空京

校長室

【十二星華SP】決戦! マ・メール・ロア!!

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【十二星華SP】決戦! マ・メール・ロア!!
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リアクション


chapter4.第三階層・ネコクイーン



 階段を降りきったヨサークたちは、三度大きな広間へと出た。ライオリン、チンパンコに続きこの階層にもキメラがいた。しかしその姿は、どう見ても人間の女性にしか見えない。それもそのはず、今ヨサークたちの眼前にいるキメラは、ネコの遺伝子とレースクイーンの遺伝子を組み合わせてつくられた、ネコクイーンと呼ばれるキメラだったのだ。姿形は美しい女性の形で、声はネコのように甘いという恐るべきキメラだ。レースクイーンの遺伝子というのがちょっとよく分からないが、もはやこの美貌の前ではそんな細かいことはどうでもいい。
「クソメスばっかじゃねえか! なんだここは、ああ?」
 ヨサークはこの光景を見て憤慨する。突然10匹近い女性型のキメラが現れたのだ、無理もないことである。と、ヨサークはそのキメラたちの奥にネコクイーンとは違う種類の生物を視認した。別種のキメラ……否、それはキメラではない。
「あなたたち、ここまで来ちゃうなんてすごいですねー」
 生徒たちを見てそう口にしたその人物は、【魚座(アルレシャ)】の十二星華エメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)であった。
「エメネア!!」
 彼女に見覚えのある何名かの生徒たちが、思わず声をあげていた。一度はティセラにさらわれたものの、救出され、ティセラの支配下から抜けたはずのエメネアがここで待ち構えていたということは。生徒たちは確信に近い推測を浮かべた。それは、出来ることなら外れていてほしいと願っていた推測。
 ――エメネアの洗脳は、まだ解けていないのでは?
「外で撃っている光条砲でも止めに来たんですかー? 無駄ですよ、あなたたちはこの階で全滅するんですから」
 ピシ、と持っていた鞭で地面を叩き威嚇するエメネア。
「おめえが誰だかよく知らねえが、この空に居座るっつうんなら耕すぞこらあ!」
 ヨサークは鉈を振り上げ、エメネアの下へと駆け出した。



 ヨサークが走り出したとほぼ同時に、生徒たちもネコクイーンの群れへと突撃を開始していた。その先陣を切ったのが、黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)だった。
「そこの抜群のプロポーションを持ったお姉さん! ちょっとお尋ねしたいことが! ティセラはどこに……」
 どうやら彼はネコクイーンと戦おうというより、ネコクイーンとお喋りがしたくて突撃したようだった。が、そんなにゃん丸の目論見はネコクイーンの爪によって砕かれた。綺麗に伸びたネコクイーンの爪がにゃん丸の頬をかすめ、彼の言葉は途中で途切れた。つう、とその頬に赤い線が走る。にゃん丸は内心軽く動揺したものの、「ちょっと馴れ馴れしすぎたな」と反省し、アプローチ法を変えることにした。
「おっとこれは失礼、そりゃ知らないヤツにいきなり聞かれても答えないか。まず俺がどういう者か名乗らなきゃねえ」
 にゃん丸はネコクイーンに自分がどういう人間か知ってもらうことから始めようとしたようだ。その手段として用いたのが、自身が得意とする芸の披露だった。
「本当はティセラに見せるまでとっておきたかったが、仕方ない、こうなったら思う存分見せてやるから、よおく目に焼き付けておいてくれよ!」
 もったいぶるような調子でそう告げると、にゃん丸は忍刀の形をした光条兵器を取り出し、なんとそれを自らの股間に宛がった。にゃん丸の股間が光を帯びていく。
「どうよ、これが俺の十八番、光条ちんち……」
