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リアクション
「優子さん、宿舎に戻るそうです」
アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)が、届いたばかりのメールを見て言った。
「それじゃ、急がなきゃ♪」
秋月 葵(あきづき・あおい)は、急いでお汁粉をステンレスボトルに入れる。
「3つに分けるよ〜。これが優子さん用で、こっちはアレナちゃんの分〜」
青色のボトルに優子の分を、白のボトルにアレナの分を入れて。
「これはおまけのゼスタ先生用」
最後に、葵は茶色のボトルにゼスタ用のお汁粉を入れる。
「おまけですか」
くすりと、アレナが笑みを見せた。
「うん♪ あの人スイーツ好きだし、あげないと除け者扱いみたいに感じるし〜拗ねられても困るしね」
葵も笑顔でそう答えて、容器の蓋をぎゅっと閉める。
「それじゃ、優子隊長に届けに行くの付き合ってください」
「はい」
葵とアレナはホールから出て、優子の元に急ぐ。
年が明けてからも、2人はホールに残って、片付けをしたり温かな飲み物を作ったりして過ごしていた。
スープを作るアレナの隣で、葵はお汁粉を作っていて。
お汁粉が出来たら、優子に届けたいのだけれど……1人で届けるのは怖いので、付き合ってほしいとアレナにお願いしてあった。
「葵さん、優子さんとはもう大丈夫ですよね?」
「あ、うん。クリスマスイブも、アレナちゃんのお蔭で優子さん、お説教だけで済ましてくれましたし〜。吊るされたり、打ち首にならなくてよかったよ……凄く怖かったけど」
葵は思い出して、ため息とともに苦笑する。
「大丈夫ですよ。葵さんが優子さんをそこまで怒らせるようなこと、するはずありませんし」
「う、うん……」
葵は思わず目を逸らす。
「で、アレナちゃんは、優子さんとあの後、どう過ごしたんですか?」
24日の夜に、葵はアレナ達の部屋に差し入れを持って訪れた。
そして、ちょっと雑談をして、少しのお菓子と、たくさんの説教を貰って、帰ったのだけれど……。
「一緒にケーキ食べて、お風呂に入って寝ました」
「お風呂も一緒に入って一緒の部屋で寝たんですか?」
「いえ、お風呂と寝室は別ですよ。今日は反対に、私がこっちの宿舎に泊っていくかもしれません」
そう答えるアレナは、嬉しそうな顔をしていた。
「そっか。多分……そういう、家族として普通みたいなのが、アレナちゃんにとって幸せなんですね」
葵のそんな言葉に、アレナはこくりと頷いた。
「あっ、優子隊長!」
優子は、先に校門に到着していた。
優子を見つけた葵は、急いで駆け寄る。
「巡回お疲れ様でした。これ差し入れです。初日の出見る時にでも、食べてください」
葵は優子にお汁粉が入った容器を差し出した。
「ありがとう。2人とも、身体冷やさないようにな」
優子は葵からお汁粉を受け取ると、2人に優しい目を向けた。
「はい」
「はい。優子さんも、葵さんのお汁粉とかで、ちゃんと温まってくださいね」
「うん。それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
葵とアレナはぺこりと頭を下げて優子を見送る……。
優子は、ロイヤルガードの宿舎の方へと向かって行った。
「……それじゃ葵さん、ホールに戻りましょう。私が作ったスープも、飲んでくださいね」
「うん、何種類か作ってましたよね。どれから戴こうかな〜♪」
優子が見えなくなると、くるりと後ろを向いて。
2人は微笑み合いながら、仲良く未だ沢山の人達が残っているホールへと、戻ることにした。