空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
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リアクション

 
「……つーん」
「ゴメンゴメン、ほら、海の家でアイスとか奢るから、いい加減機嫌直しなよ」
 結局、演奏が終わるまでリオに無視され続けたフェルクレールトが不機嫌そのものといった表情を浮かべ、何とか宥めようとリオが声をかける。
(ドラム捌き、なかなかサマになっていましたね。……さて、あの子の出番も終わったことですし、どうしますか……)
 演奏を見学していたアルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)――本来の姿ではなく、『ちぎのたくらみ』で外見年齢15歳になった――がふと隣に視線を向けると、六連 すばる(むづら・すばる)が無表情のまま、流れる音楽に身体を揺り動かしていた。
『……スバル!? ひょっとしてノってます?』
 アルテッツァが『声』ですばるに呼びかけると、彼女からはこんな『声』が帰ってきた。
『……めとろっく!』

「グヘヘ、次はオレの番だな。このオレの美声で女どもをメロメロにさせてやるぜ」
 意気揚々とステージに上がった吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)が、マイクを通して『本人曰く美声』を響かせる。

「テメェら、オレの歌を聞けぇ!!」

 その瞬間、観客の5割は目眩を覚え、4割は一時的な難聴に陥り、1割はぴくぴく、と身体を震わせて失神してしまった。
「あぁ……流石僕が歌の神と崇める竜司の美声。これこそが神の歌声だよ、キミ分かるかい?」
 唯一、ヴォルフガング・モーツァルト(う゛ぉるふがんぐ・もーつぁると)だけが観客席でうっとりと竜司の声に耳を傾け、隣で既に別の世界に飛んでしまっている生徒へ竜司の歌声について力説していた。

「あ、アカンてこれは!? どうにかならんやろか!?」
「むぅ……こればかりは致し方ない、俺が闇を張って彼の声を遮断するか……ん? 待て、あれは確か……」
 大慌ての運営スタッフたちがこの事態をどうしようか思案している所へ、ケイオースが見知った人影を見つけて示す。

「「待ちなさい!」」

 氷柱の上に立つ人物、それは何と、ティセラとパッフェルだった。
 しかも何故か、魔法少女な衣装――セイニィが着せられていた物と色違い――を纏い、杖の代わりにそれぞれビックディッパーとパワーランチャーを携え、そして竜司を挟むようにステージに降り立つ。

「星剣の輝きで敵を討つ! 魔法少女グリーゼ!」
「星銃で撃ち抜くわ……。魔法少女アンタレス」

「ステージに混沌をもたらす存在よ、立ち去りなさい!」
「……去らなくても、私たちが今すぐ消してあげるけどね」

 魔法少女な名乗りまでちゃんとあげて、ティセラとパッフェルがそれぞれ星剣と星銃を竜司へ向ける。
「な、何だテメェら!? オレの歌を邪魔するヤツは、誰だろうと許さねェ!」
 マイクを血煙爪(ちぇーんそー)に持ち替えた竜司がティセラに斬りかかるが、実力差は歴然、一太刀で血煙爪を弾かれ、返す刃で上空高く吹き飛ばされる。
「……さよなら」
 そこを、パッフェルのパワーランチャーが貫き、ぷすぷすと煙を上げながら竜司が海の家の近くに墜落する。
「ああっ、竜司!?」
 ヴォルフガングが慌てて竜司の所へ駆け寄り、ステージには一体何が起きているんだというどよめきがひしめいていた。
「……皆さん、お騒がせいたしました。ステージの平和はわたくしたちによって守られましたわ」
「感謝することね」
 星剣と星銃を仕舞い、ティセラとパッフェルが並んでステージに立つ。そして次に二人の手に握られていたのは、マイクだった。

「ここからは、歌って踊れる魔法少女『T・T・S』(Twelve Twinkle Star)のデビューコンサートの始まりですわ!」

 ステージを遠巻きに眺めていた岬 蓮(みさき・れん)アイン・ディアフレッド(あいん・でぃあふれっど)にとって、確かにビーチバレーで勝利して『好きな歌を熱唱する』と罰ゲームを提案したのは自分たちでありながら、この展開はまさに『どうしてこうなった』であろう。
「……まさか、このような展開になるとはな」
「えーっと……もしかして十二星華って、みんなこんな感じなのかなぁ?」
「そんな一括りにされても困るわよっ! ……はぁ、あたしがビーチバレーで負けて魔法少女な格好をさせられたばっかりに、ティセラとパッフェルも悪ノリしたのね……」
 互いに首をかしげ合う二人にセイニィがツッコミを入れる。
「そうなの? ふーん、初めて見たときはちょっと怖いかもって思っちゃったけど、ああいうの見てると実は面白い人なのかなって思えるかも!」
「世間ズレしてるだけだと思うけどね……って、考えたらあのチーム名、既にあたしたちまでメンバーに入れちゃってる!? イヤよ、絶対やらないからね!」
 目をつけられないうちに、と退散を図るセイニィを見送って、蓮とアインはステージへと視線を向ける。
 ちょうど、ティセラとパッフェルの歌が終わった頃であった――。