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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

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ガーディアンナイツVS空賊ブラッティローズ

リアクション


ACT1 ガーディアンナイツ、空へ行く

「ガーディアンナイツの皆さん。お集まりいただき感謝いたします」
 ツァンダ公社内に集められたガーディアンナイツたちに向かってそう言うのは髭を生やした恰幅のいい中年男――ツァンダ公社ガーディアンナイツ部門の担当者・カルバナ。
 そのカルバナは「さっそくですが」と前置きをしてから、今回集まったガーディアンナイツたちに仕事の説明を始める。
 仕事の内容は空京美術館へと空輸する古代シャンバラ王国の名品を空賊から守ってほしいというものだった。
 ガーディアンナイツたちは飛行船乗りたちから聞いていた美術品を狙う空賊ブラッティローズが現れる可能性があるこの仕事を引き受けることを決め、さっそく準備へと取り掛かる。
「今回皆さんには護衛船に乗って商船を護衛していただきたい。出発は今から2時間後となりますので、それまでは準備などを整えていただければと思っております。では、また2時間後に」
 話を終えたカルバナは、踵を返してこの場を離れていく。
 ガーディアンナイツの面々もそれぞれの行動へと移る。
「あの、すいません!」
 と、ひとりの雪のように白く美しい髪をした女の子―― 赤羽 美央(あかばね・みお)が立ち去ろうとしていたカルバナの背中に声をかけた。
「んっ、なんですかな?」
 カルバナは足を止めて、後ろを振り返る。
「実はひとつお願いがありまして、ツァンダ公社の護衛船を私たち【雪だるま王国】でひとつ貸り受けたいのですが」
「ふむっ」
 美央の申し出を聞いたカルバナは、しげしげと彼女を眺める。
 美央はまだ子供のように見えるが、雪だるま王国の女王陛下であり、その佇まいにどこか気品が感じられた。
「ダメ、ですか?」
「いや、いいでしょう。今回護衛につく4つのうちの1つをご自由にお使いください。公社へは私が話を通しておきましょう」
 カルバナはそう言うと、背中を向けてこの場から立ち去った。
「結構あっさり借りられたわね」
 美央の横からひょっこりと現れた女性はタニア・レッドウィング(たにあ・れっどうぃんぐ)。青い瞳が印象的な彼女は美央のパートナーだ。
「ハハハ! あのカルバナという人は”ロリコン”なんデスヨ! きっとそうに違いありません!! でなければ貧ニュ――ッ!?」
 高笑いと共に現れた陽気な吸血鬼・ジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)は、美央の繰り出した顔面パンチを食らって口を塞がれる。
「ジュセフさんはちょっと黙っててください」
「ねぇ、みお姉。”ろりこん”ってなに?」
 と、美央を見上げる小柄な獣人の男の子・エルム・チノミシル(えるむ・ちのみしる)は首としっぽを傾げてそう訊ねる。
「エルムはまだ知らなくていいのよ」
 そんなエルムの頭を撫でてタニアが言った。
「えーっ、なんでだよタニア! 僕だけ知らないなんてずるいじゃないか!」
「静粛に!」
 と。美央が声をあげ、皆は口をつぐむ。
「これより私たち雪だるま王国はガーディアンナイツとして行動し、空賊ブラッティローズより雪だるま的美術品を取り返し、あわよくば敵飛空船をいただいちゃおうと思います。いいですね?」
 パートナーたちは美央の言葉に頷いて答える。
「よし、ではこれより借り受けた護衛船――いえ、”飛行船雪だるま号”の元に王国民の皆さんと一緒に見に行きましょう!」
 美央はそう言うと雪だるま王国民たちに声をかけて、護衛船のある場所まで向かっていった。



