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リアクション
イコン・ザ・フィナーレバトル! 9
「全艦の前進を確認。データリンクも異常なし。
魔道レーダー、その他レーダーによる複合レーダー異常なし。
主砲照準、イーダフェルト2号。……ターゲットロック」
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)からの報告を聞いた艦長は答える。
「よろしい、ならば発射だ」
艦長ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)の発射の合図で、
HMS セント・アンドリューに搭載されている荷電粒子砲がイーダフェルト2号に発射される。
光の軌跡がイーダフェルト2号に到達すると、轟音があたり一帯に響く。
同時に盟友たちの指揮する無数の戦艦が現れ、一斉砲撃も見舞われる。
痛烈な攻撃。だがイーダフェルト2号は止まっていない。
「着弾確認。後退と共にチャージ開始。
同時に伊勢とマサチューセッツが攻撃を開始」
「装甲はそこそこ。
だが、これまで戦ってきたものもこれくらいは当たり前だった。
怯むこともない。では頼むぞ、伊勢、マサチューセッツ」
ホレーショの心の中には負けるビジョンはない。
見えるのは完璧に勝つという未来だけ。
「了解であります! では、次は伊勢が攻撃を――」
「待って。マサチューセッツから連絡が来ているわ」
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の砲撃指示をコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が止める。
味方艦、BB‐75 マサチューセッツのキャロライン・エルヴィラ・ハンター(きゃろらいん・えるう゛ぃらはんたー)からの通信だ。
「お願い。二回目の攻撃はあたしたちに任せて、少しでも多く攻撃したいの!
絶対アメリカにあのデカブツを入れさせたくない、だからっ!」
「……了解であります。任せるであります!」
「ありがとう!」
吹雪の了承を得たキャロラインがパートナーのトーマス・ジェファーソン(とーます・じぇふぁーそん)に向き直る。トーマスは既に主砲の準備を完了させていた。
「後は指示一つで攻撃できるわ。さあ、どうぞ?」
「あ、あたしが言うの?」
キャロラインが少し困惑気味にわたわたするが、トーマスはキャロラインを見つめるだけだ。
トーマスの視線に観念したかのようにキャロラインが動きを止めて、言い放つ。
「……イーダフェルト2号は絶対に止める。マサチューセッツを体当たりさせてでも。
アメリカ領空、領海に1ミリ、1ナノミリたりとも入れてたまるもんですか!」
「上出来よ。ハワイは……アメリカは私達が守る! ファイア!」
力強い二人の声を道しるべにして、マサチューセッツの攻撃がイーダフェルト2号へと導かれる。
「着弾を確認……と、言うまでもないみたいね」
直後、伊勢から攻撃が放たれたのを見てトーマスはそう呟いた。
「ちょっと吹雪! いくらなんでも早すぎよ!
味方部隊が「えっ、えっ!」って動揺してるわよ?」
「敵を欺くにはまず味方からと言うであります!」
「今欺いても意味ないでしょ!」
他の強力な武装の威力すらも凌駕する、戦略・戦術ミサイル『ビッグバンブラスト』はイーダフェルト2号に着弾して、大気を殺すようにして爆発。
「やったでありますか!?」
「……そのセリフを言っちゃったら、やってない確率が高くなりそうよね。
元よりこれで止まってくれたら楽な相手だけど」
コルセアのちょっとした期待もすぐに露と消えた。
煙をかき分けて姿を現したイーダフェルト2号、動きを止めている気配はない。
だが、先ほどよりもスピードが遅くなっているように見える。
「ふむ、不沈要塞でありますか。奇遇でありますな。
この伊勢もまた不沈戦艦であります! どちらか本物の不沈か、決めるであります!」
「いや、撃沈されたことあるでしょう」
「何度撃沈されようとも新しい伊勢が建造されるのであります!
それは最早不沈なのでありますよ!」
自分の理論を展開させる吹雪に、コルセアはそれ以上なにも言わ(ツッコま)なかった。