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3章 島の探検
 「見てください! 虹があんなに近くに見えますわ!」
 ルル・フィーア(るる・ふぃーあ)が青色のロングウェーブをなびかせて、はしゃいでいます。ルルの目の前には、巨大な七色の虹が、崖から崖へと渡っています。その不思議な虹はいくら近づいても消える事なく、その場にどっしりと座って輝いて、その下には轟々と滝が流れ落ちています。。
「私、あの虹をくぐりたいですわ!」
 ルルが言うと、
「私もくぐりたいです!」
 と、ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)が大はしゃぎでルルを追って飛んで行きました。
「やれやれ……」
 長原 淳二(ながはら・じゅんじ)は半ばあきれ顔で二人を追っていきます。
 虹の橋をくぐってしまうと、ルルは引き返して虹を触ってみました。虹は温かくて、冷たくて、柔らかくて、硬くて、とても不思議な手触りがしました。
「私も触りたいです!」
 ミーナも虹に触ってみます。
「二人とも! 早く。はぐれてしまいますよ!」
 淳二がこちらを向いて二人をせかしました。仲間達の乗っているフックの海賊船は、遥か彼方に行ってしまってます。
 一行は、今、ピーター・パンを探してネバーランド上空を飛行していました。仲間達のほとんどは船に乗って進んでいるのですが、一部の者は自ら空を飛んで進んでいきました。
「確かに海賊船もおもしろいですわ。でも、せっかく自分で飛べるチャンスですのに、存分に堪能しないのはもったいないですわ」
 とは、ルルの主張。
「大さんせー! です」
 とは、ミーナの言葉。
「それはいいけど、二人とも道草食い過ぎです!」
 淳二は胃を押さえながら言いました。何しろ、ルルもミーナも、めずらしい物を見かけるたび、いちいち近づいて触ってみなければ気が済まないのです。ヒヤヒヤするわ、焦るわで、淳二の胃はキリキリしています。
 虹の橋をくぐり抜けると、眼下に広い平原が見えてきます。それは、緑色や、ピンクや、紫に染まる、とても幻想的な風景で、その真ん中を大きな川が流れています。しばらく飛んで行くと、また崖にさしかかり、崖と崖の間を一行は進んでいきました。
 しばらくすると、ルルが叫びました。
「あら? 不思議ですわ。あんなところに光る花が咲いていますわ」
「光る花ですって?」
 ミーナが目を輝かせます。
 確かに崖の途中に何かが光っているのが見えます。
「私、とって来ますわ」と、ルル。
「私も行きます」と、ミーナ。
「やれやれ、また始まった」と、淳二。

 ミーナとルルは、光る花の咲いている場所まで降りていきました。しかし、そこにあったのは光る花ではありませんでした。それでも、降りて来たのは正解でした。なぜなら、花に見えたのは、ティンカー・ベルだったからです。ピーター・パンの隠れ家から逃げ出したティンクは、飛び疲れて崖の途中に咲いている花びらの中で一やすみしているうちに眠ってしまったのでした。そこを、ルルとミーナに見つかったのです。
「ティンカー・ベルですわ……」
 ルルが言いました。
「はい。この子がいればピーター・パンの居場所にたどり着けるかもしれません」
 ミーナがうなずきます。
「捕まえて、みんなの所に連れていかなくてはいけませんわね」
「ハイ。起こさないよう、そっと連れていきましょう」
 ルルはそおっと手を伸ばしました。起こさないように、驚かさないように……。ところがルルが顔に触れた途端、ティンクはパチリと目を覚ましました。そして、二人に気がつくと、悲鳴をあげて逃げ出しました。
「ああ……! 逃げちゃいましたわ!」
 ルルが悔しそうに言います。ミーナは、ルルに言いました。
「がっかりしないで下さい。私に作戦があります」
 その頃、淳二は崖の上に登って休んでいました。そこに、ティンクが飛んできます。
「ああ!」
 淳二は驚いて声を上げました。
「きゃっ!」
 ティンクも驚いて叫びます。そして、慌てて淳二の側から逃げ出しました。
「ティンカー・ベル! 待ってくれ!」
 淳二が後を追いかけます。ティンクは崖の間を右へ左へ、巧みに淳二の手をかわしながら逃げていきます。小さい上にすばしっこくて、なかなか捕まえる事ができません。
 その時です。ティンクの目の前に、何かが現れました。それは、ピンク色の愛らしいウサギのぬいぐるみです。その愛らしさに、逃げるのも忘れてティンクは止まりました。
「なんて、かわいいウサギちゃん」
 すると、ぬいぐるみが言いました。
「ティンクちゃん。お友達になりましょう」
「まあ、喋ったわ。かわいらしい」
「一緒に遊びましょう」
「いいわよ? 何をして?」
「そうだね。あやとりがいいね!」
 後ろから淳二が現れて答えます。そして、ティンクを掴むと、その体を糸でぐるぐるに縛りました。動けなくするためです。
「騙したわね!」
 ティンクがキーキー叫びます。
「許して下さいね、ティンクちゃん。私たちには、どうしてもあなたの助けが必要なんです」
 ウサギのぬいぐるみは頭を下げて謝ると、変身を解いてミーナの姿に戻りました。そのミーナに、淳二はティンクを渡します。
「あとは、二人に任せた。」
「まあ、かわいい妖精さんですわね」
 ルルがミーナの手の中のティンクを見て、うっとりと言います。実際、ティンカー・ベルは、とてもかわいらしかったのです。ミーナはティンクを大事そうに抱えると、淳二達と共に船に向かって追って飛んで行きました。