「ちょっと、何盛ってんのよ!」
 ネコクイーンが思いっきりにゃん丸の頬にビンタを食らわせた。ぱしん、と気持ちいいほどクリーンヒットし、にゃん丸はよろめく。そこに追い打ちをかけんと他のネコクイーンも一斉に飛び掛かり、にゃん丸に次々と蹴りを入れていった。
「痛っ、痛い、ちょっと、挟んだ光条兵器が擦れてやばいことになってるって、ちょっと」
 蹴られる度ににゃん丸の体勢がずれ、そのせいで彼の光条兵器が何かに当たっているようだったが、自業自得というものだろう。
 ボコボコにされ、至るところにあざをつくったにゃん丸をパートナーのリリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)がずるずると部屋の隅へ引っ張っていく。
「もう、他校生もいるっていうのに恥ずかしいじゃない! 何のためにわざわざここまで来たのか……」
 既に気を失いかけているにゃん丸に説教するリリィ。一連のやり取りを呆然と眺めている生徒たちの視線に気付くと、リリィは「あはは……」と苦笑いを浮かべ、すごすごと後退した。
「み、みんな気にしないで戦いを続けて……。このアホは私が責任持って処分しておくから」
 リリィに首根っこを掴まれて引きずられているにゃん丸を見て悔しそうに肩を震わせているのは、白波 理沙(しらなみ・りさ)だった。隣にはパートナーのチェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)もまた、残念そうな表情だ。
「あ、ほんと気にしないで! このアホがアホなことしてこうなっただけだから!」
 仲間がやられて遺憾の念を持っているのだと察したリリィが、ふたりに冷静さを取り戻させようとする。仲間を失ったことで平常心を失い、怒りに任せて無謀な突進をしないようにという思いからの言葉だった。しかし、彼女らが悔いていたのは別の理由だった。
「せっかくにっくきのぞき部のメンバー見つけたのに、先に退治されちゃったー! もー!!」
「わたくしたちのお仕事、とられちゃいましたねー」
「そっち!? 仲間がどうとかじゃなかったの!?」
 のぞき部の敵対組織に所属している彼女らは、その部員たちに過剰な反応を示していた。思わず大声で反応してしまったリリィをよそに、理沙は他にのぞき部がいないか辺りを見回す。
「あっ、見つけた! たしかあの人ものぞき部の人よっ」
 理沙が指差した先にいたのは、坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)だった。彼は他の生徒同様ネコクイーンの群れに向かって走っていたはずだったが、いつの間にかネコクイーンたちと肩を並べ、エメネアを背に生徒たちと向かい合っている。まるでそれは、エメネア――ティセラ側に味方しているように見える。
「あの方、所属部活がどうという前にあちら側の生徒さんなのですかね〜」
 ニールが不思議そうな様子で言うと、理沙は間髪入れずにハリセンを構えニールに言葉を返した。
「ティセラ側で、しかものぞき部なら文句なしに討伐対象じゃない! ぶっ潰すーっ!!」
 なんかもう、彼女はのぞき部部員さえ叩ければ後はどうでもいいようだった。十二星華や世界情勢などまるで気にしていない様子だ。そんな理沙以上に、鹿次郎は個人的な感情で動いていた。
「どういう理屈でそっちにいるか知らないけど、とにかくのぞき部、覚悟ーっ!」
「理屈? そんなものは無用でござる。拙者はこのパラミタで誰よりも巫女を愛している。それだけでエメネアさんにつく理由は充分でござろう!」
 つまりそういうことらしい。気がつけば彼の隣には、彼が指揮するキメラ「巫女さん」がいた。巫女さんと巫女さんの遺伝子を組み合わせた、生粋の巫女さんだ。というかこれはたぶんキメラではない。おそらくどこかから連れてきたごく普通の巫女さんだろう。もしこれが合意の下でなければ、立派な誘拐である。