「ほうっ、これが雪だるま号ですか」
 美央に連れられて護衛船が置かれた飛空船ドッグまでやってきた雪だるま王国の面々の中でそうつぶやくのは【雪だるま王国騎士団長】ことクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)
「うむっ、なかなかに立派であるな」
 そんなクロセルの頭に乗っかっているチビッコドラゴニュート・マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)は腕組みをして満足そうな表情を浮かべている。
「むっ、マナ様! そのような者の頭に乗るのはおやめくださいと何度言えばお分かりになられるのですか!?」
 クロセルの頭に乗ったマナを見て、慌てて引き離したのはシャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)
「ふぅ、マナ様に危うくバカがうつるところでした」
「シャーミアンさん、それはどういう意味ですかね?」
 口元だけに笑顔を浮かべながら、クロセルが仮面の奥の瞳を細めてシャーミアンを睨みつけた。
「きちんと説明しないとわからないとは……クロセル殿はやはりお・バ・カですねぇ」
 対するシャーミアンも口元だけに笑みを浮かべながら、クロセルの視線を真っ向から受け止める。
「ふたりともくだらない喧嘩はやめるでござるよ」
 と、そんなふたりの間に割って入ったのは動く雪だるま・童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)
「まったく、貴殿らは雪だるま王国の王子である拙者に喧嘩の仲裁をさせていることを王国民として恥ずかしいと思わないのでござるか?」
「思いません」
「右に同じく」
「……拙者、王子としての自信をなくしそうでござる」
「ドンマイ、スノーマン」
 ガックリとうなだれているスノーマンを励ますマナ。
 そんなクロセルたちを横目に、美央が護衛船に上っていく。
「美央、一体なにをする気デスカ?」
 それを見ていたジョセフが不思議そうに訊ねる。
「えっと、せっかく船を借りれたからこの船に雪だるま王国の国旗を海賊旗のように突き立てようかと思って……」
「ダメダメ、ダメよ美央ちゃん」
 と、タニアが美央に言った。
「ダメですか?」
「そうね、今回は目立ったりしない方がいいと思うわ」
「……そうですか」
「そんな顔しないで美央ちゃん。あなたには他にやってもらいたいことがあるんだからさ」
「えっ、なんですか?」
「うんと、この護衛船……雪だるま号だっけ? それを空で目立ちにくくするように迷彩塗装したいのよ。材料は用意したんだけど時間がないでしょ? だから王国民のみんなにも手伝ってくれるように言ってほしいのよ」
「ハイ、わかりましたタニアさん!」
「いい返事ね。じゃあよろしく頼むわよ女王陛下」
 美央はたたたっ、と護衛船の上に駆け上がるとそこから王国民たちに塗装の手伝いをしてくれるように呼びかける。
「はははっ、美央さんの頼みなら聞かないわけにはいきませんね。それに塗装なんかは得意ですからまかせてください!」
 そう言って夏の太陽も顔負けのスマイルを浮かべるのはルイ・フリード(るい・ふりーど)
「うわっ! なっ、なんて眩しいスマイル!? さすがはルイさんだ!!」
 そんなルイ☆スマイルを見て、驚嘆するのはエル・ウィンド(える・うぃんど)
「はははっ、誰かと思えばエルさんか。一緒に仕事をするのは初めてだったかな? よろしく頼みます!」
「HAHAHA、こちらこそ!」
 エルとルイは笑い合いながらがっちりと握手を交わす。
「なんだか面白いことになりそうな予感」
 そんなふたりの姿をみてそうつぶやくのはルイのパートナーシュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)
「僕はなんだか不安だ」
 だがルイのもうひとりのパートナーリア・リム(りあ・りむ)はセラとは違う思いを抱いているようだ。
「エル、ルイ様と遊んでないでこっちを手伝ってよー!」
 と、エルの相棒ホワイト・カラー(ほわいと・からー)がタニアから受け取った塗料の入った缶を両手で重そうに持ちながらそう言った。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
 そこにすかさず現れたのは鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)
 洋兵はホワイトの手から塗料缶をさりげなく奪って片手で持つと、ニコリと紳士的な笑みを浮かべる。
「あっ、どうもありがとうございます」
 ホワイトは触角のように生えたアホ毛をうれしそうにピコピコさせながら洋兵にお礼を述べた。
「ははっ、気にしない気にしない。おじさんは重いものを持つのが大好きなんだからね」
「ほーっ、そうなんですか。では、私たちのもお願いします」
 と、洋兵の義理の娘である鬼崎 朔(きざき・さく)が後ろに現れ、洋兵に塗料缶を差し出す。
「ふっ、可愛い娘の頼みだ。断るわけにはいかないな」
「さすがは朔様のお義父上! 優しいであります!」
「あまり本当のことをいうなよスカサハちゃん」
 洋兵は朔のパートナースカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)におだてられ、ニヒルな笑みを浮かべながら塗料缶を朔から受け取った。
「では私たちも塗装の仕事をはじめましょう」
「了解であります、朔様!」
 そう言うと、朔たち塗装の仕事に励む雪だるま王国民たちの元へ向かう。
「ちくしょう、なにが”女王のために戦え”だよ。こんな仕事までするなんて聞いてねぇよ……めんどくせぇ、帰りてぇ」
 だが、朔に強制的に連れ出されてここまでやってきた引きこもりのヴァルキリーラインハルト・メフィストフェレス(らいんはると・めふぃすとふぇれす)は文句をたれて動こうとしない。
 そんなラインハルトを見た朔が檄を飛ばす。
「ラインハルト! あなたもこっちに来て仕事を手伝いなさい!」
「ちぇ……ハイハイ。わかりましたよ」
 朔に言われ、ラインハルトは渋々といった感じで重い腰を上げた。
「んっ、そういえばアンドラス様の姿が先ほどから見えませんね?」
 と、スカサハが朔のもうひとりのパートナーアンドラス・アルス・ゴエティア(あんどらす・あるすごえてぃあ)の姿がないことに気が付いた。
「あれ、本当だ。まったくどこに行ったんだろう?」
 朔とスカサハがアンドラスの姿を探して辺りを見渡す。
 そのアンドラスはというと――。
「クククっ……地味な仕事は貴様たちでせいぜい頑張るんだな」
 ブラックコートをはためかせ、王国民たちの姿を雪だるま号の隣にある護衛船の甲板から眺めていた。
「さて、私たちもがんばりましょうか」
 よいしょ、と塗料缶を持ち上げながらそう言うのは四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)
「あっ、唯乃! 運ぶの私もお手伝いします」
 そんな唯乃に手を差し出したのはパートナーのエラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)
「2人より3人、私もお手伝いします」
 さらにフィア・ケレブノア(ふぃあ・けれぶのあ)も助けに入る。
「エル、フィアありがとう」
 小柄な3人は力を合わせて塗料を運んでいくのであった。