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リアクション
――花妖精の村の原っぱ。そこには複数の石で作られた台があり、その上に鉄板が置かれていた。
石には薪がくべられ、火が上がっている。火は鉄板を熱し、その上に置いてある食材を焼く。
「ほら、焼けたぞ! どんどん食ってくれ!」
無限 大吾(むげん・だいご)が焼き上がった食材を焦げない内に器に移す。
「千結、やってくれ」
「はいよ〜、どんどんお食べ〜」
廿日 千結(はつか・ちゆ)が大吾から受けとった器を、花妖精の子供達に渡していく。
「大吾ちゃん、食事足りないよ〜?」
「ああ、焼けるまでもうちょっと待ってくれ」
空になった鉄板に、再度食材を乗せていく。熱せられた鉄板から、ジュウジュウと焼ける音と匂いが立ち込める。
「悪いな、子供達集めてもらってよ」
「いえいえ、こちらこそ御馳走してもらって感謝してますよ」
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が言うと、大吾が笑った。
「いいってことよ。こういうのは大勢で食べるのが一番だからな。誰も集まらなかったら千結と二人でやる羽目になってたからな」
「それはそれで大変そうでございますね……」
アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が鉄板の食材を見て呟く。どう見ても二人分としては多すぎる量だ。
「よっと……ほれ、できた」
「あたしが運びますわ」
「我も手伝おう」
千結に代わり、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)とイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が大吾から皿を受け取り、
「はい、食べる前にちゃんと手を洗うのですわよ」
「熱いぞ。食べる時には気を付けるようにな」
と、子供達へと渡す。
「ねえ、これなんていうの?」
「ん? それですか? それはですね……」
「それじゃ、これは?」
子供に袖を引かれ、近遠が質問に答える。初めて見る食べ物に、興味津々のようだ。
「……すまないなぁ、むしろ手伝ってもらっちまってるようだな」
「いえいえ、そんなお気になさらないでください」
「そうだな、元々遊んでいたわけだし」
「それに、先程の方が大変だったと思うのでございます」
アルティアの言葉に、ゆーりかとイグナが頷く。
「ん? さっきって、子供と遊んでた時のことか?」
大吾が言うと、近遠が頷く。ここにいる子供達の大半は、近遠が遊んで居た時誘った子だ。
「いえね、子供というのは色々質問するものでして……」
ああ、と大吾が納得する。恐らく色々と質問攻めにあったに違いない。
「まあ、そういうのも含めてパーッとやってくれ。俺は焼き役に徹させてもらうからな」
「そうすると貴公が食べられないのではないか?」
「ああ気にするな。適当に摘まんでるからな」
そう言うと、大吾はいい具合に焼けた肉を口に放った。
「役得ですね」
「これくらい許せ」
近遠の言葉に、大吾がにやりと笑った。
「で……何してるんだろうか、春太ちゃんは」
首を傾げながら、千結が周防 春太(すおう・はるた)を見て呟く。
「お、お願い、一口でいいから!」
春太は花妖精の子供に頭を下げ、何かを頼みこんでいた。
「う〜……や!」
が、子供は何やら嫌がっている様子を見せている。
「春太ちゃん、何してるの?」
「うわっ!? あ、廿日さん……見られてしまいましたか」
「さっきから見てたけど、何をしてるんだいキミは?」
「いえ、あの子の蜜を吸ってみたくて……」
「蜜?」
春太に言われ、花妖精の子供を見る。その子供は頭の上に大きな花を乗せていた。
「できたら採取したいのですが……お、お願いだから! ほんの一口でもいいから」
春太は子供に深々と頭を下げるが、
「や〜! やなの〜!」
そう言うと逃げ出してしまった。
「あ、待って……!」
「あんなに嫌がってちゃ無理そうねぇ」
「はぁ……残念だ」
がっくりと大きく春太は肩を落とす。
「……ま、これでも食べて元気出しなさい」
その姿を見て、少し可哀想に見えた千結がそっとバーベキューの皿を差し出した。
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