「拙者は十二星華の誰、というより巫女さんの味方! 武士道とは巫女さんとイチャイチャすることと見つけたり!」
 そして、巫女さんを隣と背後に配した鹿次郎はもうテンションが上がりすぎてわけの分からないことを叫びだした。これではもうただの巫女マニアだ。
「巫女さんは、命に代えても守ってみせるでござる! さあ今でござる! 光条兵器を……」
「おふざけはそのくらいにしないといけませんわ」
 ゴツン、と鈍い音と同時に、鹿次郎の首が曲がる。
「え……?」
 目の前で突然前のめりに倒れた鹿次郎を見て驚く理沙。その鹿次郎の後ろに光条兵器を持って立っていたのは、鹿次郎のパートナーである姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)だった。雪は倒れた鹿次郎にこれでもかととどめを刺すべく殴打を続ける。ある程度殴り終えると、顔を上げ申し訳なさそうな顔で言った。
「ごめんなさいね、うちのド変態がご迷惑お掛けしてしまって」
 理沙、そしてどこからか連れてこられた巫女さんに謝る雪。そのまま彼女は失神した鹿次郎を引きずりそそくさと部屋の隅に移った。
「つい数分前も、似たようなもの見ましたね〜」
「……のぞき部のパートナーはしっかり者であるべし、みたいな掟でもあるのかな」
 矛先をまたもや失った理沙とニールは、ハリセンをぷらぷら遊ばせながら部屋の隅を見た。そこには、仲良く並んで気絶しているにゃん丸と鹿次郎の姿があった。
 彼らが一騒動起こしているそのそばでは、数匹のネコクイーンにミゲル・アルバレス(みげる・あるばれす)とパートナーのジョヴァンニ・デッレ・バンデネーレ(じょばんに・でっればんでねーれ)が囲まれていた。
「師匠、囲まれてしもうたで。どうする?」
 ミゲルがちら、とジョヴァンニの方を見る。と、ジョヴァンニは焦りどころかどこか嬉々とした表情を浮かべていた。
「し、師匠? まさか……」
 嫌な予感が頭をよぎるミゲル。その予感は的中した。ジョヴァンニはスタスタとネコクイーンに自ら近付き、そのうち一匹の髪を突然優しく触り始めた。
「キメラって言うから今までみたいに怪物ばかりかと思っていたけど……こんなに美しいキメラもいるんだね」
 そのまま髪を自分の鼻に近づけ、そっと匂いを嗅ぐ。
「うん、とても良い香りがする。君は髪の一本一本まで美しいね。ねえ、こんなことしてないで、俺とご飯食べに行かない?」
「やっぱり……あかん、師匠の悪い病気始まってもうた」
 ジョヴァンニは、堂々とナンパしていた。
「これたぶん誘惑とかのせいちゃうんやろなあ……師匠女の子見たら大体こうやし」
 彼曰く、イタリアでは女性を見かけたら声をかけないのは男として恥ずべきことらしい。
「え……ちょっと何この人、いきなりナンパとかありえないんですけど」
 しかし、ここはイタリアではなかった。当然女性のナンパに対する価値観も違っていた。思わぬネコクイーンの反応に一瞬たじろぐジョヴァンニだったが、イタリア人はそんなことではくじけないのだ。
「ふふ、簡単になびかない君も素敵だよ。その爪で俺の心に消えない傷をつけてほしいくらいだ」
「やだこの人、ドMー? ちょっと近付かないでよ」
「今そういうポエミーな口説き方流行ってないから、おじさん」
 ネコクイーンにリアルに消えない傷をつけられたジョヴァンニは、眩暈を覚えふらっとよろめいた。
「お、おかしいな……飲んでもいないのに眩暈が。さては君がその甘い声で俺を酔わせたんだね?」
「きもーい」
 声を揃えて罵声を投げかけたネコクイーンたちの前に、ジョヴァンニは倒れた。
「師匠ぉおおおおおーーーーー!!」
 ミゲルが血相を変えてジョヴァンニの体を揺らす。
「師匠! 俺の知ってる師匠はこんなことで挫いたりせえへんはずや! そうやろ!? 師匠! 下は14、上は56までいけると豪語している師匠!」
「ちょっ、ちょっとミケーレ、何さらっとストライクゾーンバラしてるんだ……」
