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リアクション
イコン・ザ・フィナーレバトル! 12
「いなくなれえ゛え゛え゛え゛!!」
大量のレーザービットを展開するマンドレイク。その数は優に十を越える。
「ビット兵器を使えるのはあんただけじゃないのよ!」
フィーニクス・NX/Fのインファント・ユニットがビットの一機を破壊する。
咆えるジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)だが、決して前には出過ぎない。
それはイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)の体調を考えてのことだ。
今のイーリャは体調を崩している。だから無茶は出来ない。
「ジヴァ、気にしないで。遠慮しないで」
「……わかってるわ! だけどまずはビットの破壊が先よ!」
高速での移動を制御、明らかにスピードを抑えるジヴァ。
それでもビットからの攻撃をギリギリでかわしながら、逆にビットを破壊していく。
だが、数個のビットに囲まれて逃げ場を失う。
「小賢しいのよ、劣等種が!」
四方から飛んでくる攻撃。
致命傷になりそうなもの以外は無視して、ギリギリの状態で反撃をこなし、ビットを破壊する。が
後方から更に忍び寄るビットにジヴァの反応が遅れる。
気付いた時には攻撃された後のことだった。
「ジヴァ! いいから!」
「っ!」
頭ではわかっていても、体が最後の最後で判断を鈍らせた。だから動けなかった。
「……待たせたな! そうはさせんぞ!」
ビットとフィーニクスの間に割り込んだのは、金色のイコンだった。
「大丈夫か!? ここに辿り着くまで遅れてしまった!」
「た、助かったわ……ありがとう」
ジヴァが礼を言うと、助けた者は爽やかに笑って「怪我がないならよかったぞ!」と言った。
「マンドレイク! 貴様を倒す、行くぞドラゴランダー!」
『ガオォォォォォン!!!!』
『黄龍合体! グレート・ドラゴハーティオン!!』
金色のイコンが姿を変えていく。そして姿を現したのは――。
勇者だった。
「私たちは蒼空戦士コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)!
そして龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)!
マンドレイクよ! 正々堂々、勝負!」
『ガオオオン!!』
変形と同時にヴィサルガを使い覚醒、
更に真なる神となれで、勇者神にすら思えるオーラを纏っていた。
「か、かっこい゛い゛い゛い゛い゛!!」
このド派手な登場にマンドレイクも喜んでいた。
「……ところでハーティオン、武器は?」
「聖心剣のみだ!」
即答だった。
「わかったわ。私がフォローするから、マンドレイクを直接叩いて」
「任せろ!」
ハーティオンが作戦も立てずにマンドレイクへ直進。
周りから来るビットの攻撃はジヴァが始末する。
「行きなさいハーティオン!」
「ああ! 仲間がいれば勇者はより強くなれる!
はああああああああああああああ!」
マンドレイクに向けて聖心剣を振りかざすハーティオン。
ザンッ――
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
マンドレイクの叫び、それは断末魔ではなかった。
確かに聖心剣はシュバルツ・フリーゲ・ドライにめり込んではいるが、両断はされていない。
よく見れば複数のビットがドライの機体にめり込んでいる。
「攻撃の直前でビットをクッション代わりに……!!
やるな、マンドレイク!」
「――だがそれもこれまでだ」
突如として聞こえてきた声。その声の主は桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)。
既にセラフィート・セカンドはマンドレイクへ一直線。
「そこの勇者みたいなおまえ! 危ないからどいてな!」
エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)がハーティオンに下がるように言う。
「同じ強化人間だから同情はするぜ……。
でもな、折角守った世界を引っ掻き回されるのは見過ごせないんだよ!」
エヴァがマンドレイクに通信を無理やり送りつける。
エンド・オブ・ウォーズによる睨みをマンドレイクは直に見る。
だが、彼は止まらなかった。
「世界を変えたかったのも、守りたかったのも……ほんとうなんだあ゛あ゛あ゛!!」
「しかしながらやり方が悪すぎる。
……今度こそアールキングとの因縁全てにケリをつけさせてもらう!」
煉、セラフィートは止まらず、神武刀・布都御霊を強く握り締める。
いまだにハーティオンはマンドレイクから離れていない。
煉は迷わず、自分の今まで磨き上げてきた技術と、培ってきた経験でマンドレイクのみを両断するべく、大剣を振り下ろした。
ガギィンン!!
金属と金属の叫び声が木霊する。
マンドレイクは――
「あ、あああ」
まだ生きていた。
「……何のつもりだ、ハーティオン」
「マンドレイクはこう言った。世界を変えたかったのも、守りたかったのも本当なんだと。
私と同じだったからな! つい、守ってしまった!」
神武刀を聖心剣では止め切れず、またしてもマンドレイクの機体には剣がめり込んでいる。
ほとんど大破しているようなものだった。
「マンドレイク。世界はもう変わった、そして救われた!
ならば、君は別のものを守ればいい!」
「その通りだよ」
ハーティオンの言葉に誰かが同調する。
それは早川 呼雪(はやかわ・こゆき)の声だった。隣にはパートナーのヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)がいる。
呼雪はクリエイト・ザ・ワールドの力で、
虹色の五線譜のような架け橋を作り、夢想の宴で天使達が舞う中、
歌声を響かせる。それはまさに魂の共鳴。
「俺はお前の嘆きに呼び寄せられたんだ。悲しかったろう。
でもこのままお前が世界を変えるのは難しいんだ。
何度も繰り返されてきた事だから……
でもお前には希望、可能性がある。
一緒にパラミタに行かないか?
お前が変われば、世界も変わるよ」
「あ、ああ、ああああ」
マンドレイクは確信した。目の前に現れたのはまぎれもない、天使なのだと。
ちなみにヘルも同じように、
(呼雪が天使すぎて僕は辛いですー)
と思っていた。
やがてマンドレイクは天使の声に耳を傾ける。
「さあ、この手を差し伸べて、マンドレイク」
「……は、はい」
マンドレイクは確かに呼雪の手を握った。
「俺、変わりたいです。皆さんを見て、あっこんなに自由でいいんだって思えました。
でも、まだ悲しみが残ってるんです。だから――」
この戦いで見てきた色々なものを思い出すマンドレイク。
同時に自分の中にまだ悲しみがあることを吐露する。
「わかった、思い切り出し切るといい。ここにいる人たちは全部受け止めてくれるから」
「そうだぞマンドレイク! どーんと胸を借りるつもりでかかってこい!」
「……まあいい。お前はアールキングではないからな」
呼雪、ハーティオン、煉が問題ない旨をマンドレイクに返すと、
「ありがとう」と言った後に、マンドレイクは秘めていた悲しみの全部を解放した。