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蛙の代わりに雨乞いを……?

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蛙の代わりに雨乞いを……?

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4.襲来!白き魔獣たち 〜雨が嫌いなイカしたアイツ〜

それはもう――ある種熾烈極まりない戦争が如き風景だった。
空と言う空、視界と言う視界全てが、白く小さなてるてる坊主たちによって埋め尽くされているのだから。
「そら! 人間たちを止めるんだ“テル”」
「負けるな“テル”! 雨を降らせたら負け“テル”よ!」
 てるてる坊主たちの怒声がこだます辺り一帯を、何とか切り抜けながら進む一行。
「ぬぅ…これでは前に進めん…!」
 エヴァルトの悲痛な声は、しかし虚しく虚空へと消える。
「もう! どうにかしてよ、こいつらぁ!」
 セルファは半ば半泣きになりながら、懸命にてるてる坊主たちの体当たりを両の手で防いでいる。
「厄介ですね…いっそ魔法で」
「ってあれ…なんかあそこだけ妙にてるてる坊主が…」
 真人が辛抱ならず、てるてる坊主を攻撃しようと杖を構えた時、豊和が何かを見つける。
彼が見たのは、一か所だけいやにてるてる坊主が群がっている箇所。一同がよくよく目を凝らすと、その群がりの中心には――変熊仮面が立っているのだ。
「俺様は『美の伝道師』変熊仮面だ。さぁ、貴様等、もっと俺様を見るがいい! そして俺様の美を堪能するがいい!」
「いやいやいや、彼、一体何を…」
 その光景を間の間たりにした英虎が思わず突っ込みを入れた。
「借りてたタオル、肩にひっかけてるよね。なんだかお風呂上り見たい…あは、あははは…はぁ…」
 半ば自暴自棄、と言った様子で、ただただ苦笑を浮かべる鳳明。
「俺たちに理解出来んもんを、この得体の知れないてるてる坊主が理解出来るわけが――」
 言いかけた竜斗はしかし、そこで言葉を止めた。理由はただの一点のみだった。
「う…美しい“テル”!」
「なんて神々しい輝き“テル”か…」
「寧ろこれは、もう神に等しい“テル”!」
「嘘だぁ…」
 思わずアキが呟く。てるてる坊主が群がっている変熊仮面が、まるでどこぞの新興宗教の教祖扱いを、てるてる坊主から受けているのだから。
「どうやらこの子たち、あの人の言う美しさ、がわかったらしいですね…」
 ユリナが呟き、思わず彼らを凝視している。と、彼女の額に思い切りてるてる坊主の内の一体が衝突し、彼女が転倒した。
「く、不意打ちとは卑怯なっ!」
 どこからともなくバスターソードを取り出し、構えを取るミリーネが叫んだ。
「え、それはちょっと…」
 隣でいきり立つ彼女を見て、表情を固めるリゼルヴィアを余所に、ミリーネが初動を見せ、攻撃に転じようと踏み込んだ――途端。
「はい、ストーップ」
「なっ!」
 肩口からの振り下ろしによる斬撃を繰り出そうとした彼女はしかし、突然現れた彼によって動きを制約させる。完全に停止した状態から、ゆっくりと手にする武器を下ろす。
「…北都殿、何故止める。私の友が攻撃を受けたのだ……成敗して当然であろう!」
 リゼルヴィアの横をすり抜け、武器を敵を殲滅しようとするミリーネの前に突如として現れたのは、北都。
「ま、確かにむかつくね。これ」
 手の甲で飛来するてるてる坊主を振り払いながら、北都はそんな事を言う。
「駄目ですよ北都、ウォウルさんはてるてる坊主は倒してはいけない、と」
「わかってるって」
 彼の後を追って現れたリオンに笑顔を向ける北都。
「うわっ! キモっ!」
「…確かに気持ち悪いかも。これだけのてるてる坊主は、ねぇ…」
 更にリオンの後を追ってセレンフィリティ、セレアナも合流する。
「いやぁ…しかし凄いのぉ…」
「だね、あれだけの剣撃の前に飛び出ちゃって。怖くないのかな…」
「いやそうでのうて。あの女子たちの格好が、じゃ」
「うん、着眼点がおかしいぞエロ本」
 どうやら様子を伺っていたのだろう、房内と白羽も彼等の前に姿を現す。
「あれ、あたしらだけじゃなかったんだ?」
「みたいだねぇ…ま、僕たちと多分目的は一緒だと思うけど」
 セレンフィリティ、北都が話をしていると、雅羅がようやく彼らの存在に気付く。
「どうしたのよ、六人で応援に来てくれたの?」
「そういう事になりますね」
「えぇ、とは言え、私たちは応援よりも伝令って感じかしら?」
「わらわたちは応援じゃ。かわゆい女子限定の」
「違うから。みんなの、ね」
 リオン、セレアナに続いて房内、白羽が返事を返す。
「みんな、聞いてるかな? 事情は今は話していられないから端的に言うと、このてるてる坊主、一体でも倒しちゃいけないそうだよ」
「だから適当にあしらって、早くあの祠の中に入れ、だってさ!」
 北都とセレンフィリティ、が一同に向けて説明する。
「わかりました! なら雅羅さん、此処は貴方があの祠に向かうべきです!」
 いち早く返事を返したのは豊和だ。彼は懸命にてるてる坊主たちの突進を耐え凌ぎながら、懸命に叫ぶ。
「此処は私たちで何とかしますから、その内に雅羅ちゃんは祠に!」
「てるてる坊主はボクたちに任せていいよ!それに――」
 柚に続き、三月も叫ぶ、が、後半は笑いを堪えながら、目線を彼の方へと向けた。
「彼が一番、てるてる坊主ひきつけてくれてるし、ね。っぷは!」
 変熊仮面の方を向いた彼は、しかしどうやら辛抱できなかったらしく、最後は噴出してしまった。
「……あれが雅羅さんを失神させちゃった人かぁ…」
 北都がまじまじと見つめる。
「なんというか、奇抜な方ですね」
 リオンが真剣な顔つきでコメントした。
「でもさぁ、なんか腰に巻いてるのちょっと可愛いよね」
「他は真っ裸だけどね」
 これまた真顔で、セレンフィリティとセレアナが続ける。
「あれは女子じゃないからなしじゃ」
「いや、女の子でもあれは無理」
 房内と白羽は若干きつい物を見た、と言う表情で呟く。彼らのリアクションをさて置いく事にした雅羅は、先程分かれる前にウォウルから手渡された懐中時計を握りしめた。
「皆頑張ってくれてる…私がやらないと…!」
 そう言うと、彼女は意を決しててるてる坊主の群れの中へと飛び込んで行く。
その様子を見届けたセレアナが、飛びかかってくるてるてる坊主を叩き落としながらウォウルに連絡を取り始める。
「彼女、ちゃんと祠に向かったわよ。そろそろ用意、しておけば? って、ちょっと、あんたどこ触ってんのよ」
 胸にぶつかってきたてるてる坊主を睨む彼女。
「あ、ご…ごめんなさい“テル”」
「いい度胸じゃない…?」
「て、テルゥ…!」