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「いらっしゃいませ〜!」

 海の家やもり。
 その中でキビキビと働く次百 姫星(つぐもも・きらら)は、新たにやってきたお客さんに元気よく挨拶をする。

「おう、今日も元気だね次百ちゃん」
「はい、もちろんです」

 次百はお客さんにそういって、ニコリと微笑む。
 長年借金生活を送ってきた彼女は、様々な仕事を経験してきたのでバイトスキルが高く、海の家の仕事もすぐに覚えた。
 いまではお客さんとも仲良くなり、彼女目当てにやってくる客もいるほどになっている。

「ずいぶんと楽しそうね」

 と、テーブル席に座っていたパートナーの呪われた共同墓場の 死者を統べる墓守姫(のろわれたきょうどうぼちの・ししゃをすべるはかもりひめ)がそういった。
 彼女は今日は客として、ここにやってきていた。

「楽しいですよ。でも、墓守姫さんも楽しそうです」
「まあ、そうね。墓地みたいな静かな所が好きだけど、たまにはこういうところもいいわね」

 墓守姫はそういって、何気なく視線を海の方へ向ける。
 すると彼女は、海にあまり似つかわしくないものを視界に捉え、眉をひそめた。

「――ただいま」
「あっ、もっくんさん。おかえりなさ〜い」

 聞き覚えのあるバイト仲間の声を聞き、次百は笑顔を浮かべて振り返る。
 するとそこには、もっくんだけではなく、魔女っぽい小さな女の子と弓矢が体中に刺さった落ち武者っぽい男が佇んでいた。

「おや、お客さんですか。熱そうな真っ黒魔女さんも落武者さんもゆっくり寛いで……って、えっ!?」

 次百は一瞬言葉を失う。
 そしてまじまじと落ち武者を見て、口をパクパクと動かした。

「えっ、あっ、そのぉ……」
「あっ、どうも。わたくし怨霊の七市権兵衛と申します」
「――どっひぃぃっっッッ!?!?」

 次百の驚いた声が海に響き渡る。

「んっ?」

 その声を聞きつけて、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は泳ぎを止めた。
 彼女は教導団からやっともぎとった休暇を使い、パートナーの中で1番暇だったカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)と共にパラミタ内海にやってきていた。

「カルキ、なにかあったのかな?」

 海から上がったルカルカは、浜辺にいたカルキノスの元にやってきてそういった。

「さあな、知らねぇよ」

 カルキノスはそういいながら、先ほど海の家で買ってきた焼きとうもろこしに齧りつく。
 彼は海より団子のようだ。

「ちょっと様子をみてみようか」
「マジでいってんのか?」
「うん、ルカはいつでも真面目だよ」
「……ま、暇だからいいけどよ」

 カルキノスはそういうと、一瞬で焼きとうもろこしを平らげる。
 そして、ルカルカと共に海の家やもりへと向かった。