空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
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リアクション

 
「お次はイカ焼き……二分ばかり待ってくれである!!」
 参加者からイカ焼きの注文を受けて、『あおふろ』のハッピを羽織った姿の万願・ミュラホーク(まんがん・みゅらほーく)がさばいたイカに串を差してタレを塗り、鉄板の上に置いていく。
「ついでに、猫華特製フローズパンも店の宣伝のため、売るのである!」
「……本当に売るんですの? いえ、反対はしませんが組み合わせ的にどうなのかと……」
 万願が用意した、中に冷たいイチゴジャム入りのパンを見て、クレイスラ クラウンディッヒ(くれいすら・くらうんでぃっひ)が首をかしげつつも、やはり店の宣伝になればとの思いで参加者や生徒に振る舞っていく。
「さぁ、早い者勝ちですよー!」
 纏ったパレオをなびかせ、クラウンディッヒが笑みを浮かべて客に応対していく。
「はいよ、トウモロコシ、焼き上がったよ。……忙しいんはええんやけど、楽しそうに話してるの見ると、混ざりたくなるわぁ。メトロちゃんがロックフェス開く言うし、見に行きたいわぁ」
 焼きトウモロコシの注文を受けた二十織 円満(はたおり・えんま)が柔和な笑みを浮かべつつ香ばしい匂いを漂わせる中、サンドラ・ウィルム(さんどら・うぃるむ)は暇な身を持て余すようにあちこちにちょっかいを出しに行っていた。
「焼きイカも焼きトウモロコシも実はだな……いたたたた、もう誰ー、尻尾踏んじゃ嫌だよー?」
 海の家に収まり切らない所為で尻尾を砂浜に埋めていたものの、人の往来が激しくしょっちゅう露出しては踏まれたり蹴飛ばされたりしてしまう災難に見舞われるサンドラ。逆を言えば、それだけ盛況ということでもあったが。

「ひゃっは〜♪ 焼きトウモロコシと焼きイカが到着したよ〜っ!」
 大量の焼きトウモロコシと焼きイカが、しかしリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)の前に数分持たずに姿を消す。既に軽く十数人分は食べているはずなのに、紺色のスク水――胸には『りーず』のゼッケン付き――から覗くお腹は胸同様ぺたんこのままである。
「リュースさんには絶対負けないよ〜っ!」
 お代わりをせがむリーズ、流石にリュースが警戒しているだけのことはあるようであった。
「2人の食いっぷりにはいつものことながら脱帽モンだわ……って、海の家でジャムパン? ……ま、冷たくて美味いし悪かねぇけど、何故にジャムパンなんやろ?」
 焼きイカをちまちまと頬張っていた七枷 陣(ななかせ・じん)が、これまた山と積まれたジャムパンの一つに口をつける。
「全ての食材は等しくおかずであります!」
 その声に陣が振り向くと、草刈 子幸(くさかり・さねたか)が何とジャムパンをおかずに、どんぶりに盛られたご飯をかきこんでいた。
「わっはっは! ええぞさっちゃん〜掴みはバッチリじゃけぇー」
 隣で、パラソルの中に入って炊きたてご飯のお櫃を抱えた鉄草 朱曉(くろくさ・あかつき)が笑いながら、空になった子幸のお椀にご飯を盛っていく。その光景を目の当たりにした他の参加者のペースが、ガクリと落ちる。
(うっ……いや、ありえんやろ……まだ焼きそばにご飯の方がマシや……)
 食べかけのジャムパンを置いた陣が視線を戻すと、リーズとリュースはお構いなしといった様子で次の料理に手をつけていた。

「ほら、どんどん食器溜まっちゃうから! 食べてないで手伝って! 集計もしなくちゃいけないんだから!」
「わっ、ちょ、待て、今食っちまわねえとこれ伸びちまうだろ!」
 会場となっている砂浜を、両手に食器を抱えた月代 由唯(つきしろ・ゆい)が駆け回り、彼女に蹴飛ばされた鵠翼 秦(こくよく・しん)が手にしていたラーメンをあわててかきこむ。
「ふぅ……それにしても、みんな凄い勢いで食ってるなぁ……何だか見てたら俺もおなか減ってきた!」
「では、よろしければこれをどうぞ」
 『あおふろ』に食器を戻しに行き、お腹が減った様子の由唯の所へ、月崎 秀(つきざき・しゅう)の作ったかき氷が振る舞われる。
「おっ、サンキュー! ……んん!?」
 早速口に入れた由唯が、てっきりイチゴ味と思っていた所にピリッと走る辛味に顔をしかめる。
「な、何だこれ!?」
「あれ? 「夏は辛いものの方が皆喜びますよ」と言われたのですけど……」
 秀の作ったかき氷は、蘇我 空(そが・くう)の吹き込み――本人はからかうつもりだったようだ――によって紅しょうが味という奇抜なものに変わり果てていた。
「紅しょうが! とくればもちろん、これだよな!」
 その話を聞きつけた白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)が、松岡 徹雄(まつおか・てつお)と作り上げた料理、牛丼を目の前に置く。
「海の家で牛丼!? ちょ、おかしくない!?」
「馬鹿野郎! どいつもこいつも揃いも揃って似たような料理出してるうちは、なんにもわかってねぇ! これが本当の、海の料理なんだよ!」
 啖呵をきった竜造が、自らの作った牛丼と秀の作ったかき氷を一緒に振る舞いに行く。
「……知らねぇぞどうなっても」
 やれやれ、とため息をつく由唯であった。

