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春休みを守れ!御上先生救出作戦!

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第二章 想定外
「覚えてなさい、環菜のヤツ……」
 ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は、苦々しげにそう呟きながら、先ほどのやり取りを思い出していた。
 そもそもは、『日頃何かと自分を子ども扱いする子分どもを見返してやろう』と思ったのが始まりだった。
「今回は私一人で仕事をこなして見せるわ。お前たちは決して手を出さないこと、いいわね!」
 そう啖呵を切ったところまでは良かったが、中々いい仕事が見つからない。そんな時目に留まったのが、蒼空学園の教師が行方不明になっているという新聞の記事だった。『何せ先生が行方不明なのだ。助け出してあげれば、きっと環菜は喜んで報酬を出すだろう』そんな軽い気持ちだった。
 ところが、だ。



「申し訳ないけれど、今回の件について有償での協力は想定していないの」
 豪華な調度の並ぶ蒼空学園の校長室に、校長御神楽環菜(みかぐら・かんな)の冷たい声が響き渡った。
「で、でも、聞いた話だと、蒼空生は3人しか志願してないそうじゃないですか。手が足りないんじゃないですか?」
 このままで引き下がっては負けだ。そう考えて咄嗟に口を開いた私を遮る様に、校長の脇に控えていたルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)が淡々と続けた。
「元々今回は、少人数、より具体的には10人程度での行動を想定していました。大人数で行動した場合、不利を悟った敵側が御上先生を連れて逃走する可能性があるからです。そして現在、既に志願者の数が規定数を上回っています」
「と、言う訳なの。わざわざお金を払ってまで協力者を募る必要はないの」
 環菜がそっけなく言った。
 予想外の返事に、私は、一瞬声を失った。このままでは子分どもに合わせる顔がない。
「まぁでも、他ならぬあなたの申し出だし……、手ぶらで帰すのも可哀想ね。……いいわ、契約しましょう。ただし、この条件でだけれど」
 そういって環菜が提示してきた条件は、『報酬といっても“お足代”程度で、しかも成功報酬。さらに作戦中に生じた人的・物的損害については、学園はこれを一切関知せず、また保障・賠償等も一切行わない』というものだった。お世辞にも良いものとは言えないが、背に腹は替えられない。
 「……潮時ですね」
 結局私は、吐き捨てるようにそう言って契約書にサインした。
『いつか見返してやるわよ、環菜』
 偏光グラスの奥から私を見つめる悪戯っぽい眼差しに向かって、私は、固く誓ったのだった。