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「では、ワタシと権兵衛がパートナーになれば、すべては解決するということじゃな!」
 アリエティが目を輝かせてアキラを見る。

「ま、確実じゃないけど、試してみる価値はあるんじゃないかなー」

 アキラはそういうと、イカ焼きにようやく齧りついた。

「いや、しかし問題がひとつあります」

 と、権兵衛がそこで声をあげた。

「もしかして、アリエティさんと契約を結ぶのは嫌なのデスカ?」

 アキラが小皿に分けてくれた焼きそばを一生懸命食べていたアリスが、箸を置いてそういった

「いや、そういうわけではないんですけどね……」
「それでしたら、この海の家のオバチャンと一緒になるのはどうデスカ?」

 アリスはニコリと微笑んで、そんなことをいう。
 すると奥で焼きそばを焼いていたおばちゃんの大きな笑い声が響いてきた。

「残念だけど、あたしゃ旦那ともう契約済みだよ!」
「それは残念デス……では、アキラとはどうデスカ?」

 ぶぅーっ、と食べていたイカ焼きを吹き出すアキラ。
 そして彼は首をぶんぶんと横に振る。

「やだやだ、可愛い女の子の幽霊ならともかく矢がいぱーい突き刺さったおっかねーおっさんの怨霊なんて断固願い下げです!」
「ひどいですねぇ……呪っちゃいますよ」
「うへぇ!」
「ハハハッ、冗談ですよ、冗談。私の呪いは最初に呼び出した方限定ですから」

 権兵衛の言葉を聞いて、アキラはホッと胸を撫で下ろした。
 と、アリエティが権兵衛を見上げていった。

「なあ、権兵衛。なぜワタシじゃダメなのじゃ? ワタシは呪いを回避できるのなら、パートナーでもなんでもなってやるぞ?」
「そのお気持ちは素直にありがたいんですけどね。私が嫌なんですよ。こんな姿でパートナーになってもねぇ……」

 権兵衛はそういって苦笑いを浮かべる。

「それに、私はできれば成仏してゆっくり休みたいんです。かなり長いこと、幽霊をやってますからね」
「……そうか。無理にとはいかぬからのぉ」

 アリエティはそういうと、しょんぼりと肩を落とした。
 そんな彼女の肩に、誰かの手が優しく置かれる。
 その感触にアリエティが後ろを振り返ると、そこにはネットに入ったスイカを手に持ったレン・オズワルド(れん・おずわるど)の姿があった。

「あっ、おまえは……」
「レンさんじゃないか、来てたのか?」

 もっくんとアリエティは、お正月の事件の時に知り合いとなっていたレンの姿を見て、思わず声をあげる。

「私もいますよ、もっくん!」

 と、レンの後ろからひょっこりとノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)も姿を現す。
 それを見て、もっくんは嬉しそうに顔をほころばせる。
 そんなもっくんを見て、レンは口元に笑みを浮かべながらいった。

「久しぶりだな、もっくんにアリエティ。今日はノアと一緒に陣中見舞いに来たつもりだったんだが……どうやら、それどころではないようだな」
「はははっ」

 もっくんは頭をかいて苦笑いを浮かべる。
 そんなもっくんの隣に、ハーフパンツにアロハシャツ姿の国頭 武尊(くにがみ・たける)が現れた。
 もっくんは更なる知り合いの登場に目を丸くする。
 武尊は、そんなもっくんを見てニッと笑ってみせる。

「よ、久しぶりだな」
「国頭さんも来てたのか」
「ま、たまたまな――それより話は聞かせてもらってたぜ、そこの権兵衛とかいう幽霊が成仏しないと、アリエティが成仏しちまうんだって?」
「そうなのじゃ! だから助けてくれなのじゃ!」

 アリエティは武尊に詰め寄ってぴょんぴょんと跳ね回る。

「わかったわかった。おまえは知らない奴じゃないし、面倒だが助けてやる! だから俺の周りで跳ね回るな!」
「本当か、ありがとうなのじゃ!」

 武尊の言葉を聞いたアリエティは、ニコッと笑って大人しなくなる。
 と、武尊はおもむろに権兵衛へと視線を向けた。

「権兵衛、君が幽霊をやっているのはきっとこの世に何か未練はあるからだろ? それを俺たちに話してくれないか? そうすれば、君を助けるヒントが得られると思うんだが」
「未練、ですか……」

 うーん、と唸って考えはじめる権兵衛。
 長いこと幽霊をやっている権兵衛は、その辺の記憶が曖昧になっており、これというものが思い当たらない。
 だが、”もっと普通の人たちがしているようなことをしてみたかった”という気持ちが、ふと浮かび上がってくる。
 そして彼は自分の生い立ちを契約者たちに語り、その事を告げた。
 すると、その話を聞いた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が力強くうなずいて前に出る。

「権兵衛さんのその気持ち、よく分かります!」

 権兵衛と同じ元傭兵である吹雪は、彼の”普通に憧れる”感覚に親近感を覚える。
 そんな彼女は、権兵衛の近くにやってくると皆に向かって高らかに宣言した。

「よし、皆さん! 権兵衛さんと一緒に遊ぶのであります!」

 それを聞いて、皆は目を丸くする。
 そんな中、吹雪のパートナーであるコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が声をあげた。

「ちょっと吹雪? 遊ぶってどういうことよ?」
「どうって、そのままの意味ですが?」
「ただみんなで楽しく遊ぶっていうの?」
「そうです。そうすればきっと、権兵衛さんは成仏できるのであります!」
「どこからそんな自信が出てくるのよ。保証できるの?」
「保証はできません。でも、友達と一緒に遊ぶことはきっと普通な事です。それなら自分たちでも叶えてあげられます」
「でも……」
「――お嬢さん、これを」

 と、コルセアの前に一輪の小さな向日葵が差し出される。
 コルセアはそれに驚いて口をつぐみ、視線を横に向けた。
 するとそこには、ニッコリと微笑むエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)の姿があった。

「俺はあのお嬢さんがいってることはあながち間違ってないと思うけどな。それに、権兵衛さんが楽しい時間を過ごして成仏できれば、それが一番だしね」
「私もそう思いますわ」

 エースのパートナーであるリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)もそういって同意した。

「そうでしょうか?」

 と、そんなふたりにレリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)が異を唱える。

「俺はやはり、呪いを解くなら落ち武者を討伐した方が確実だと――」
「うわっ、コラッ! レリウス!?」
「もごっ」

 と、ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)が慌ててレリウスの口を塞ぐ。
 そしてレリウスをヘッドロックして自分の方へ引き寄せると、ヒソヒソと耳打ちをした。

(レリウスッ、海水浴場で刃傷沙汰は止めようぜ! 平和的に解決しよう! な? な?)
「……わかりました。ハイラルがそういうのでしたら」
「あの、君たち?」
「あーっ、すいませんでした! 大丈夫です! オーケーです! 平和的にいきましょう!」
「はっ、はあっ」

 エースは目をパチクリとさせ、アハハッと笑うハイラルを見つめる。
 と、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が前に出て皆を見回した。

「ほな、皆さん。とにかく遊んで成仏させるということに異論はなしってことでいいんかな?」

 裕輝の言葉に皆はうなずいて答える。
 それを見て、裕輝はニヤリと微笑む。

「よっしゃッ、そうと決まれば話は簡単や……遊ぶでぇ! 相当ふざけて!」

 裕輝の号令に、皆はおーっと手を振り上げて叫んだ。