「――!! 夏といったらやっぱこれだよな! 練乳たっぷりで贅沢気分を味わえるぜ!」
「ボクはねこまんまラーメン! 意外と美味しいんだよ?」
 頭を襲う痛みに夏を感じながら、無限 大吾(むげん・だいご)が運ばれてきたをひたすらかきこみ、その横で西表 アリカ(いりおもて・ありか)はとんこつラーメンにご飯とかつお節を載せた『ねこまんまラーメン』を食していた。
「……!?!? 甘いシロップだと思ったのに、なんですかこれは!? 僕を舐めているのですか!?」
「縁様、落ち着いてください」
 横では、運ばれてきた紅しょうが味のかき氷を、それと知らずに食べてしまった八雲 緑(やくも・るえ)が憤慨し、レン・マホラ(れん・まほら)になだめられていた。
「縁様、あちらでカキ氷の早食い大会が行われるそうです。縁様でしたら優勝間違いなしかと」
 レンが示す先では、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)の司会によるかき氷早食い大会が開催されようとしていた。
「頭がキンキンすること間違いなしの早食い勝負、みんな準備はいいですかぁ?」
 参加者の前には、山と盛られた真っ白な氷の上に、フルーツやアイスなどが盛られたかき氷が置かれていた。
「それでは……始め!」
 ミスティの号令で、一斉にかき氷に手をつけ始める生徒たち。すぐに皆、頭を抱えて悶え始める。この痛みは『アイスクリーム頭痛』と呼ばれ、咽頭神経が刺激されて起きるもので、本当に頭が痛いわけではないのだが、どうしても頭に手をやってしまうのはもはやお決まりの光景である。
「こ、これは……戦いで負う傷の痛みとはまた違った、独特の痛みですわね」
「……どうして私が、このような屈辱を……!」
 その早食い大会には、何とティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)の姿もあった。ビーチバレー勝負に負けて、『かき氷一気食いをする』罰ゲームを指示されたのが理由であった。
「うふふ……お二人のキーンと来た時の顔……! ああ、もっと見せて!」
「おねーちゃん……そりゃ、私も見てみたかったけど、何だろう、おねーちゃんから黒い何かを感じるよ……」
「うちらの子孫ながら末恐ろしいわー」
「そうですわねぇ」
 そして、『春華の似顔絵の腕前を利用して、ボールにアムリアナ女王とティセラの似顔絵を描く』必殺技で見事勝利した――パッフェルは、ティセラが傍にいればそれで良かったので撃ち抜こうとしたが、ティセラがそれを制して――御影 春菜(みかげ・はるな)が恍惚とした表情を浮かべ、それを御影 春華(みかげ・はるか)御影 朔宮耶(みかげ・さくや)御影 和(みかげ・のどか)が何とも言えない表情で見守っていた。
「おめでとうございますぅ! 優勝者にはかき氷食べ放題をプレゼントですよぅ」
 やっとの思いでかき氷を一番に食べ終えた生徒が、優勝賞品の発表に砂浜に突っ伏してしまった。
「…………」
「ああっ、パ、パッフェル!?」
 そして、ようやくかき氷を食べ終えたパッフェルが、こちらもぱたり、と倒れ込んでしまう。普段痛みを受けることに慣れていないパッフェルにとって、今回の罰ゲームはなかなかに効いたようであった。
(ああ……ティセラの温もりを感じるわ……)
 尤も、ティセラに介抱される形になったパッフェルは、それはそれで幸せそうではあったが。

 ちなみに、『パラミタ大食い選手権』の結果は、やはり本命であったリュースとリーズの一騎討ちとなったが、流石にこれ以上食されては『あおふろ』の材料がなくなるとのことで両者引き分けとなったところ、見境をなくしたリュースが生徒にかぶりつこうとしてグロリアに叩きのめされ、ズルズルと引き摺られていったため、リーズが優勝ということになった。
「にはは♪ やったね、ぶいっ!」
 奏音手作りの表彰状を掲げてVサインを見せるリーズは、今日一日『大食いクイーン』として賞賛されたのであった。