空京

校長室

戦乱の絆 第1回

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戦乱の絆 第1回
戦乱の絆 第1回 戦乱の絆 第1回

リアクション


ゴーストイコンとの戦闘3

ガンマ小隊のメンバーは、
連携して着実に敵を倒す。

端守 秋穂(はなもり・あいお)
ユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)のコームラントは、
遠距離からビームキャノンを放ち、
味方がやられるのを防ぐ。
(さっきから聞こえている声はいったい……。
サイオニックの方なのでしょうか?)
秋穂自身、サイオニックであり、もしそうであれば、他人事ではないと思う。
「むー……ユメミ、さっきの声嫌いー!
絶対こっちの事軽く見て遊んでるよー!」
ユメミは、攻撃以外のイコン操縦全般と通信を担当している。
「……ユメミの言うとおり、
僕らはあれを差し向けた方に遊ばれているのでしょうか?」
頭部バルカンで随伴歩兵を蹴散らし、秋穂は言う。

「ゴーストイコンだかなんだか知らないし、
誰かになんかいわれなくても、存分にやってやるわよ!」
葛葉 杏(くずのは・あん)は言う。
杏と橘 早苗(たちばな・さなえ)のコームラントも、
ビームキャノンを撃ってから接敵し、
実弾式機関銃や頭部バルカンで弾をばらまく。
「えぇい、数が多い!」
運が良ければ随伴歩兵に当たるだろうというのが、杏の考えであった。
「数が多すぎですぅ」
レーダーを確認しながら、早苗は言う。

館下 鈴蘭(たてした・すずらん)
霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)のイーグリットは、コームラント2機に援護されて
前衛として切り込む。
鈴蘭は、星渡 智宏(ほしわたり・ともひろ)
時禰 凜(ときね・りん)のイーグリットと、連携を取りながら行動する。
「諦めなければ、きっと道を切り拓けるわ!」
鈴蘭は、皆を励ます。
「アンデッドはやっぱりサーモグラフィーには反応しないよね。
モニターに注意しなきゃ!」
沙霧は言う。

智宏は、中距離からの射撃で味方をサポートする。
極力、武器や間接を狙って射撃して、戦力を奪うことを重視している。
「何だか哀れな気はするが、もう眠れ、安らかに」
智宏はゴーストイコンを撃墜し、つぶやく。
(射撃するのにベストな位置取りをすること、
歩兵対策も含めて、高めの高度を保って移動することを心がけないと)
凜はさらに、風向きにも注意する。
矢は、環境の影響を受けやすそうだと予想したためである。

ガンマ小隊は、
全部で4機と比較的少数であったことも有効に作用し、
着実に連携して打撃を与えていく。



学生達はなんとかゴーストイコン軍団の多数を倒すが、
戦場にまた、謎の声が響く。

(まだまだ戦えるよねぇ?)

「ちょっと、ふざけないでよ!?」
杏は、弾切れになった機関銃を投げ捨てながら言う。
倒したはずのゴーストイコンや随伴歩兵が、
次々と復活してきたのである。

(……ナラカの魍魎か)

「コリマ校長?」
秋穂は、聞いたことのある声に反応する。

天御柱学院校長、コリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)が、
強力な超能力によって、ゴーストイコン復活の力を抑え込もうとしているのだった。

二つの大きな力が、戦場をうずまく。

結果として、
復活を抑え込むことはできたが、
味方のイコンの数が少なかったために、
シャンバラ中に複数のゴーストイコンが散らばっていく。

さらに、コリマは、
ゴーストイコンを復活させようとする力を抑えこんで
能動的な動きをすることができなくなる。


野戦病院

一方、そのころ、地上では、野戦病院を作り、
負傷者を助けようとする者達がいた。
一行は、赤十字の腕章を腕に着けている。

「大丈夫ですか!? 今病院に連れて行きますから、頑張って下さい!」
伊礼 悠(いらい・ゆう)は、
ヒールや応急手当で簡単な治療をしつつ、
重傷者は小型飛空挺に乗せて運ぼうとしていた。
パートナーのディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)も、
負傷者を運ぶのを手伝い、
禁猟区で敵を警戒して護衛を行う。
(どうしよう……今……すごく怖い……)
傷ついた人を助けたいと戦場に赴いたが、
本格的な戦いに参加するのは初めてのため、
悠は身体が震えるのが止まらない。
(何で……何で、私、こんなに情けないの……!?)
ディートハルトは、悠の肩に手を置く。
「ディートさん……」
「悠を、貴女を守る事が、私の使命なのだ。
必ず、無事に皆が帰れるようにしよう」
「はい!」
ディートハルトの言葉に、悠はうなずく。

