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リアクション
第9章 やっぱりショーでしょう
「ふぅ…… 遊園地巡りも楽しいけど、カフェで一息のこの時間もいいものよね」
「アトラクション巡りに疲れたら、このカフェ! なぁんとここはお茶を飲みながらショーを楽しむことができるんだよ」
珈琲を飲みながらほっと一息つく奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)に、雲入 弥狐(くもいり・みこ)がえへんと胸を張る。
「せっかくの夢が溢れる遊園地だもん。休憩の時間まで、有効に活用しなくちゃね」
「弥狐に強引に連れて来られたんだけど、来て良かったわね」
「でしょでしょ。ここはとっても楽しいんだよ」
何故か自分のことのように自慢する弥狐。
「そうこう言ってるうちに、ほら、もうじきショーが始まるよ!」
(そっか、ここでショーが見られるんだ。ラッキーだったなぁ)
デスティニーランド名物のワッフルを食べていた崎島 奈月(さきしま・なつき)は、隣の席から聞こえてきた沙夢と弥狐の会話に思わず顔を綻ばす。
初めて来た場所。
初めて入る施設。
初めてだらけのこの場所で、あっちへふらふらこっちへふらふら彷徨っていた奈月は、ワッフルの甘い香りに誘われてふらふらとこのカフェに入った。
早速いくつかワッフルを買って食べていた所に、ショーの話。
(えへへ。なんだか今日の僕、ツイてる気がするなぁ)
体中に広がる嬉しい予感と一緒に、甘いワッフルを飲み込んだ。
シュワー!!
一斉に水柱が上がった。
同時に始まる音楽。
水柱が収まった時、水上ステージには一人の少女が立っていた。
ステージ衣装を身につけた、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)。
「みんなー、こんにちは!」
いつの間にか集まってきた観客たちの間から、「こんにちは」の声。
「今から、楽しいショーがはっじまっるよー! まずは、お友達の紹介!」
両手をメガホンのように口に当てるリアトリス。
「おーい、サフランー、狼プリンー!」
「キュイー♪」
「ウォンウォン!」
水中から白い翼をもつイルカの姿をしたサフラン・ポインセチア(さふらん・ぽいんせちあ)、舞台袖からは狼の姿の獣人、スプリングロンド・ヨシュア(すぷりんぐろんど・よしゅあ)が飛び出した。
「紹介するね。サフラン!」
「キュキュキュキュキュー!」
水中から華麗にジャンプすると、周囲を泳ぎ回るサフラン。
「それから、狼プリン!」
「ウォンウォンウォン!」
サフランが投げたボールをヘッドバッドするスプリングロンド。
観客たちの間から、早くも感嘆の声が漏れる。
「わぁ、沙夢、見てみて!」
「わわわっ、もう、見てるわよ」
クッキーをかじっていた沙夢を弥狐がゆらゆら揺らす。
「おぉー」
二つ目のワッフルが、奈月の口から落ちる。
魅力的なステージが、繰り広げられる。
犬たちによる長縄跳び。
サフランは、サッカーゴールへのシュート。
「さあ、ここで観客の皆にも手伝ってもらうね」
リアトリスは客席に降りると、一人の少女に手を差し伸べた。
「え、あたし!?」
目の前に差し出された手に動揺する弥狐。
それでも、元気よくその手を取ると舞台に上がる。
「え、え、僕もぉ?」
同じようにして奈月も選ばれ舞台に上げられる。
「それじゃあ、今から二人にサフランのジャンプの指示を教えるね」
リアトリスの説明を真剣に聞き入る弥狐と奈月。
そして――
二人が右手を大きく上に上げると、それと同時にサフランが大ジャンプ!
「うわあ」
「わぁ……」
ステージは拍手に包まれた。
「どうもありがとう! それじゃあ、手伝ってくれたお礼と今日の記念に、二人に渡したいものがあるんだ」
リアトリスの言葉に、サフランとスプリングロンドがそれぞれ箱を持ってくる。
スプリングロンドが背中に乗っていた箱を弥狐に差し出す。
「あ、あたしに? うわあ、ありがとう!」
思わずスプリングロンドに抱き着く弥狐。
サフランは胸ビレで器用に箱を奈月に手渡した。
中身は、デスティニーランドのマスコット、マッキーのフィギュア。
「くれるの〜? ありがと……わっ」
「キュイー♪」
サフランがヒレで奈月にハグした。
「えへ……ありがとねぇ」
水中に戻ったサフランに奈月が手を振ると、サフランも胸ビレをバタバタさせて喜んだ。
二人が客席に戻ると、ショーは最後の挨拶になる。
「みんなー、見てくれてありがとねー!」
「キュイー!」
「ウォウウォウー!」
「この後もいっぱいショーがあるから、是非見てねー」
一礼すると、リアトリスは舞台から去る。
サフランはバイバイ、と胸ヒレを使い、スプリングロンドはお座りの姿勢で前足を振った。
「えへへー、いいものもらっちゃったー」
「良かったわね」
笑顔で沙夢の所に戻る弥狐。
プレゼントの箱を開けてみると、中にはマッキーとマニーの人形。
「わぁい、かっわいい!」
人形を抱きしめる弥狐。
そして。
「はい!」
マニーを胸に抱くと、マッキーを沙夢に差し出す。
「え……?」
「二人で来たんだもん。二人の思い出にしよ!」
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