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リアクション
「……うん、見えた! 確かに今言った事が見えたよ!」
書庫の奥、しまわれていた『おとぎばなし』の原本を手に【サイコメトリ】をかけたルカルカが言う。
「けど……となるとなんでドロシーはそのことを話さないんだろうね?」
「そうだな、そこが疑問に残る。見ているならば、当時のことを知っているはずだ。『大いなるもの』とぼやかした表現をするだろうか?」
ルカルカの言葉に、ダリルが顎に手を当て考える。
「というと、ドロシーは何かを隠しているってことか?」
「そうなりますわ……けど何を?」
ヴァリアが言うが、ハインリヒはわからないと首を横に振る。
「……ダメだ、謎が余計深まっちまった……一体何が何だか」
「あの……海くん、よかったら少し休憩しない? 考えっぱなしじゃ疲れちゃうよ?」
頭に手を当て考え込む海に、柚が提案する。
「そうした方がいいかもね。ちょうどクッキーもあるし、休憩しない」
「……そうだな、そうしよう」
海がそういうと、柚が周りにクッキーを配り始める。
「海くんもどうぞ」
「ああ、サンキュ」
柚が手渡したクッキーを受け取り、海が齧る。甘味が口に広がった。
「えっと……お味はどうかな?」
「ああ、美味いよ。ありがとうな」
海に言われ、はにかんだ様な笑顔を見せる柚。
「良かったね柚、昼間焼いた甲斐があったじゃないか」
「う、うん……」
からかう様に言う三月に、恥ずかしそうに頷く柚。
だが、海の頭の中からは疑問が離れなかった。
ぐるぐると思考は巡るが答えは出ない。ただ、口の中にクッキーの甘い味だけが残った。
――その頃、ドロシーが生活している小屋では。
「……ふぅ」
机に向かっていたドロシーが、一息吐く。
机にあるのは、ペンとインク。そしてそれらが描いた文字が綴られている本だ。
書かれている内容は、今日彼女が見た物事。今日あった事を記していた。
いずれ、子供達の為に書く話の題材として、日記として記してあった。
「今日は、色々ありましたね」
一人、ドロシーが呟き、思い返す。今日の出来事を。
この村に訪れた人々。様々な事があったが、皆笑っていた、と思う。
今日みたいに、平和であればいい。そうあって欲しいと、ドロシーは思った。
……ふと気づくと、机を照らすろうそくが短くなりつつあった。
「……さて、そろそろ休みましょうかね」
出来事を記した書を閉じ、ドロシーはろうそくの火をそっと吹き消した。
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