高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は、
東西敵味方問わず、負傷者を治療する。
とはいっても、この戦場で姿の見える敵と言えばアンデッドであり、
敵を治療することにはならなかったのだが。
リカバリやヒールを多用して、ふらつく結和を、
パートナーのエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)が支える。
「私は大丈夫、まだ、怪我してる人達はたくさんいるから……」
エメリヤンは心配そうな顔で首を横に振る。
「結和さん、無理をしすぎてはいけない」
コルセスカ・ラックスタイン(こるせすか・らっくすたいん)は、
ディートハルトやエメリヤンとともに負傷者の護衛を行っていたが、
結和を気づかって言う。
「おっけおっけ、あたしも手伝うよゆーわちゃん♪」
コルセルカのパートナーのルーシェン・イルミネス(るーしぇん・いるみねす)は、
アリスキッスを結和に使用する。
「ありがとう」
「あたしもヒールやナーシングは使えるから、
遠慮しないで順番に休もう。ね?」
「るーの言うとおりだ。
君が倒れてしまっては……」
ルーシェンとコルセスカの言葉に、エメリヤンはこくこくとうなずく。
「はい。無理はしません」
(私も、コルセスカさんを護りたいから)
結和は決意を胸に、笑顔で言った。

こうして、野戦病院のメンバーは、
主に随伴歩兵として戦闘に参加した負傷者の手当てを行った。

劣勢のため怪我人が多数出ていたが、
野戦病院を用意したおかげで、被害を最小限にすることができたのだった。

ゴーストイコン回収

戦闘終了後。

ジェイコブ・ヴォルティ(じぇいこぶ・う゛ぉるてぃ)と、
パートナーのリーズ・マックイーン(りーず・まっくいーん)は、
随伴歩兵の持ち物や、年齢性別を調べようとしていた。

ゴーストイコン回収は、
天海 総司(あまみ・そうじ)
ローラ・アディソン(ろーら・あでぃそん)のイーグリットをはじめとする
天御柱学院イコン部隊が行う。

「今回出現したのが国境上空だったから、
まだよかったけど、
もし空京や海京に突然現れて襲撃されたらたまったものじゃないよ!
どうしても、敵の解析が必要だよね」
総司は、確実にゴーストイコンを回収できるようにするため、
イーグリットのエネルギー切れを避け、
なるべく交戦しないようにしていたのだった。
「鎧に剣や槍、弓で武装したイコンと言っていたから、
鎧武者のような姿かと思っていたけど、
西洋の騎士風なのね」
ローラは言う。

解析の結果、
ゴーストイコンは、
古代シャンバラやエリュシオンの戦いで使われたイコンであることが判明した。
また、随伴歩兵のアンデッドは、同時代の戦士であることがわかる。



今回のゴーストイコンとの戦いの結果、
ゴーストイコンの残骸および、
ゴーストイコンが出現したあたりから発見された古代の壊れたイコンが回収された。
これらのイコンを改修すれば使用できるようになるが、
ボロボロだったのでイーグリットやコームラントよりは強くない。



■イルミンスール森南の野戦病院

 イルミンスールの森南に設営された野戦病院。
 各地から次々と運ばれてくる怪我人への対応で、ここもまた戦場と化していた。
「待って!」
 ルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)は、怪我人を治療待ちの場へ運ぼうとしていた仲間を鋭く呼び止めた。
 医学に精通しているため負傷者の顔色や体の様子から、すぐに判断する。
「これは……おそらく内臓をやられています。治療を急ぐ必要がありますわ。この方は、早く涼介さんのところへ!」
 彼女もパートナーのラグナ・アールグレイ(らぐな・あーるぐれい)も既にヒールを行える状態に無かった。
 他にも魔法による治療を行える者は多く集まっていたが、今や野戦病院で回復魔法を行えるのは本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)だけとなっていた。
 緊急を要する怪我をしている者は涼介へと回している。その他の治療については、医学や薬学の心得があるものが、ここにある物資や設備で出来る限りの処置を行い、必要がある者は応急手当を施しヴァイシャリーやザンスカールの治療施設へと運んでいた。
 しかし、段々と茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)たちの指揮が追いつかなくなり、既に随分と前から状況は混沌としてきていた。

「消毒薬と包帯が足りないのー!」
 クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)の叫びに似た声が、同じような声の幾つも行き交っている中へ響く。
「追加の物資がどこに届いてるか、誰か知らないですかーっ?」
 彼女の声が駆け回っていくのを端に聞きながら、涼介は回復魔法を発動した。
(もう、私もそろそろ打ち止めだ。とにかく、慎重に見極めながら使っていかなければ……)
 次から次へと怪我人が運ばれてくる。
 診断を行える者が非常に少ない。
 そのため、ルディが診断を行なってくれているとはいえ、涼介も診断を行う必要があった。
 診断による振り分けと魔法による施術とを忙しく行い、精神的にも体力的にも限界が近かった。
 医療器具の扱いの方はソールに任せっぱなしだが、そちらも、やはり手が足りないようだった。
(私がパラミタとした契約はここに住む人たちが、皆幸せになることだ。そのために、持てる力の全てを使う――たとえ、自分が血の中に倒れ伏したとしても)
 涼介は笑った。
「さて、後ひとふんばりと行きますか」

 混乱による非効率が増して行く中、誰一人として手を休めることは無かった。
 全員が諦めることなく、目の前の負傷者へと集中させていた。
 東シャンバラだろうが、西シャンバラだろうが、エリュシオンだろうが、ただただ必死に救おうとしていた。