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【第二章】11

 事件が起きた時にパートナー樹月 刀真(きづき・とうま)が夕食の材料を買いだししているのを思い出した漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)玉藻 前(たまもの・まえ)、そして封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)は、スーパーへ向かった。
 白花が白虎の背に乗り蒼い鳥と共前を行くのを、玉藻のマジックブラストがサポートする。
 月夜は自分を含めた三人を剣の結界で護りながら進み、無事一階へと辿り着いた。
 そこで偶然雅羅と合流した。
 その後ろで何やらお姉様らしき二人が強盗を調教中だったが、そっとスルーした。
「んーと刀真はスーパーのはず……」
 歩いている間、雅羅は三人の姿に注目した。
「その下着、可愛いね」
「あ、でしょー。白花とお互いに選んだんだ。オソロオソロ」
 胸をはった月夜は白いレースのビスチェとショーツ、それにストッキングをガーターベルトでとめている。
 白花は同じセットで色違いの黒だった。
「でもこのランジェリー、透けてませんか? 凄く恥ずかしいんですけど」
「そう? スタイルいいし、似合ってるわよ」
 雅羅のアドバイスにまんざらでもなさそうな白花の胸元を見て、月夜は少ししゅんとする。
「む〜……」
 そんな彼女たちの姿を見ながら、玉藻は満足そうにニコニコしていた。
「……うん二人とも良い、我が褥で愛でたくなる」
 因みにそんな事を言っている彼女は常に和装で、下着無し派だった。
 そんな風に暫し物騒な時を忘れて、和やかに歩いていた時だった。
「刀真!」
 月夜達は目に入ったパートナーに安堵の声を上げるが、安堵するのはこの時ではなかった。
 刀真の目が戦いのその時の色に変化していたからだ。 
 月夜は知っている。
 心を凍てつかせ、感情を冷ましたあの目。
 今の刀真には他人を敵か、味方か。その他でしか判別しない。
「……無事か?
 良かった、安全な場所へ移動しよう。強盗は俺が対処する」
 言いながら月夜から光条兵器を抜こうとする刀真を、月夜は制した。
「だめ」
 刀真は彼女の目をじっと見つめるが、その決意が固い事を知ると溜息をついて彼女から離れた。
「分かったよ……じゃあ素手で何とかする」
 言ってずんずんと進んでしまう彼の背中を見ながら、白花は小声で月夜に聞いた。
「刀真さん、この格好がはしたなくて呆れられたのでしょうか?
 なんだか反応が……」
 心配そうな白花に、月夜は眉を下げながら曖昧な笑顔を見せた。
 
 月夜のカン――考えは当たっていた。
 敵とあたった刀真は冷静に動いていた。
 見切った攻撃の威力を殺すために素早く踏み込み、死角に周り込んだり分身をしたりしながら戦う。
 例え武器が無かろうと百戦錬磨の戦士には余り関係無い事だった。
 そして死角に周り込む事で出来た隙を突いて手刀で確実に首筋を狙いを定めようとしたのだ。
 しかしふと、頭に月夜の言った言葉が思い出された。
 ”だめ”と。
「あれはこういう事だったのか」
 刀真は溜息をついて、代りにしびれ粉をまき敵を無力化した。

 戦いが済んだ所で、日常を取り戻した刀真は改めて月夜達を見た。
 上着をはおった雅羅の姿に、何かを思い出したようだ。
 頬を赤くし、照れながら無言でコートを脱いで二人の下着姿を隠すようにかけてやった。
 ところで玉藻が後ろから刀真に抱きついた。
「刀真!」
「た、玉藻お前何処触って!!」
 突然の事に雅羅は両手で目を覆う。
「ふふっいい反応だ」
 言葉通り玉藻は刀真の”反応”を確かめていたのだ。
「月夜に封印の巫女、良かったな。
 刀真はその下着を気に行ったようだ」

 その日、事件が無事集結後に二人の少女は真っ先にレジカウンターへ向かって行ったという。
「これください!!」