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Entracte ~それぞれの日常~

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Entracte ~それぞれの日常~

リアクション


14:40〜


・パイロット科 実戦編


『よし、そろそろ模擬戦に移ろう』
 訓練も終盤に差し掛かり、そろそろ実戦に移ろうと教官が言い出す。
「今日はコームラントでの実戦だけど、やっぱり悩むなぁ」
「この前はイーグリットで二挺ライフルを試しましたわね。今回の実戦結果次第で判断すればいいと思いますわよ」
 葉月 エリィ(はづき・えりぃ)エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)がコームラント【クリムゾン】に乗って訓練を行っていた。
「……それにしても、ゼロは大丈夫かな?」
 訓練には来ていないクリムゾン・ゼロ(くりむぞん・ぜろ)の心配をする。何やら訓練前に会ったときは様子がおかしかったが……
『よし、始めるぞ』
 そのときであった。
 ゼロが突如出現した。
「何やってんだ……?」
 ぱっと見はイコンを小型化したかのような姿のパートナーの出現に閉口する。
「今こそミーの力を見せてやるでござる!」
 なにやらおかしなことになっているが、とりあえず教官は相手をするようだ。
 
 ゼロは、加速ブースターを起動し、フライトユニットで飛び上がる。
 そして、背後に接近し、
「零システム・マジックモード起動……スパークプラズマ発動」
 雷術を関節駆動部に流し込む。
 さらに、追い討ちで小型ビームキャノン――という名の機晶キャノン零式を放つ。
 だが無意味だ。
「むむ、やるでござるな!」
 はっきり言って、まるで相手になっておらず、教官も本気で相手にしようとは思ってないらしく適当にあしらっている。
 コックピットハッチに六連ミサイルポッドを撃ち込む。視界封じのつもりだが、残念ながらそこにカメラはない。
「――――!」
 教官の機体が訓練用のビームライフルを放つ。それはゼロに直撃し、吹き飛ばされる。実戦だったら、それ一発で粉々だ。
「まだ、まだでござる」
 それでも、立ち上がる。
「ミーは失敗作ではないでござる!」
 その身体が光に包まれる。
 そして覚醒した。

 ――種モミ剣士に。

「なんでござるか、今の種モミを持ったおじいさんは……違うでござる、覚醒とは脳裏に浮かんだ種が割れて……」
 ビームライフルの二発目が被弾して、今度こそ起き上がることはなかった。
『葉月……それ、後でちゃんと回収していけ』

* * *


『五月田教官、ご指導願います』
 水城 綾(みずき・あや)ウォーレン・クルセイド(うぉーれん・くるせいど)は、五月田教官との模擬戦を希望した。
『模擬戦の場合、基本は三対三だ。他にいるか?』
 次いで、二機が名乗りを上げる。
 天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)アルマ・オルソン(あるま・おるそん)が搭乗するコームラントと、御剣 紫音(みつるぎ・しおん)綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)の乗るイーグリット、ゲイ・ボルグ アサルトだ。
『教官、今日こそはあなたをあっと言わせてみせるぜ!』
 紫音が意気込んだ。
『どうせやるなら強い方がいい。じゃないと仮想カミロ戦にならないからな』
 ウォーレンもまた、強い心構えのようだ。
『では、始めよう』
 互いに編隊を組んで飛行する。
「五月田教官なら申し分ない……ホワイトライトニング、ウォーレン・クルセイド。いざ参る!」
 【ホワイトライトニング】が五月田教官のコームラントに向かって飛び込んでいく。
『状況開始』
 五月田教官機の大型ビームキャノンから光条が走る。
 ほとんど同じタイミングで、生徒側のコームラント【ドラッケン】からもビームが放たれる。
 そこから先は弾幕戦だ。
 五月田教官はミサイルを、【ドラッケン】は機関銃を、それぞれ放ち相殺する。そこから先は前衛のイーグリット同士の戦いだ。
 先制攻撃を仕掛けるため、綾は早くも決断する。
「いこう、ウォーレン!」
 覚醒状態へと移行する。
 それによって相手イーグリットと戦う。今回の教官は五月田のみで、イーグリットに搭乗しているのは同じパイロット科の生徒だ。
 ならば負けられない。そして、五月田教官にまで辿り着かなければならない。
「やっぱり、まだ加速のコントロールが……」
 性能は向上するが、その力にやや振り回される。
「落ち着け、綾」
 冷静にならなければ。
 海京決戦のときは、初めての覚醒で、何としてでも守りたいという強い思いがあったからこそ、機体を制御出来たのだろう。
 だが、いざ訓練で覚醒状態に移行してみると、思うようにいかない。
 射撃で牽制しながら、相手の攻撃はビームシールドで防ぐ。問題は、機動性の向上――主に瞬発力だが、それのせいでかえって狙いをつけるのが難しくなっている。
「当たらないなら、接近戦で戦うまでだ」
 というわけで、間合いを詰めビームサーベルで戦う。
『後ろを忘れるな』
 後衛の五月田教官からの援護射撃が来る。
『その力は強力だ。だが、持て余すくらいなら使わない方がいい』
 生徒の中には、本当に必要になったときの切り札として使えるように訓練している者が多い。
 それは一重に、力のみに頼るのではなく、まず自分自身が強くならなければと考えているからだ。
 ただ力に頼れば、それに飲まれるリスクが高くなる。そうなれば、イコンを目覚めさせた調律者は、この覚醒を再び封じるだろう。

