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リアクション
落ちていくピーターをウェンディが追いかけていきます。そして、受け止めて地上に降りました。
シオンが追いかけて来て、石化解除薬をピーターに施します。すると、ピーターが目を開けました。ピーターは立ち上がって言いました。
「まだ、終わってない!」
「ピーター!」
ウェンディは変身を解くと、ピーターを抱きしめて叫びました。
「もうやめて、ピーター!」
すると、ピーターは言いました。
「どうして止めるんだよ。君だって、男に振られて人生に絶望したとか言って、あの世界から逃げようと……1人で死のうとしていたじゃないか」
「! ……どうして、それを知ってるの?」
その言葉にウェンディはショックを受けます。確かに、ウェンディは家出した後、死のうとまで思いつめていたのでした。
「僕は、なんだってお見通しさ。特に、ウェンディ、君のことはね。なんたって、君だけの魔法使いだから」
「茶化さないで!」
「やれやれ、本当に君は余裕が無くなっちまったんだね。周りを見てごらん、水晶の中に色んなシーンが映ってるだろ?」
「ええ……」
たしかに水晶の中には町並みや、どこかの家の中、学校や、山や砂漠などの色々な風景が映っています。
「それは、君たちが行きてる現実世界の風景なんだよ」
「現実世界?」
「ああ。この水晶には、過去から現在にかけての現実の、ありとあらゆる風景を映す事ができるんだ。見たい場所をいつでも映す事ができる。……未来だけは見えないけどね。それで、ボクはここから時々、君の事を見守っていたのさ」
「そういうことだったの……」
ウェンディは納得しました。
「しっかし、見れば見る程、大人になるって本当に恐い事だよな。なあ、ウェンディ。死のうとまで考えるぐらいなら、いっそ君もここに来たらどうだい? ここで、子供達や俺と一緒に、ずっとおもしろおかしく暮らそうぜ。どうせ、僕も向こう側では大人にはなれない事だし……」
「向こう側では大人になれない?」
その言葉に、ウェンディは首をかしげました。
「一体どういう意味?」
と、突然、アイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)が言いました。
が言いました。
「ジジー……ピーター、もしかして、あなたはマイク?」
「え?」
唐突なその言葉に、ピーターがぎくりとします。
アイリスは、淡々と言葉を続けました。
「『マイク=ピーター・パン』っておとうさんが、言ってた……」
「お父さん?」
ウェンディが首をかしげます。すると、アイリスが言いました。
「ピーター。ここへ来る直前のドロシーの部屋、水晶に映せるか?」
「え? ああ……」
ピーターが、何かを念じると、アイリスの真後ろの水晶の中にドロシーの部屋が映し出されました。部屋の中ではドロシーがすやすや眠っていて、その前にワンダー婦人が疲れきった顔で座っています。そこへ、数名の白衣の若者(司とシオンとアイリス)が入ってきました。先頭にいるのは、パラケルスス・ボムバストゥス(ぱらけるすす・ぼむばすとぅす)です。
「これが、お父さん」
水晶の前でアイリスがパラケルススを指差して説明しました。
画面の中で、パラケルススがワンダー婦人に言いました。
『偶然通り掛った医者兼錬金術師のフィリップ・テオ・オレオール(偽名)だ。話は聞かせて貰った! ……が、この話にはいくつか矛盾を感じる。
まず、『病弱な少年マイクが魔法の力ですごい薬(夢の実)を作ったという点が些か不自然だ』次に『ウェンディくんの「夢の実」ではなく「夢を見る薬」を沢山持っているという発言が明らかに不自然だ』
などの理由から、夢の世界の話が「ウェンディくんの理想郷話」もしくは「脚色された思い出話」に聞こえた。
もしかすると、マイクもピーターも存在せず、マイクはウェンディの理想の産物であり、同じくピーターも理想の産物とするならば、あるいは『マイク=ピーター・パン』ではないかと俺は思う。
おっとそれから、医者としては(ココ強調)ワンダー婦人の看病もしとかなきゃな♪ 娘さんが目覚めた時、お母さんがそんなんじゃダメでしょ?…つーわけで、俺ぁ現実に待機しとくぜ』
すると、画面に映し出されたアイリスが言いました。
『………ジーーッ…...おとうさん…...女癖、悪い……』
そこで、映像は途切れました。
「......ジーーッ......おとうさん......女癖、悪い......」
アイリスがもう一度いうと、ピーターが笑い出しました。
「ふ……おもしろい推理じゃないか。だが、残念な事に、ここはウェンディの作った世界でもなければ、マイクも架空の人物じゃない」
「それと、ごめんなさい。「夢を見る薬」というのはただの私の……というか天宮の……言い間違いなの(本当にすいません)」
ウェンディが謝ります。
「しかし、『マイク=ピーター・パン』というのは正解だ。お見事だな!」
そういうと、マイクは変身を解き、緑色の髪の美しい青年へと変化しました。
その髪の色、その瞳の色、そしてなによりその美しい容貌には見覚えがあります。
「マイク……確かに、マイクだわ!」
ウェンディは叫びました。
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