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「暑いわねぇ……」

 浜辺に設置されたベンチに横たわり、浜風に吹かれながらお肌を少し焼いていたビキニの水着姿のエルサーラ サイジャリー(えるさーら・さいじゃりー)が、ぽつりとつぶやく。
 近くで貝殻を拾って喜んでいた白モモンガのゆる族・ペシェ・アルカウス(ぺしぇ・あるかうす)は、そんなエルサーラのつぶやきに答えるようにいった。

「夏だからねぇ」
「どうにかならないの?」
「ボクに言われても……」
「雨くらい降らせなさいよ」
「それは神様にお願いしてよ。というか、海に来てるんだからエルは海に入ったらいいんじゃないのかな? きっと海は冷たくって気持ちいいよ」

 ぺシェはそういってニッコリと微笑む。
 実はエルサーラも最初はそのつもりだった。でなければ海などに来ない。
 だが、海につくとパートナーのぺシェは海に入れないという。
 なんでも”中”に海水が入って溺れるからというのが原因らしい。
 それを聞いたエルサーラは、「私ひとりが海で泳いでたらぺシェがひとりで可哀想よね」と思い、海には入らずに日焼けをすることにした。
 だが、素直になれない性格がその思いを口にすることをためらわせる。
 だから彼女は、唐突に話題を変えた。

「甘いスイカが食べたいわ」
「えっ、いきなり? でも、それなら買ってこれるからちょっと待ってて」

 ぺシェはそういうと、手にしていた貝殻をエルサーラに預け、ふらふらとどこかへ行ってしまう。
 そんなぺシェの後姿へ何か言いたそうに口を開きかけたエルサーラだったが、結局なにも言えずに彼女は口を閉じた。
 不安げにぺシェを見送ったエルサーラの近くで、持参したパラソルを浜辺に突き刺し、茣蓙を引いていたミア・マハ(みあ・まは)は、汗を拭う。

「ふぅ、これで準備は完了じゃな」
「ミアぁ〜っ!」

 と、離れた場所から彼女を呼ぶ声。
 見れば、そこには多くの荷物を持ったレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)の姿があった。
 レキはいくつもの荷物を手にのそのそと浜辺を進み、ようやく茣蓙の元にたどり着くとぐったりと倒れこむ。

「ちょっとは荷物持ってよぉ〜」
「それはそなたの役目じゃろ。わらわの役目は場所確保じゃ」
「場所確保って……お花見とかじゃないんだから、そんなことしなくても大丈夫だと思うんだけど」
「うるさい奴じゃな。あそこの海の家でジュースを買ってやるから文句をいうでない」
「ほんと! やったぁー!」
(単純な奴じゃ。この調子で帰りも荷物持ちをさせるとするかのぉ)

 フッと口元に笑みを浮かべたミアは、そんな事を思いながら、レキと連れだって近くにあった”やもり”と書かれた看板を掲げる海の家に向かう。