「風花、今後のためにデータ取りを頼むぜ。そして、俺達の力を教官に見せてやろうぜ」
 【ゲイ・ボルグ アサルト】は無闇に飛び込まず、まずは敵の攻撃の回避に専念する。
 五月田教官相手に、下手に距離を詰めるのは危険だ。向こうは常に全体の状況を見通した上で、攻撃を仕掛けてくる。
 行動予測をするも、完全には読みきれない。
(さすがに正攻法では限度があるか……風花、マジックカノンをチャージ)
(はいな)
 エネルギーコンバーターを通してマジックカノンにエネルギーを送り込む。
 次いで、後衛の【ドラッケン】に援護の指示を送る。合計四門の砲口を、五月田教官達に向ける。
『ほう、面白い』
 一斉射出。
 同時に、【ゲイ・ボルグ アサルト】がブースターで加速する。
 五月田教官機が急降下し、回避する。そして旋回しながら【ゲイ・ボルグ アサルト】と【ドラッケン】に向けてミサイルを放出する。
(チャフは効かない。赤外線式か)
 一応訓練用ではあるが、レーダー誘導と赤外線誘導とちゃんとあるらしい。
 ミサイルに対しては【ドラッケン】が汎用機関銃で弾幕を張ることによって対処する。さすがにチャージには時間がかかるため、その間だけは回避に専念せざるを得ない。
『本命はこっちだ』
 五月田教官のコームラントからビームキャノンが放たれた。
(そんなことだろうと……!)
 前進しながらかわす。だが、
「――!!」
 時間差でもう一門の方から放たれる。それは左腕をかすめた。しかし、ほとんどダメージを受けていない。
 そこで違和感を覚えた。
『今のは牽制だ。エネルギーチャージ100%』
 二門の射線がちょうど【ゲイ・ボルグ アサルト】に向いている。そしてフル出力のビームが飛んできた。
「風花、こっちのエネルギーは!?」
「70%どすぇ」
 すぐにイーグリット用に改良した大型ビームキャノンを放ち、相殺を図る。だが、威力が足りない。
「マジックカノンは?」
「まだ撃てんわぁ」
 機体を急回転させ、ひねるようにビームを避ける。
『武装と機体の性能に頼り過ぎだ、御剣』
 一方の五月田教官のコームラントはデフォルト装備のままだ。その最低限の武装を完全に使いこなすことで、こちらに対処している。
『確かに、腕自体も悪くはない。だが、俺も伊達に教官として生徒達を見てきたわけではない。お前達一人一人、一機一機の癖は掴んでいる』
 だから、実際の強さよりも生徒からは強く見えるのだ。
「だったら、これで!」
 覚醒。
 【ホワイトライトニング】と二機連携で五月田教官に当たる。その後方から、【ドラッケン】が支援する。
 
「さすが五月田教官……強い」
 沙耶もまた、教官の強さに感心していた。だが、まだグエナやエヴァンほどではない。五月田教官と違いあの二人は、こちらのこと、機体やパイロットの癖を全く知らなくても圧倒して見せた。
 ならば、純粋にパイロットとしての技量で教官を超えなければならない。まだ及ばないとしても、いずれは……
「いくよ!」
 コームラントを覚醒状態にする。
 これを使いこなしてこすことも今後の課題だ。
「エネルギー充填完了、発射!」
 前の二機のために、道を作る。
『さすがに覚醒三機相手に、こちらが全部通常起動というのはバランスが悪いな』
 五月田教官の機体が光る。
『よく見ておけ』
 次の瞬間、五月田教官の機体から放たれたビームが、前衛の二機に直撃した。
 次いで、そのまま【ドラッケン】まで距離を詰めてくる。
 何が起こったのか。
『戦闘終了だ』
 それから、五月田教官が覚醒のリスクについて説明を行った。
『確かに、覚醒状態の機体は強力だ。だが、エネルギーの消費は早くなる。使うタイミングを誤ると、かえって不利な状況になる。さっきはお前達が一斉に攻めてくる瞬間に覚醒させただけだ。行動を予測し、射線を読まれないようにあえて少し外しておいた。覚醒した瞬間が一番機動性、瞬発力がある。だから圏内に入った瞬間に覚醒し、射線を瞬時に合わせてトリガーを引いた』
 状況的に、一番のタイミングだったからだ、と言う。
『今のところ、同じように覚醒を行う敵は確認されていない。だが、どんなに機体の性能が高くても最後にものを言うのはパイロットの技量、特に判断力だ。よく覚えておけ』