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【第二章】14

 その頃、
 三階にフレンディス・ティラを助けにやってきたベルク・ウェルナートは、無事に悪漢達からフレンディスを助けだしていた。
 場所ば場所だけに入るのに戸惑った。
 そしてフレンディスに誤解されやしないかと恐れていたものの、当のフレンディスは男に素肌を見せてしまったというだけで小さく丸まって泣き続け、それどころではない状況だったのだ。
「マスター……私……殿方に肌を晒してしまいました……」
 子供の様に泣きじゃくる彼女を自分のローブに包みながら胸に抱え、内心嬉しい様な、しかしフレンディスの気持ちを思えば可哀想なような複雑な気持ちだ。
 それにしてもいや、可愛い。
 ここへくるまでは「フレイを泣かした強盗は一人残らず叩きのめしてやる! 地獄に落ちとけ!」
 なんて血気盛んに思っていたが、ベルクは今や「もーどーでもいいやー」な気分だった。
 フレンディスをぎゅっと抱き寄せてひとしきり頭を撫でてから、ベルクはある事に気付いた。
「レティシアは?」
 
 未だにしゃくりをあげているフレンディスの手を引きながら、見つけたレティシアは強盗団に囲まれていた。
「レティシア!」
 思わず叫んで仕込み杖に手を掛けた所で、ベルクは何か妙な事に気が付いた。
 強盗達は皆、レティシアの足元に正座しているのだ。
 こっそり近づいて行くと、驚くべき声が聞こえてきた。
「もっと、もっと罵ってくださいレティシア様!」
「おいてめ! 次は俺の番だぞ!」
「レティシア様! 今度はわたくしめに罰を!!」
 レティシアのドの付くサディスティックな眼差しに、男達は歓喜の声を上げている。
 そんな彼等を少しも表情を変えずに見つめると、レティシアはこう吐き捨てた。
「そんなに罵られるのが嬉しいのかこの変態が!
 変態の上に強盗如きに身を窶すとは……つくづくつまらん男共だ」
「ああ!」
「レティシア様!」
「この蛆虫共め!!」
「レティシア様!」「レティシア様!」「レティシア様!」
 レティシアに蔑まれる事に快感を覚えた強盗達は彼女にすっかり手なずけられていたのだ。
「マスター? レティシアはいたんですか? 大丈夫なんですか?」
 心配そうに後ろから覗きこもうとしたフレンディスを、ベルクは慌てて抱え込んだ。
「だ、大丈夫だ! 大丈夫だからちょっとあっちに行ってような!?」
 反射的に”アレ”は見せたらまずい、と思っての行動だった。
 ベルクは目を潤ませたまま不思議そうにしているフレンディスを連れ、静かに、徐々にその場を離れて行った。