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リアクション
第六章
夜も更けた、村の者達が寝静まった頃。
ろうそくの明かりに照らされた書庫の中で、海や一部の者達はまだ作業を続けていた。
「……そうか、第三世界はそんなことになっていたのか」
海から第三世界の話を聞いたハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)が腕を組み唸る。
「ロボットの話は聞いていたが、『ドールズ』なんて物も出てきたか……」
「未知の存在ですか……」
「僕達が調べた書物にはそのような記述がある物は無かったかなぁ」
杜守 柚(ともり・ゆず)と杜守 三月(ともり・みつき)が自身のパソコンを見ながら呟いた。二人は各世界について描かれた書物をまとめる作業をしていた。
「未知の存在……というには言いすぎかもしれないけど、第四世界にもそのような存在が居ますわ」
「どういう事ですか?」
クリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)の言葉に、海が反応する。それに答えたのはハインリヒだった。
「あっちには『サンダラー』っていう二人組のガンマンがいるんだが、わかっているのは名前と凄腕って事くらいだな」
続けてハインリヒが第四世界で得た情報を話す。
――第四世界で開かれる、最強ガンマンを選ぶ大会に現れた『サンダラー』という二人組。
――その二人組は、大会で対戦相手だけでなく、参加者までをも皆殺しにしていく。
――辛うじて逃げた無法者達が『打倒サンダラー』と集まり出している。
――そして、次の大会が迫ってきている。
「ふむ……謎の二人組か……俺の方はそのような記述のある書物を確認していないが、そっちはどうだ?」
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が柚達に尋ねるが、二人とも首を横に振る。
「そうか……ちょっと考えてみたんだが、各世界の異変は別世界の者が引き起こしてるんじゃないか?」
「別世界、ですか?」
海が聞き返すと、ハインリヒとヴァリアが頷いた。
「現に私達は遺跡を介して他の世界を自由に行き来しているわけですからね」
「ああ、同じように行き来できる何かがあるのかもしれない。大会以外『サンダラー』が何処で何をしているか知る奴はいないんだからな。遺跡のようなゲートを通って別世界に逃げているのかもしれない」
「となると遺跡以外のゲートの存在が必要となるわけだが……ハイブラゼル地方にそのような物はあの遺跡以外は無いはず……」
「パラミタでも、その様な物があるとは聞いた事がないな」
海とダリルが言うと、ヴァリアが柚達に向かって尋ねる。
「昼間子供達にも聞いてみたのだけれど、『おとぎばなし』で……そうね……『時空を渡り歩く者』、なんて記述のあるものはないかしら? あったとしたらもしかしたらヒントになるのでは……」
「いえ……残念ながら……」
申し訳なさそうに言う柚に、そう、とヴァリアが溜息を吐いた。
「結局は推論の域から出ない、か……何かしら情報を掴めると思ったんだけどなぁ」
「現時点で情報が少ないですからね……他の世界のを得られれば別だったのかもしれませんが」
落胆するハインリヒに海が言う。
「今の所得られている情報は第三世界と第四世界ですからね……」
「書物もあまり他の情報は得られなかったし……」
柚と三月も肩を落とす。
「お疲れぇ……」
その時、書庫の奥から疲れ果てた表情のルカルカ・ルー(るかるか・るー)がやってきた。
「ダリル……データ入れといたわよ……」
「ああ、わかった。で、何か分かったか?」
ダリルが言うと、ルカルカは大きなため息を吐いて答えた。
「片っ端から読んだけど、具体的にわかるような物は無かったわ……」
「正直手詰まりか……海、今まで調査して何か気になった点などは無いか?」
「気になった点?」
ああ、とダリルが頷く。
「皆の意見を聞いているのは海だからな。何かしら感じた事でもあれば言ってみてくれ」
「そう言われても……いや」
海の頭に、一つの事が思い出される。昼間にあった、出来事が。
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