 むくりと起き上がり、慌ててミゲルの口を塞ぐジョヴァンニ。が、その言葉をネコクイーンは聞き逃さなかった。
「ロリコン! ロリコンおじさんよあの人!」
「ロリコンでしかも熟女好きよ!」
 ネコクイーンたちにとどめとなる言葉を刺され、今度こそジョヴァンニは力尽きた。
 ひとりネコクイーンの群れのど真ん中に取り残されたミゲルは、徐々に迫ってくるネコクイーンたちに退路を絶たれ逃げられずにいた。そんな彼のピンチを救うべく、赤城 長門(あかぎ・ながと)が大声を上げながら群れに割って入っていく。
「寄ってたかっていじめるのは良くないチンパンコ! じゃが女を殴るのは気がひけるけぇ、引っ込んでてチンパンコ!」
「チ……チンパンコ?」
 ミゲルが不思議そうな顔で長門を見つめる。それもそのはず、チンパンコがいたのは上の階で、ここにはチンパンコのチの字もないのだ。にも関わらず、なぜか長門は絶えず語尾にチンパンコをつけていた。
「この筋肉は伊達じゃないけん、忠告は聞いといた方がよかチンパンコ!」
 これにはネコクイーンたちも目を丸くし、言葉を失っている。
「どうした、ぼーっとしとらんで早くそこを退いてチンパンコ!」
 彼、長門は第二階層でチンパンコと会った時から、そのネーミングに惹かれていた。チンパンコが頭から離れなくなってしまった故のこの現状なのだろう。決して彼は普段から語尾にチンパンコをつける癖があるわけではない。が、そんな事情をまったく知らない――それどころか階層が違うためチンパンコのこともろくに知らないネコクイーンたちは、初めて聞く意味不明な単語に不信感を露にしていた。
「ねえマリコ……チンパンコって知ってる?」
「ううん初耳ー。トモミは?」
「マリコ知らないのにあたしが知ってるわけないじゃん。サヤカも知らないよね?」
「知らない知らない。え……なに、チンパンコって」
 ひそひそ声で話していたネコクイーンたちは、怪訝そうに長門の方をじっと見だした。その冷めた視線を物ともせず、長門は彼女らに撤退を促し続ける。そしていくつか言葉を発した後、長門はついに奇跡的なセリフを口から出してしまった。
「何度言っても通じないなんて、このわからんちんチンパンコ!」
 言った本人は気付いていないようだが、周りは全員その危険な奇跡に気付いてしまっていた。
「下ネタ……?」
「今確実に言ったよね」
「ちょっと何、さっきからこの生徒たち、どういう教育受けてるの」
 若干ひきだしたネコクイーンたちは少しずつ長門と距離を置く。その隙を見逃すまいと、ヨーフィア・イーリッシュ(よーふぃあ・いーりっし)が契約者のサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)の腕を引っ張りながら乱入してきた。
「今よサっちゃん!」
「わわ、ヨ、ヨーさんテンション高いッスよ!」
 満を持して、と言わんばかりの様子でヨーフィアがネコクイーンの退路を塞ぐように背後に立つ。その隣にはサレン。そして彼女たちは、なぜか下着姿だった。
「……やっぱりこれちょっと恥ずかしいッスよ。下着じゃなきゃ駄目だったんスかね……」
「当たり前じゃない! 勝負下着って言葉があるでしょう? すなわち、勝負する時は下着姿でいるのが普通なのよ!」
「た、たしかにそんな言葉聞いたことあるッス……」
 ガーターベルト付きの下着を見下ろし顔を赤らめているサレンだったが、ヨーフィアの説明で少し納得をしたようだった。
「さあネコクイーンたち! 私たちとお色気勝負よ!」
 サレンを納得させたヨーフィアは、ネコクイーンに向き直りまたわけの分からない提案をしだした。
「勝負の方法は簡単、より周りを興奮させた方の勝ちよ! じゃあ早速勝負開始ね!」
「え、いやちょっと私たちやるなんて一言も……」
 言うが早いか、ヨーフィアはサレンの下着に手を添える。同時に唇を耳元に近付け、そっと息を吹きかけた。
「ひゃっ」
 ぴくんと反応したサレンを可愛がるように、耳から頬、口元へとその唇を滑らせていくヨーフィア。左手はその間も胸と戯れることを忘れない。
