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リアクション
第八章 「ちょっとまったぁ!」
『どうしてこんな事になってしまったのだろう……?』
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、衝撃のあまり真っ白になってしまった頭の片隅で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
『御上先生の居場所を知っている』という男子生徒たちについてやってきた体育倉庫。今自分はそこで、いやらしい笑みを浮かべた男たちに囲まれ、部屋の片隅へと追い詰められている。
「だからさぁ、ホントにオレたちは先生の居場所を知ってるんだって。だって、先生をゴブリンに襲わせたのは、オレたちなんだもの」
男たちのリーダーらしい男が、独白を続けながら一歩一歩迫ってくる。
「でもさー、あの先生、突然いなくなっちゃったんだよね。オレたちの目の前から。それこそ消えて無くなるみたいにさ。まったくゴブリンに払う金だって安くねぇってのに。金だけ払って、テストに色付けさせることもできねーで、丸損じゃね?オレって?」
喋っている内にだんだん感情が高ぶってきたのだろう。男の顔はどす黒く紅潮し、見開いた眼は真っ赤に血走っている。
「だからさー、慰めて欲しいんだよぅ。いいだろ、な?お前だってさー、こんなとこまでノコノコついて来たんだからさ、少しは期待してたんだろ?」
男がそこまで言うと、取り巻きの男たちが下卑た笑いを浮かべる。
「ちょっと待ったぁ!!!」
その場の空気を吹き飛ばすような明るい声と共に、まばゆいフラッシュが倉庫内に走る。
開け放たれた体育倉庫の入り口には、カメラを手に勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が立っていた。腕に巻かれた報道部の腕章が、明るい光を受け、一瞬、輝きを放ったように見える。
「そこまでよ、この連続強姦魔!アンタたちの悪事は、この報道部の森下冬希が、全部聞かせてもらったからね!夜住さん!!」
「まかせて!」
彩蓮は、森下の声と共に倉庫内に飛び込むと、一挙動で男の懐に入り込んだ。相手に何する間も与えず、みぞおちに必殺の一撃を叩き込む。その一撃で、男は動かなくなった。
結局、暴漢たちが全員倉庫の床に転がるまで、10秒とかからなかった。程なく森下が携帯で呼んだ警備員や教師たちが現れ、男子生徒たちを連行していく。
アリアもまた、女性警備員に抱きかかえられるようにして連れられて行く。憔悴しきった彼女の顔を見て、彩蓮は声を掛けるのを止めた。
「夜住さん」
声を掛けられて振り返ると、森下がいた。心なしか、頬が紅潮している。
「ありがとう、夜住さん。あなたのお陰で、アイツらを捕まえることができました!」
そういって、ペコリと頭を下げる森下。
「そんな、お礼なんて……。私の方こそ、お役に立てて嬉しいです」
はにかんだ笑みを浮かべる彩蓮。
「あの、迷惑ついでにもう一つお願いがあるんですけど……」
「先生の事ですね」
「はい、お願いします!一緒に、『妖精の森』まで行って下さい!」
「わかりました。急ぎましょう。早くこの事を救助隊の人たちに伝えないと!」
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