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リアクション
――妖精の村のとある木の下で。
五月葉 終夏(さつきば・おりが)が、【ヴァイオリン・ゼーレ】で演奏をしていた。
奏でる曲はまだ生まれたばかりの名もなき曲。終夏が、おとぎ話を読んでイメージした旋律を奏でている。
その隣、ブランローゼ・チオナンサス(ぶらんろーぜ・ちおなんさす)が基となったおとぎ話を朗読する。曲のイメージのように身振り手振りを交えて読むその姿は舞台劇のようだ。
「……となりました。めでたし、めでたし……」
ブランローゼが本を閉じると、終夏が演奏を止める。
そこで、ドロシーが拍手をする。ドロシーと一緒にいた、笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)、イリス・クェイン(いりす・くぇいん)、十六夜 白夜(いざよい・はくや)も同様に拍手を送る。
「御清聴、ありがとうございました!」
拍手を受け、終夏とブランローゼが頭を下げる。
「ええ、なかなかいいものを聴かせていただきました」
イリスが微笑みながら終夏に言う。
「おや珍しいのう、おぬしが人を褒めるなど」
そんなイリスに白夜がからかう様に言うと、
「あら心外ね、いいものはいい、と言っただけよ」
と、口調は穏やかだが、目線で『余計な事を言うな』とイリスが釘を刺す。被った猫の皮が剥がれると面倒だからだ。
「けど良かったと思うよ。朗読も聞き入っちゃったよ」
「そう言ってもらえるとやった甲斐がありますわね」
紅鵡に言われ、ブランローゼが嬉しそうに笑う。
「どうだったかな、ドロシー?」
終夏に聞かれ、ドロシーはほう、と溜息を一つ吐いた。
「良かったです……表現方法というのは色々あるのですね。また驚かされました。私は物語にするしかできませんから……」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
「けど、あなたもすごいと思いますわよ?」
ブランローゼに言われ、「凄い、ですか?」とドロシーが首を傾げる。
「ええ、あなたが物語を書いたから、終夏が曲を作れたのですよ?」
「そうそう、あの物語が無かったらあの曲はできなかったからね。私は物語なんて書けないし」
うんうんと終夏も頷いた。
「そういえば、おぬしは物語を書いているようじゃが、その書き方なんかは誰かから学んだものなのかのう? やはりパートナーがおったのか?」
「あ、その辺りボクも聞きたいな。そのドレスとか可愛いけど、やっぱりパートナーから貰ったものだったりするのかな?」
白夜と紅鵡が、ドロシーに聞いてくる。
「パートナー、ですか……」
ドロシーが記憶を辿る。過去に、自分にそのような存在がいたのかどうか。
「こら白夜、ドロシーが困っているわよ」
ドロシーが答えに迷っていると、イリスが白夜を窘める。
「む、そうなのかのう。すまんのう、どうもわらわの知識欲が疼いてしまったわ」
「ごめんねドロシーさん、聞いちゃいけないことだったかな?」
「あ、いえ、そういうわけでは……」
申し訳なさそうに謝る白夜と紅鵡に、おたおたとドロシーが手を横に振る。
「ふむ……それじゃ、お詫びに外の話でもしようかしら……と、その前に」
イリスはお菓子を取り出すと、「お土産、食べて頂戴」と並べる。
「あ、それならドロシーさん好きな食べ物とかってあるのかな?」
「食べ物ですか? そうですねぇ……」
紅鵡の質問に、口元に指を当て考えるドロシー。
「それじゃ、私達はバックミュージックとでもいきますか。それではお耳汚し、容赦あれ!」
終夏が再度、ヴァイオリンを奏で始めた。
その演奏をバックに、ドロシー達の会話は続いた。
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