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リアクション
第7章 品評会――その3
休憩と乱入を挟んでのんびりと進行するイコン品評会も、いよいよ終わりを告げようとしている。
品評会最後の参加者は斎賀 昌毅(さいが・まさき)とカスケード・チェルノボグ(かすけーど・ちぇるのぼぐ)のコンビである。
「いやはやまさかこんな面白そうな会を開いてくれるとはね。つい最近改造が終わったばかりの俺のイコン、ちょうど誰かに見せびらかしたくて仕方なかったところだったんだよ。いやぁ、まさに渡りに船ってやつだな!」
その昌毅が見せびらかしたがっているイコンこそ、コームラントをカスタマイズした【ナグルファル】である。そのベースとなっているのは確かにコームラントのそれであるが、全体を濃紺で染められた機体には、両腕、両肩、さらに腰の左右両側にビームキャノンが取り付けられているというものだ。
「見ろよこのビームキャノンの数! 元から砲撃・支援用の機体だったコームラントをさらに砲撃特化にしてやったぜ!」
しかもこの6門のキャノンはそれぞれ独立してエネルギーチャージと発砲が行えるという。もちろん同時発射も可能だ。
「まあそのために、それぞれの部位にジェネレーターや装甲が追加されて、もう機動力なんてどこへやら、って感じだな」
そう、機動力は犠牲になったのだ……。どこからともなく、そんなセリフが聞こえてきた。
「濃紺に塗って、追加装甲もつけて、ただでさえ威圧感あるってのに、6門ビームキャノンだぜ? もうどれだけ相手を威圧すればいいってんだよ、なぁ!」
あまりにぶっ飛んだカスタマイズを施した自らの馬鹿さ加減につい笑いがこぼれてしまう。
ひとしきり笑うと、昌毅はナグルファルに乗り込む。
「それじゃあ最終調整テストを兼ねて、ちょっくらパフォーマンスさせてもらうな!」
言いながら昌毅はハッチを閉じ、コクピット席に座る。
「まったく、はしゃぎおってからに……。いくら砲撃特化とはいえ、それが戦闘でうまく使えるとも限らんだろうが」
サブパイロットを務めるカスケードが昌毅に向かってそうぼやくが、当の昌毅はすまして笑う。
「だからこそ今からテストするんだろう? 少なくとも固定砲台として機能できるってんなら、それで十分ってもんだ。さすがに機動力重視の相手には弱いだろうが、それ以外の連中ならどうにかなる」
以前、天御柱学院に大型のイコンが攻め込んできたことがある。完全な重量級の相手で、攻撃を命中させるだけなら誰にでもできたが、明確に弱点をつかなければなかなか倒せないような相手だった。仮にもそういった敵を、このナグルファルが吹っ飛ばすことができるのならば、
「それはそれで、役に立つんじゃねえか?」
「ほう、まさか今後の学院のことを考えているとは思わなかったな」
「……バカ言え、勘違いするな。俺は俺のしたいようにしてるだけでなぁ――」
「わかったわかった。では、そのやりたいことのためにも、軽くぶっ放してみるとするか」
「いいなぁ、どうせ武器を持つならアレくらいやりたいよね〜」
6門のビームキャノンから次々と光の槍が飛ばされるその光景に、要はため息をつくばかりである。
「確かにな。やっぱでっかいモノは興奮するよな!」
「するする〜!」
「……イコンの話ですよね?」
誤解されそうだからもう少し言葉を選べ、とはアレックスの口からは出てこなかった。
「しかし完全に重量級で、本当に動きが鈍そうだな。俺はああいうのも好きだけど……」
「動きが鈍いならその分装甲を厚くすればいいよね。的になるのは間違いないんだし」
「……お前にしちゃまともな意見じゃねえか、要?」
普段から非常識なことばかり言う要の口から、どちらかといえば「まとも」と呼べる異見が出てきたことにアレックスは驚きを隠せない。
「アレックス〜、重くなったら動けなくなる、ということはその分攻撃が当たるなんて普通でしょ〜」
「ああ、そういう風に話が行くわけね」
そういえば要という女は、「これが普通だ」という言い方を最も好むんだった。今回はそれがたまたままともな方向に行ってくれただけのことか。内心で少しばかり落胆するアレックスであった。
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