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リアクション
プロローグ
イルミンスール魔法学校の校長室。
エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)は、着信音を鳴らす携帯電話を溜息と共に見つめる。
着信先を示す表示には、偽ロリと表示されている。
何度目かの着信だが……相手は、本人ではないだろう。
「……もしもし」
エリザベートが通話ボタンを押すと、混乱したような言葉が聞こえてくる。
「もしもし、もしもし! これからどうしたらいいんですか!?」
耳に響く声に、エリザベートは露骨に嫌そうな顔をする。
自分の精神の制御が出来ていない子供らしいといえばらしいのだが、これでは仕事が進まない。
救出に向かわせた者達は一体何をしているのだろうか?
「問題はないですぅ。救出に向かわせた連中が、そろそろ到着する頃ですぅ」
「は、はい……」
結局のところ、安心感が欲しいのだ。
不安になる心理は理解できるし、そこに関しては仕方がない。
「まあ、問題はないですぅ。教えた通り、教えられた通りに動けば大丈夫ですぅ」
「分かりました……やってみます!」
電話を切ると、エリザベートは溜息をついて天井を見上げます。
「まったく。あの偽ロリは当初の目的外の成果を得る事に関してだけはエキスパートですぅ」
アーシア・レイフェル。
頭のいいバカという評価がピッタリなイルミンスールの教員。
自分を正面から悪魔ロリ呼ばわりする今のところ唯一の教員ではあるが……。
欠落してる部分は多いが、あれはあれで優秀だったりするのだ。
今回とて、結果的には自分の学校の近くでひとさらいなんぞを働いている不届きもののアジトを発見している。
これを叩き潰しておけるのは、実に良い事だ。
「まあ、とりあえず減給ですねぇ」
見ず知らずの子供にまで呼ばれるのは結構キくものがあるので、減給は確定だ。
エリザベートはそう呟くと、ゆっくりと書類に目を通し始めるのだった。
「ふえっくしょい! むう、誰がが私の噂をしてる気がする……これが美少女の背負った罪ってやつか」
上半身をぐるぐる巻きにされたまま走るアーシアは、そう呟く。
あちこちで硬結びにされているためにほどけないが、そのくらいで転ぶアーシアではない。
器用にヒョイヒョイと走りながら、ひとさらい達を引き付けていく。
「オイ、マテやコラ!」
「待つかヴァカ! ヒグマ一歩手前みたいな剛毛しやがって! あ、実は素手で魚捕まえる才能とかあるんじゃない?」
「こ、このクソガキィ!」
「お頭、落ち着いて!」
どうやら、アーシアを追いかけているのはひとさらいの親玉のようだ。
「私が美少女だからって必死で追いかけてきちゃってさあ? この……」
「あ?」
「ロリコンベアがぁ。人に進化してから出直してきなさい。ま、出直してもベア部分がとれるだけだけどネ」
言うなり身を翻して走り出すアーシアを、ひとさらいのお頭は言われた意味を理解する為に立ち止まる。
「……」
「お頭? 逃げちまいますぜ?」
「お頭?」
ひとさらいのお頭はしばらく視線を宙にさまよわせて考えると、突然ハッとしたように怒りをあらわにします。
「オイ……あのクソガキ、絶対ふん捕まえて売り飛ばすぞ。とびっきりのド変態をリストアップしてやる……!」
「ヘ、ヘイお頭!」
こうして、アーシアと盗賊のお頭達は追いかけっこを続けていく。
しかし、何人か他の場所に散らばったひとさらい達もいるのだ。
救出に入った人達は、はたして間に合うのだろうか……?
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