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リアクション
第五章
「こちらへどうぞ、ドロシーさん」
七瀬 歩(ななせ・あゆむ)に椅子を促され、ドロシーは頭を下げる。
「お誘いいただきありがとうございます」
「いえいえ、ドロシーさんとお話ししたいと思っていましたので」
笑みを浮かべ、歩が言う。
――今ドロシーが居るのは、花妖精の村で一部の者達で臨時に開かれた茶店だ。
休憩を、とドロシー達が書庫から出た時、通りかかった歩が声をかけてきたのだ。彼女もそこで手伝いをしながら、お茶会を開いていたらしい。
「さ、どうぞ」
歩に勧められた紅茶を啜り、一息吐くドロシー。
「お口に合いますか?」
「ええ、とても美味しいです」
ドロシーの答えに、「よかった」と歩が微笑む。
「……しかし、綺麗なお花畑ですね」
ふと、歩が庭園を見て言う。座席から見る景色は、庭園の花畑が広がっていた。
「そう言って頂けると育て甲斐がありますね」
「このお花畑は昔からあったんですか?」
「いえ、荒れていた頃がありまして……だんだんと綺麗にしていきました」
ドロシーは目を細め、過去を思い出すように言う。
「一人で、ですか?」
少し驚きつつ歩が聞くと、ドロシーはゆっくり首を横に振る。
「子供達にも手伝ってもらいました。あの子達には感謝しています」
「そういえば……おとぎ話を書き始めたきっかけ、というのも子供達の為ですか? 楽しませるために」
歩の言葉に、ドロシーは少し考える仕草を見せる。
「そうですねぇ……あの子達に聞かせる為、ですかね。楽しんでもらえているのかはわかりませんが……」
「ドロシーおねえちゃんのおはなし、たのしいよ?」
そう言って、花妖精の子供がドロシー達に菓子を差し出してくる。
「あら、お手伝いしてるの?」
ドロシーの言葉に、花妖精の子供は頷く。
「ええ、助かってますよ……ありがとうね」
お菓子を受け取りつつ、歩が花妖精の子供の頭を撫でる。その子供は照れくさそうにはにかみ、戻っていった。
「さて、あたしもお手伝いしないとね……それじゃごめんなさいドロシーさん、ごゆっくり」
「はい、頑張ってくださいね」
ぱたぱたと戻っていく歩の背を見つつ、ドロシーは紅茶を一口啜った。
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