罪の調律者』が大昔に施したプログラムだ。 だが、本当にそれだけでいいのだろうか。ただ起動させるだけで、【カムパネルラ】が力を貸してくれるのだろうか。 誰かを置いていくことがないように、そして誰かに置いていかれることのないように。誰かを守れるだけの力が欲しい。 だから疑わず、信じる。 「起動!」 その力を解き放つ。 「なんて……力なのです!」 出力がそれまでの比ではない。だが、初めて起動したこともあり、まだその力を制御しきれていない。 (一体感を意識して、ミリオンとカムパネルラを信じて) 覚醒状態がいかなるものかを意識する。 押さえ込むのではなく、イコンにその身を委ねるような感覚。そうすることで自分の身体であるかのように機体を駆ることが出来るようになる。 そのためには、パートナーもまた同調しなければならない。 「想像以上ですね、これは……」 が、まだそうすべきことにミリオンが気付いてないように見受けられた。 「ミリオン。イコンを、カムパネルラを、信じてあげて下さい」 「信じる……ですか」 それが簡単に出来れば、苦労はしない。 「分かりました」 ミリオンもまた、その力に身を委ねた。三位一体が如く、自然と身体を動かすかのようにイコンを操る感覚に、徐々に慣れていく。 「そうです。この調子なのです」 あとはミリオンと心を一つにするくらいになれれば、完全に扱うことが出来るだろう。 覚醒の本質は、パートナーとの絆の深さによって証明されるものだ。 |
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