「んっ……ヨーさん、ちょっと……」
「な、何よこの子たち、いきなりプレイ始めちゃって……」
「でも、私たちネコクイーンがこんなもの見せられて黙っているわけにはいかない! この勝負、受けて立とうじゃないの」
 見事ヨーフィアとサレンの色気にあてられたネコクイーンたちは、負けじと互いの体を密着させだした。
「ふふっ、どう? このコンビネーション」
「残念、所詮あなたたちの体はつくられたもの……私たちみたいに日々磨き上げている天然ものの敵じゃないわね」
「何よこの露出狂っ」
 互いを罵りながらイチャイチャし続けるサレンたち。と、そこにトコトコとひとりの少女が歩み寄ってきた。長門のパートナー、ホーク・キティ(ほーく・きてぃ)だ。ホークは彼女らの前まで来ると、突然手拍子をとりながら踊りだした。さながらチアガールのような動きを見せながら、ホークは奇声をあげる。
「チンパンコッ! チンパンコッ! チンパンコォォ!!」
「……!?」
 あまりにシュールすぎるその光景に、ネコクイーンはもちろんサレンとヨーフィアまでも手を止め彼女の踊りに見入った。一手に注目を集めたホークは、汗を飛び散らせながらも踊りを止めない。
「チンパンコッ! チンパンコッ!!」
 彼女もまた長門同様、その単語が気に入ったのだろうか。それとも彼女らが持つ抜群のプロポーションを目の当たりにして、違うジャンルで勝負を挑もうと思ったのか。その行動の理由がまるで分からない。もしかしたら宇宙、それか別次元とかから啓示でも受けたのかもしれない。
「ちょっと、ここまで来ると逆に心配よ……」
「さっきから何なのもう。まともな生徒ひとりもいないじゃない」
 ほんの少し前まで懸命に色気で張り合っていた自分たちがなんだか間違った方向に行っていたような気がして、ネコクイーンたちは乱れていた服を整えようとし始めた。が、ヨーフィアはまだ諦めていない様子で、さっきの続きとばかりにサレンへ絡もうとする。そんなヨーフィアの行動を見ていた原田 左之助(はらだ・さのすけ)が、我慢出来ないといった様子で怒鳴り込んできた。
「おい嬢ちゃんたち! さっきから黙って見てりゃあ揃いも揃って肌を無闇に露出しやがって! そんなんで男が全員誘えると思ってんのか!」
「に、兄さん味方、味方の生徒だよその人たち……」
 左之助の契約者、椎名 真(しいな・まこと)が慌てて止めに入る。
「ええい、敵も味方も関係ねえっ! いいか! 男がとグッ感じるのはそんな堂々と肌を見せびらかしてる格好じゃねえ! きっちり着込んだ和服の裾からふと垣間見える素肌の色っぽさこそ至高なんだ!」
「ちょっと兄さん、何和服について急に語りだしてるの!?」
「真、今大事な話をしてるんだ! ちょっと黙っててくれ! まったく今の若い子たちは和服の良さってもんを分かってねえな……和服美人の魅力が分からない奴は正座しろ正座! ほら、そこに座れ!」
 左之助はサレンとヨーフィアを、下着姿のまま強引に正座させた。
「ほら、そこのキメラの嬢ちゃんたちもだ! そんな乱れた服装してねえで正座だ!」
「え、いや、私たちは今ちょうど服の乱れを直そうと……」
「言い訳すんじゃねえっ! 和服着てない時点で正座だ!!」
「は、はいぃ……っ」
 あまりの迫力に、ネコクイーンたちも並んで正座した。
「ね、ねえ兄さん、和服もいいけど、チャイナ服もアリじゃないかなあ……ほら、ちょうどあそこにチャイナを着た女性が……」
「真っ! なくはない、その選択肢もなくはない……が、和服に勝てるかと言ったら到底及ばねえ! おまえも正座だ!」
「えええっ!?」
 ついには真までなぜか正座させられ、一列に並ばされたサレンやヨーフィア、ネコクイーンたちに真はその後左之助から延々と和服の素晴らしさについて長い話を聞かされた。
 最終的にネコクイーンたちが「すいません、もう勘弁してくださいッス」と土下座し、どうにかこの騒動は落ち着いたのだった。